184 / 364
星に願いを
1
しおりを挟む
「小野田さ~ん!」
私は声を張り上げ、大きく手を振った。
私に気付いた小野田さんが、駆けて来る。
あぁ、やっぱり素敵だな。
思わず、顔がにやけそうになるのを、私は懸命に堪えた。
「お待たせしてすみません!」
「いえ、私もついさっき来たところです。」
それは嘘だ。
小野田さんに会うのが楽しみで、30分も早くに着いてしまった。
でも、待ってる間もワクワクして、30分なんてあっという間だった。
「じゃあ、行きましょうか。」
「は、はい。」
小野田さんと並んで歩くだけでも緊張する。
心地良い緊張感だ。
「今日は子供が多いかもしれませんね。」
「えっ?どうしてですか?」
「七夕ですから。」
「あ…」
すっかり忘れてた。
七夕なんて、大人になってからはまるで関係のないイベントだから。
「わぁ!」
会場に着くと、小野田さんの推測通り、プラネタリウムの前には子供がたくさんいた。
「失敗しましたね。違う日にすれば良かったですね。」
「そうですか。僕は会場の様子が知りたかっただけなので、特には気になりませんが…」
「あ、そ、それもそうですね。」
失言しちゃったかな?
子供向けの内容だったら、小野田さんはつまらないんじゃないかって思ったんだけど…
私達は会場の中に入った。
会場内もやはり子供の姿が目立つ。
出来たてだから、椅子や設備が真新しくて気持ち良い。
*
「いかがでしたか?」
「すごく面白かったです!」
それは嘘ではなかった。
星の解説と共に、七夕の伝説がアニメーションで紹介され、子供向きとはいえ、大人でも十分に楽しめる内容だった。
「それは良かったです。
ここは、プロジェクターも音響設備も素晴らしいですね。」
「そ、そうですね。」
そんなことは私には全くわからなかったけど、適当に相槌を打った。
「すみません。ちょっとトイレに行ってきます。」
「は、はい。」
(あ……)
ロビーには大きな笹があった。
「短冊、書かれませんか?」
笹の傍にいた人が差し出した短冊を私は受け取っていた。
(そうだ!)
『小野田さんと仲良くなれますように。』
私は想いを込めた短冊を笹にくくりつけた。
短冊を見られたら困るから、小野田さんがトイレから戻って来たら、素早く会場の外へ連れ出した。
短冊を書いたのなんて、一体何年ぶりだろう?
しかも、あんなにストレートなことを書いてしまったのが、なんだか恥ずかしい。
(織姫様、どうか私の願いを叶えてね。)
今日覚えたばかりのこと座のベガを見上げて、私は心からそう願った。
私は声を張り上げ、大きく手を振った。
私に気付いた小野田さんが、駆けて来る。
あぁ、やっぱり素敵だな。
思わず、顔がにやけそうになるのを、私は懸命に堪えた。
「お待たせしてすみません!」
「いえ、私もついさっき来たところです。」
それは嘘だ。
小野田さんに会うのが楽しみで、30分も早くに着いてしまった。
でも、待ってる間もワクワクして、30分なんてあっという間だった。
「じゃあ、行きましょうか。」
「は、はい。」
小野田さんと並んで歩くだけでも緊張する。
心地良い緊張感だ。
「今日は子供が多いかもしれませんね。」
「えっ?どうしてですか?」
「七夕ですから。」
「あ…」
すっかり忘れてた。
七夕なんて、大人になってからはまるで関係のないイベントだから。
「わぁ!」
会場に着くと、小野田さんの推測通り、プラネタリウムの前には子供がたくさんいた。
「失敗しましたね。違う日にすれば良かったですね。」
「そうですか。僕は会場の様子が知りたかっただけなので、特には気になりませんが…」
「あ、そ、それもそうですね。」
失言しちゃったかな?
子供向けの内容だったら、小野田さんはつまらないんじゃないかって思ったんだけど…
私達は会場の中に入った。
会場内もやはり子供の姿が目立つ。
出来たてだから、椅子や設備が真新しくて気持ち良い。
*
「いかがでしたか?」
「すごく面白かったです!」
それは嘘ではなかった。
星の解説と共に、七夕の伝説がアニメーションで紹介され、子供向きとはいえ、大人でも十分に楽しめる内容だった。
「それは良かったです。
ここは、プロジェクターも音響設備も素晴らしいですね。」
「そ、そうですね。」
そんなことは私には全くわからなかったけど、適当に相槌を打った。
「すみません。ちょっとトイレに行ってきます。」
「は、はい。」
(あ……)
ロビーには大きな笹があった。
「短冊、書かれませんか?」
笹の傍にいた人が差し出した短冊を私は受け取っていた。
(そうだ!)
