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星に願いを

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「小野田さ~ん!」

私は声を張り上げ、大きく手を振った。
私に気付いた小野田さんが、駆けて来る。
あぁ、やっぱり素敵だな。
思わず、顔がにやけそうになるのを、私は懸命に堪えた。



「お待たせしてすみません!」

「いえ、私もついさっき来たところです。」

それは嘘だ。
小野田さんに会うのが楽しみで、30分も早くに着いてしまった。
でも、待ってる間もワクワクして、30分なんてあっという間だった。



「じゃあ、行きましょうか。」

「は、はい。」

小野田さんと並んで歩くだけでも緊張する。
心地良い緊張感だ。



「今日は子供が多いかもしれませんね。」

「えっ?どうしてですか?」

「七夕ですから。」

「あ…」

すっかり忘れてた。
七夕なんて、大人になってからはまるで関係のないイベントだから。



「わぁ!」

会場に着くと、小野田さんの推測通り、プラネタリウムの前には子供がたくさんいた。



「失敗しましたね。違う日にすれば良かったですね。」

「そうですか。僕は会場の様子が知りたかっただけなので、特には気になりませんが…」

「あ、そ、それもそうですね。」

失言しちゃったかな?
子供向けの内容だったら、小野田さんはつまらないんじゃないかって思ったんだけど…



私達は会場の中に入った。
会場内もやはり子供の姿が目立つ。
出来たてだから、椅子や設備が真新しくて気持ち良い。







「いかがでしたか?」

「すごく面白かったです!」

それは嘘ではなかった。
星の解説と共に、七夕の伝説がアニメーションで紹介され、子供向きとはいえ、大人でも十分に楽しめる内容だった。



「それは良かったです。
ここは、プロジェクターも音響設備も素晴らしいですね。」

「そ、そうですね。」

そんなことは私には全くわからなかったけど、適当に相槌を打った。



「すみません。ちょっとトイレに行ってきます。」

「は、はい。」



(あ……)

ロビーには大きな笹があった。



「短冊、書かれませんか?」

笹の傍にいた人が差し出した短冊を私は受け取っていた。



(そうだ!)



『小野田さんと仲良くなれますように。』

私は想いを込めた短冊を笹にくくりつけた。



短冊を見られたら困るから、小野田さんがトイレから戻って来たら、素早く会場の外へ連れ出した。



短冊を書いたのなんて、一体何年ぶりだろう?
しかも、あんなにストレートなことを書いてしまったのが、なんだか恥ずかしい。



(織姫様、どうか私の願いを叶えてね。)



今日覚えたばかりのこと座のベガを見上げて、私は心からそう願った。
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