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屋台村
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(えっ!?こ、ここは?)
気が付いたら、僕は屋台の前にいた。
何軒もの屋台が軒を連ね、人々がその前を行き交っている。
なぜこんなところにいるのかはまるで記憶がなかったが、屋台から漂って来る美味そうなにおいに、僕の食欲は刺激され、ついフラフラとラーメンの屋台に向かった。
「……らっしゃい。」
小さな声が僕を出迎えた。
「え、えっと…醤油ラーメンを下さい。」
「はいよ。醤油ラーメン一丁。」
そう言うと、主はラーメンを作り始めた。
僕の他に、お客は三人いて、皆黙々とラーメンをすすっていた。
「お待ち遠様。」
ラーメンはすぐに出来上がった。
味はまぁまぁと言ったところか。
特別美味いことはないが、まずいというわけでもない。
「……ご馳走様。」
食べ終えた一人の男が席を立った。
(あれ?)
男はお金を払わなかった。
男が座っていたあたりにも、お金は置いてない。
だが、不思議なことに主はそのことを咎めることも、慌てることもない。
その時、僕はあることに気付いてしまった。
念の為、ポケットを探ってもみたが、そこにお金はなかった。
「あ、あの…ご主人…僕、お金を忘れたみたいで…」
「金なんぞいらない。」
「え?で、でも…」
「ここはそういう決まりなんだ。」
「え……」
信じられない話だったけど、確かにお金は取られなかった。
僕は、そのことを確かめるために、別の屋台に入った。
焼き鳥の店だ。
驚いたことに、その店でもお金は取られなかった。
ラーメンと焼き鳥を食べたのに、なぜだかまだ満腹にはなっていなかった。
僕は、次に居酒屋風なおでんの店に入った。
屋台の隅で食べていると、中年の男と若い男が口論を始めた。
そのうちに、若い男が中年の男を殴り、喧嘩はさらに激しいものとなった。
「あっ!」
中年の男が、若い男をビール瓶で殴り、男の頭からは真っ赤な血が噴き出した。
僕は慌てて屋台の隅に身を隠した。
「畜生!やりやがったな!」
若い男はビール瓶を割り、凶器と化したそれで、中年の男の胸を刺した。
それと同時に、周りにいた男が仲裁に入り、若い男に今度は首を刺された。
目を覆いたくなるような凄惨な状況だが、なぜだか男たちはまだ喧嘩をやめない。
あんな深手を負っているのに、なぜ平気で戦えるのか…
そう考えた時、窓の外におかしな具合に首のひん曲がった男が歩いているのをみつけた。
確実に首の骨が折れているようだ。
普通なら死んでいるはず…
その時、僕はあることに気が付いた。
その男には影がなかったのだ。
いや、そこらにいた全員に影がないんだ。
(どういうことなんだ!?)
「この野郎!おまえもあいつの仲間だな!」
「えっ!」
不意に胸倉を掴まれ、驚く間もなく僕はナイフで腹を刺された。
痛みと同時に生暖かいものが腹から流れ出る。
だが…何かが違う…
痛みはあるのだが、僕は刺されているのにいつもと同じように動ける。
僕は、屋台の外へ駆け出した。
そこで、僕は気付いたのだ。
僕自身にも影がないことに…
気が付いたら、僕は屋台の前にいた。
何軒もの屋台が軒を連ね、人々がその前を行き交っている。
なぜこんなところにいるのかはまるで記憶がなかったが、屋台から漂って来る美味そうなにおいに、僕の食欲は刺激され、ついフラフラとラーメンの屋台に向かった。
「……らっしゃい。」
小さな声が僕を出迎えた。
「え、えっと…醤油ラーメンを下さい。」
「はいよ。醤油ラーメン一丁。」
そう言うと、主はラーメンを作り始めた。
僕の他に、お客は三人いて、皆黙々とラーメンをすすっていた。
「お待ち遠様。」
ラーメンはすぐに出来上がった。
味はまぁまぁと言ったところか。
特別美味いことはないが、まずいというわけでもない。
「……ご馳走様。」
食べ終えた一人の男が席を立った。
(あれ?)
男はお金を払わなかった。
男が座っていたあたりにも、お金は置いてない。
だが、不思議なことに主はそのことを咎めることも、慌てることもない。
その時、僕はあることに気付いてしまった。
念の為、ポケットを探ってもみたが、そこにお金はなかった。
「あ、あの…ご主人…僕、お金を忘れたみたいで…」
「金なんぞいらない。」
「え?で、でも…」
「ここはそういう決まりなんだ。」
「え……」
信じられない話だったけど、確かにお金は取られなかった。
僕は、そのことを確かめるために、別の屋台に入った。
焼き鳥の店だ。
驚いたことに、その店でもお金は取られなかった。
ラーメンと焼き鳥を食べたのに、なぜだかまだ満腹にはなっていなかった。
僕は、次に居酒屋風なおでんの店に入った。
屋台の隅で食べていると、中年の男と若い男が口論を始めた。
そのうちに、若い男が中年の男を殴り、喧嘩はさらに激しいものとなった。
「あっ!」
中年の男が、若い男をビール瓶で殴り、男の頭からは真っ赤な血が噴き出した。
僕は慌てて屋台の隅に身を隠した。
「畜生!やりやがったな!」
若い男はビール瓶を割り、凶器と化したそれで、中年の男の胸を刺した。
それと同時に、周りにいた男が仲裁に入り、若い男に今度は首を刺された。
目を覆いたくなるような凄惨な状況だが、なぜだか男たちはまだ喧嘩をやめない。
あんな深手を負っているのに、なぜ平気で戦えるのか…
そう考えた時、窓の外におかしな具合に首のひん曲がった男が歩いているのをみつけた。
確実に首の骨が折れているようだ。
普通なら死んでいるはず…
その時、僕はあることに気が付いた。
その男には影がなかったのだ。
いや、そこらにいた全員に影がないんだ。
(どういうことなんだ!?)
「この野郎!おまえもあいつの仲間だな!」
「えっ!」
不意に胸倉を掴まれ、驚く間もなく僕はナイフで腹を刺された。
痛みと同時に生暖かいものが腹から流れ出る。
だが…何かが違う…
痛みはあるのだが、僕は刺されているのにいつもと同じように動ける。
僕は、屋台の外へ駆け出した。
そこで、僕は気付いたのだ。
僕自身にも影がないことに…
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