『小野田さんと仲良くなれますように。』
私は想いを込めた短冊を笹にくくりつけた。
短冊を見られたら困るから、小野田さんがトイレから戻って来たら、素早く会場の外へ連れ出した。
短冊を書いたのなんて、一体何年ぶりだろう?
しかも、あんなにストレートなことを書いてしまったのが、なんだか恥ずかしい。
(織姫様、どうか私の願いを叶えてね。)
今日覚えたばかりのこと座のベガを見上げて、私は心からそう願った。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
週に7日のみやこでご飯
白妙スイ@書籍&電子書籍発刊!
大衆娯楽
同棲していた元カレの裏切りにより、居場所も貯金も失い、引っ越しを余儀なくされた古谷 奈々(ふるや なな)、28歳。
意気消沈してなんとか見つけたボロアパートこと『波佐間ハイツ』にたどり着いた奈々は、大家さんに挨拶をと一室のドアを叩くが、派手な音を立てて出てきたのは、タンクトップにショートパンツ、ぼさぼさショートヘアのしどけない姿をした若い女の子だった。
身なりを整えた女の子は、波佐間 都(はざま みやこ)と名乗る。祖母に代わって大家代理を務めているらしい。
波乱のボロアパート生活がはじまったのだが、ひょんなことから奈々は都と『夕ご飯を一緒に食べる』という約束をすることに。
カルボナーラ、パエリア、大盛り餃子……。
失くしものをした同士の二人が、あたたかなご飯でお腹をいっぱいにするまで。
私も貴方を愛さない〜今更愛していたと言われても困ります
せいめ
恋愛
『小説年間アクセスランキング2023』で10位をいただきました。
読んでくださった方々に心から感謝しております。ありがとうございました。
「私は君を愛することはないだろう。
しかし、この結婚は王命だ。不本意だが、君とは白い結婚にはできない。貴族の義務として今宵は君を抱く。
これを終えたら君は領地で好きに生活すればいい」
結婚初夜、旦那様は私に冷たく言い放つ。
この人は何を言っているのかしら?
そんなことは言われなくても分かっている。
私は誰かを愛することも、愛されることも許されないのだから。
私も貴方を愛さない……
侯爵令嬢だった私は、ある日、記憶喪失になっていた。
そんな私に冷たい家族。その中で唯一優しくしてくれる義理の妹。
記憶喪失の自分に何があったのかよく分からないまま私は王命で婚約者を決められ、強引に結婚させられることになってしまった。
この結婚に何の希望も持ってはいけないことは知っている。
それに、婚約期間から冷たかった旦那様に私は何の期待もしていない。
そんな私は初夜を迎えることになる。
その初夜の後、私の運命が大きく動き出すことも知らずに……
よくある記憶喪失の話です。
誤字脱字、申し訳ありません。
ご都合主義です。
辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~
雪月 夜狐
ファンタジー
壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。
辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。
しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。
他作品の詳細はこちら:
『転生特典:錬金術師スキルを習得しました!』
【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/906915890】
『テイマーのんびり生活!スライムと始めるVRMMOスローライフ』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/515916186】
『ゆるり冒険VR日和 ~のんびり異世界と現実のあいだで~』
【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/166917524】
星降る夜の、空の下
高嶺 蒼
ライト文芸
高校卒業から10年目の同窓会。
見知らぬ美女が現れてざわめく会場。
ただ1人、主人公だけはその美女が誰か気が付いて、驚きに目を見開く。
果たしてその美女の正体とは……?
monogataryというサイトにて、「それ、それずーっと言って欲しかったの
」というお題で書いた短編です。
魔がさした? 私も魔をさしますのでよろしく。
ユユ
恋愛
幼い頃から築いてきた彼との関係は
愛だと思っていた。
何度も“好き”と言われ
次第に心を寄せるようになった。
だけど 彼の浮気を知ってしまった。
私の頭の中にあった愛の城は
完全に崩壊した。
彼の口にする“愛”は偽物だった。
* 作り話です
* 短編で終わらせたいです
* 暇つぶしにどうぞ
兵法者ハンベエの物語
市橋千九郎
大衆娯楽
剣と弓が武器の時代。
ハンベエ二十歳。兵法免許皆伝の申し渡しを受け、実践修業に送り出される。
戦いの技術以外知らぬ若者が乱世の中で何を得、どう生きて行くのかを描いた架空戦記。
尚、表紙絵はBee画伯。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる