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「こらー、広がって歩くんじゃない。
二列になってさっさと歩け!」
担任の大きな声に、俺達はうんざりしながら歩いて行った。
中川正義、40代、独身。
自然の反りこみ、大きなつり目、無表情…その見た目のせいで陰では『ウルトラマン』と呼ばれている。
楽しいはずの修学旅行も、このウルトラマンのせいで窮屈な想いをしている。
歩き方にまで文句付けるなよ。
俺たちは、もう中学三年生。
子供じゃないんだから。
「はい、みんな、集まれ。
今からこの寺を見学するぞ。
騒がずに行儀よくするんだぞ!」
正直言って、寺なんて全く興味はない。
もっと面白いところに連れて行ってくれたら良いのに…
「みなさん、ほんまにええ時期に来やはりましたな。
今、まさに半夏生の花が見頃です。」
お寺のお坊さんがそう言って説明してくれたけど…
もしかして、池の周りに生えてるあの白っぽい花のことか?
花にも興味のない俺にとっては、へぇ…以外の感想はなかった。
*
「すごいよな。なんでこんな風に白くなるんだろ?」
「自然って本当に奥が深いよね。」
修学旅行のあの日から30年程の月日が流れ…
気が付けば、俺は、当時のウルトラマンと同じくらいの年になっていた。
植物や動物の好きな彼女と結婚して十年目の記念に、俺たちは、修学旅行で訪れたあの寺に来ていた。
妻が、半夏生の花を見たいと言い出して、探し出した場所があの寺だったんだ。
最初は全く気付かなかったけど、寺に行くとなんとなく見覚えがあって…
半夏生の花を見た途端、はっきりと思い出した。
当時は、花になんて全然興味がなかったのに、なぜだかその光景は俺の記憶に残っていた。
今見ると、その花はとても興味深く、そしてとても清しく見えた。
彼女と付き合い始めてから、俺もずいぶんと変わったと思う。
彼女の影響で、最近では家庭菜園まで始めてしまったくらいだ。
俺たちは、半夏生の花を楽しみ、たくさんの画像を撮った。
(あの時は、確か、一枚も写さなかったな…花なんか、全く興味がなかったもんなぁ…)
「あれ?どうしたの?思い出し笑いなんかしちゃって…」
「うん…ちょっと、な。」
「わぁ、やな感じ!
何々?半夏生に色っぽい思い出でもあるの?」
的外れな妻の推測に、俺は思わず失笑した。
二列になってさっさと歩け!」
担任の大きな声に、俺達はうんざりしながら歩いて行った。
中川正義、40代、独身。
自然の反りこみ、大きなつり目、無表情…その見た目のせいで陰では『ウルトラマン』と呼ばれている。
楽しいはずの修学旅行も、このウルトラマンのせいで窮屈な想いをしている。
歩き方にまで文句付けるなよ。
俺たちは、もう中学三年生。
子供じゃないんだから。
「はい、みんな、集まれ。
今からこの寺を見学するぞ。
騒がずに行儀よくするんだぞ!」
正直言って、寺なんて全く興味はない。
もっと面白いところに連れて行ってくれたら良いのに…
「みなさん、ほんまにええ時期に来やはりましたな。
今、まさに半夏生の花が見頃です。」
お寺のお坊さんがそう言って説明してくれたけど…
もしかして、池の周りに生えてるあの白っぽい花のことか?
花にも興味のない俺にとっては、へぇ…以外の感想はなかった。
*
「すごいよな。なんでこんな風に白くなるんだろ?」
「自然って本当に奥が深いよね。」
修学旅行のあの日から30年程の月日が流れ…
気が付けば、俺は、当時のウルトラマンと同じくらいの年になっていた。
植物や動物の好きな彼女と結婚して十年目の記念に、俺たちは、修学旅行で訪れたあの寺に来ていた。
妻が、半夏生の花を見たいと言い出して、探し出した場所があの寺だったんだ。
最初は全く気付かなかったけど、寺に行くとなんとなく見覚えがあって…
半夏生の花を見た途端、はっきりと思い出した。
当時は、花になんて全然興味がなかったのに、なぜだかその光景は俺の記憶に残っていた。
今見ると、その花はとても興味深く、そしてとても清しく見えた。
彼女と付き合い始めてから、俺もずいぶんと変わったと思う。
彼女の影響で、最近では家庭菜園まで始めてしまったくらいだ。
俺たちは、半夏生の花を楽しみ、たくさんの画像を撮った。
(あの時は、確か、一枚も写さなかったな…花なんか、全く興味がなかったもんなぁ…)
「あれ?どうしたの?思い出し笑いなんかしちゃって…」
「うん…ちょっと、な。」
「わぁ、やな感じ!
何々?半夏生に色っぽい思い出でもあるの?」
的外れな妻の推測に、俺は思わず失笑した。
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