182 / 364
思い出作り
1
しおりを挟む
「わぁ!すごーい!」
「おうちと一緒だね!」
「さぁ、食べようか。」
顔を輝かせる子供たちに、なんとなくほっとする。
「おいしいね!」
「うん、すっごく美味しい!」
ただ温めただけのレトルトのハンバーグに、子供たちは大喜びだ。
「ねぇ、パパ。
ご飯食べたらどこに行くの?」
「そうだな…和樹はどこが良い?」
「う~んと…あ!海が良いな!」
「僕も海~!」
「そっか、じゃあ、海に行こうか。」
「わぁーーい!」
子供たちは無邪気にはしゃぐ。
この旅がどんな旅なのかも知らずに…
僕の会社が乗っ取られたのは、一週間程前のことだ。
その時から、僕らの生活は激変した。
妻と親友には裏切られ、僕はなにもかも失った。
もう家にも帰れない。
僕は、中古のキャンピングカーを買い、子供たちを連れて家を離れた。
格安だったわりには、まだけっこう綺麗だ。
子供たちもこの車をとても気に入ったみたいだ。
僕はもうおしまいだ。
だから、しばらく気ままな旅を続け、僕の人生にピリオドを打とうと思っている。
子供たちも一緒に…
迷ったけれど…申し訳ないし、可哀想だとは思うけど…
でも、多分、それが一番良いことだと思うから…
この旅は、せめて子供たちに楽しい思い出を作らせたいという想いから発したものだ。
*
僕達の旅もそろそろ一か月近くになろうとしている。
子供たちも最近は旅に飽きたのか、家に帰りたいとか、ママに会いたいと言い始めて来た。
キャンピングカーなら、普通の車よりゆっくり眠れるし、大体の設備は整っているから家のことはあまり思い出さないんじゃないかと思ったけれど、甘かったようだ。
(いよいよおしまいか……)
そんな覚悟が固まる一方で、別の想いもあった。
なんとかやり直せるのではないか、と。
今から戻れば、どうにかなれるのではないかと…
だけど、すぐに思い直した。
いや、もう無理だ。
僕は、二人も殺してしまったんだから。
幸い、まだ遺体は見つかってはいない。
だけど、だからといって僕の罪が隠し通せるはずもない。
(そうだ…もうおしまいなんだ。
今日で最期にしよう…!)
「和樹、俊…ママに会いたいか?」
「うん!会いたい!」
「僕も会いたい!」
「……そうか、じゃあ、今からママに会いに行こうな。」
「わぁーーい!」
僕は山に向かって車を走らせた。
しばらく走るうちに、子供たちは眠ってしまった。
(……いよいよか。)
目的地に着き、子供たちの安らかな寝顔を見ていたら、急に気持ちが揺らいだ。
だめだ。やはりこの子たちは連れてはいけない。
「あ…警察ですか?
〇〇山の展望台の近くに、子供が二人います。
はい、キャンピングカーの中です。」
(和樹、俊…どうか、強く生きてくれ……)
警察に電話をかけた僕は車を離れ、崖に向かって歩き出した。
「おうちと一緒だね!」
「さぁ、食べようか。」
顔を輝かせる子供たちに、なんとなくほっとする。
「おいしいね!」
「うん、すっごく美味しい!」
ただ温めただけのレトルトのハンバーグに、子供たちは大喜びだ。
「ねぇ、パパ。
ご飯食べたらどこに行くの?」
「そうだな…和樹はどこが良い?」
「う~んと…あ!海が良いな!」
「僕も海~!」
「そっか、じゃあ、海に行こうか。」
「わぁーーい!」
子供たちは無邪気にはしゃぐ。
この旅がどんな旅なのかも知らずに…
僕の会社が乗っ取られたのは、一週間程前のことだ。
その時から、僕らの生活は激変した。
妻と親友には裏切られ、僕はなにもかも失った。
もう家にも帰れない。
僕は、中古のキャンピングカーを買い、子供たちを連れて家を離れた。
格安だったわりには、まだけっこう綺麗だ。
子供たちもこの車をとても気に入ったみたいだ。
僕はもうおしまいだ。
だから、しばらく気ままな旅を続け、僕の人生にピリオドを打とうと思っている。
子供たちも一緒に…
迷ったけれど…申し訳ないし、可哀想だとは思うけど…
でも、多分、それが一番良いことだと思うから…
この旅は、せめて子供たちに楽しい思い出を作らせたいという想いから発したものだ。
*
僕達の旅もそろそろ一か月近くになろうとしている。
子供たちも最近は旅に飽きたのか、家に帰りたいとか、ママに会いたいと言い始めて来た。
キャンピングカーなら、普通の車よりゆっくり眠れるし、大体の設備は整っているから家のことはあまり思い出さないんじゃないかと思ったけれど、甘かったようだ。
(いよいよおしまいか……)
そんな覚悟が固まる一方で、別の想いもあった。
なんとかやり直せるのではないか、と。
今から戻れば、どうにかなれるのではないかと…
だけど、すぐに思い直した。
いや、もう無理だ。
僕は、二人も殺してしまったんだから。
幸い、まだ遺体は見つかってはいない。
だけど、だからといって僕の罪が隠し通せるはずもない。
(そうだ…もうおしまいなんだ。
今日で最期にしよう…!)
