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私の彼氏

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「ねぇ、明日、買い物に行かない?」

「あ…ごめん。明日はちょっと…」

「もしかして、彼氏とデート?」

「うん…実はそうなんだ。ごめんね。」

「そっか~…あの彼とまだうまくいってるんだね。
……良かった。」



なんだかちょっと嫌な気分。
まず『あの彼』っていうのは、何?
わかってるよ。彼が変わり者だからだよね。
そんなこと、私は気にしない。
そりゃあ、初めて会った時はちょっと引いたけど、髪形や服装が変わってることくらいなんでもない。
むしろ、今では個性的で良いと思ってるよ。
彼は、外見はちょっと変だけど、中身は本当に良い人なんだもの。
まじめだし、優しいし、気も利くし、努力家だし、なにより私のことをとても大切にしてくれる。
それだけで、十分だよ。

それに、『まだうまくいってる』って…
理沙は、私と彼が長続きしないと思ってたんだね。
酷い話だ。
でも、良いんだ。
どう思われようと。
私と彼はうまくいってるんだから。







「サチ~!ここ!」

「え?」

聞き慣れた声に振り向くと、そこには、車の窓から手を振る彼の姿があった。



「ど、どうしたの?」

彼は、免許を持ってなかったはずなのに、どうして?



「へへっ!ついに免許取ったんだ。
さ、乗って!
今日が初ドライブなんだ!」

「う、うん。」

おそらく彼が選んだであろうその車は、めったに見たことのない個性的な車だった。
私は、車には疎いからなんて車なのかはわからないけど…



「免許なんていつ取ったの?」

私が乗り込むと、車は滑るように走り出した。



「サチをびっくりさせようと思って、秘密にしてたんだ。
俺、どうしてもこの車でサチとドライブしたかったから。」

「そ、そうなんだ。個性的な車だね。」

「だろ?めっちゃ、かっこいいよな?
ほら見てよ、このシフトノブ。」

そう言って、彼が指さした先にあったものは、中に花が入ってるみたいなものだった。



「綺麗だね。」

「水中花だぜ。いかしてるよなぁ…」

彼はそれをすごく気にいってるみたいだった。



「本当に、80年代って最高だよな!」

そう、彼は80年代をこよなく愛する人なんだ。
90年代生まれなのに、とにかく彼は80年代のものが大好き。
服装も80年代の流行りの古着。
髪形も80年代に流行ったテクノカットってやつらしい。



「もしかして、この車も…」

「もちろん!チェイサーっていうなつなんだ。」

「へ、へぇ……」



カーステレオから流れてるのは、80年代のヒット曲だと思う。
私は知らない曲だけど…



「とりあえず、海まで走ろうか…」

彼は初心者とは思えないほど、運転がうまかった。
他愛ない会話を交わしながら海までドライブして、ヒグラシが鳴く頃まで海の付近で遊んだ。
こんなことなら水着でも持ってくれば良かった。



(でも…80年代の水着ってどんなのだろう?)



ふとそんなことを考えて、私は頭をひねった。

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