「和樹、俊…ママに会いたいか?」
「うん!会いたい!」
「僕も会いたい!」
「……そうか、じゃあ、今からママに会いに行こうな。」
「わぁーーい!」
僕は山に向かって車を走らせた。
しばらく走るうちに、子供たちは眠ってしまった。
(……いよいよか。)
目的地に着き、子供たちの安らかな寝顔を見ていたら、急に気持ちが揺らいだ。
だめだ。やはりこの子たちは連れてはいけない。
「あ…警察ですか?
〇〇山の展望台の近くに、子供が二人います。
はい、キャンピングカーの中です。」
(和樹、俊…どうか、強く生きてくれ……)
警察に電話をかけた僕は車を離れ、崖に向かって歩き出した。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
悪意か、善意か、破滅か
野村にれ
恋愛
婚約者が別の令嬢に恋をして、婚約を破棄されたエルム・フォンターナ伯爵令嬢。
婚約者とその想い人が自殺を図ったことで、美談とされて、
悪意に晒されたエルムと、家族も一緒に爵位を返上してアジェル王国を去った。
その後、アジェル王国では、徐々に異変が起こり始める。
超ショートストーリー または、随筆など
いかめしホイホイ
大衆娯楽
ショートショート。
あるいは、随筆など。
適当に書いた、けっこう文章がぐちゃぐちゃなやつですので期待しないでね。
ごパンとは、ごはんでもあり、パンでもある食べ物である。
新たな伝統が、始まった瞬間であった。
幼女になった響ちゃんは男の子に戻りたい!【TS百合】:1 ~「魔法さん」にTSさせられた僕がニートを貫いた1年間~
あずももも
大衆娯楽
僕はある朝に銀髪幼女になった。TSして女の子になった。困ったけども身寄りもないし「独身男性の家に銀髪幼女がいる」って知られたら通報される。怖い。だから僕はこれまで通りに自堕落なニートを満喫するって決めた。時間だけはあるから女の子になった体を観察してみたり恥ずかしがってみたり、普段は男の格好をしてみたりときどき無理やり女の子の格好をさせられたり。肉体的には年上になったJCたちや「魔法さん」から追われてなんとか逃げ切りたかった。でも結局男には戻れなさそうだし、なにより世界は変わったらしい。――だから僕は幼女になってようやく、ひとりこもってのニートを止めるって決めたんだ。
◆響ちゃんは同じことをぐるぐる考えるめんどくさい子です。癖が強い子です。適度に読み飛ばしてください。本編は2話~50話(の1/2まで)、全部で111万文字あります。長いです。それ以外はお好みで雰囲気をお楽しみください。
◆3部作のうちの1部目。幼女な女の子になったTS初期の嬉し恥ずかしと年下(肉体的には年上)のヒロインたちを落とすまでと、ニートから脱ニート(働くとは言っていない)までの1年間を描きます。1部のお家を出るまでの物語としては完結。2部では響ちゃんの知らなかった色々を別の視点から追い直し、3部でTSの原因その他色々を終えて……幼女のままハーレムを築いてのTS百合なハッピーエンドを迎えます。特に生えたり大きくなったりしません。徹頭徹尾幼女です。
◆小説として書いた作品を2019年にやる夫スレでAA付きで投稿&同年に小説として「幼女にTSしたけどニートだし……どうしよう」のタイトルで投稿して完結→22年12月~23年8月にかけてなるべく元の形を維持しつつ大幅に改稿→23年7月から漫画化。他小説サイト様へも投稿しています。
◆各話のブクマや★評価が励みです。ご感想はツイッターにくださると気が付けます。
◆セルフコミカライズ中。ツイッター&ニコニコで1Pずつ週2更新です。
見返りは、当然求めますわ
楽歩
恋愛
王太子クリストファーが突然告げた言葉に、緊張が走る王太子の私室。
伝統に従い、10歳の頃から正妃候補として選ばれたエルミーヌとシャルロットは、互いに成長を支え合いながらも、その座を争ってきた。しかし、正妃が正式に決定される半年を前に、二人の努力が無視されるかのようなその言葉に、驚きと戸惑いが広がる。
※誤字脱字、勉強不足、名前間違い、ご都合主義などなど、どうか温かい目で(o_ _)o))
10万字未満の中編予定です。投稿数は、最初、多めですが次第に勢いを失っていくことでしょう…。
古地図屋・巡
霧氷
大衆娯楽
ある日、拓弥は祖父の湯呑を割ってしまった。同じものを買うべく、東奔西走するが見つからない。そんなある時、駄菓子屋のキヌばあさんから、教えられたのは、古地図屋だった・・・。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる