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思い出作り

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「わぁ!すごーい!」

「おうちと一緒だね!」

「さぁ、食べようか。」

顔を輝かせる子供たちに、なんとなくほっとする。



「おいしいね!」

「うん、すっごく美味しい!」

ただ温めただけのレトルトのハンバーグに、子供たちは大喜びだ。



「ねぇ、パパ。
ご飯食べたらどこに行くの?」

「そうだな…和樹はどこが良い?」

「う~んと…あ!海が良いな!」

「僕も海~!」

「そっか、じゃあ、海に行こうか。」

「わぁーーい!」



子供たちは無邪気にはしゃぐ。
この旅がどんな旅なのかも知らずに…



僕の会社が乗っ取られたのは、一週間程前のことだ。
その時から、僕らの生活は激変した。
妻と親友には裏切られ、僕はなにもかも失った。
もう家にも帰れない。



僕は、中古のキャンピングカーを買い、子供たちを連れて家を離れた。
格安だったわりには、まだけっこう綺麗だ。
子供たちもこの車をとても気に入ったみたいだ。



僕はもうおしまいだ。
だから、しばらく気ままな旅を続け、僕の人生にピリオドを打とうと思っている。
子供たちも一緒に…
迷ったけれど…申し訳ないし、可哀想だとは思うけど…
でも、多分、それが一番良いことだと思うから…
この旅は、せめて子供たちに楽しい思い出を作らせたいという想いから発したものだ。







僕達の旅もそろそろ一か月近くになろうとしている。
子供たちも最近は旅に飽きたのか、家に帰りたいとか、ママに会いたいと言い始めて来た。
キャンピングカーなら、普通の車よりゆっくり眠れるし、大体の設備は整っているから家のことはあまり思い出さないんじゃないかと思ったけれど、甘かったようだ。



(いよいよおしまいか……)



そんな覚悟が固まる一方で、別の想いもあった。
なんとかやり直せるのではないか、と。
今から戻れば、どうにかなれるのではないかと…
だけど、すぐに思い直した。



いや、もう無理だ。
僕は、二人も殺してしまったんだから。
幸い、まだ遺体は見つかってはいない。
だけど、だからといって僕の罪が隠し通せるはずもない。



(そうだ…もうおしまいなんだ。
今日で最期にしよう…!)



「和樹、俊…ママに会いたいか?」

「うん!会いたい!」

「僕も会いたい!」

「……そうか、じゃあ、今からママに会いに行こうな。」

「わぁーーい!」



僕は山に向かって車を走らせた。
しばらく走るうちに、子供たちは眠ってしまった。



(……いよいよか。)



目的地に着き、子供たちの安らかな寝顔を見ていたら、急に気持ちが揺らいだ。
だめだ。やはりこの子たちは連れてはいけない。



「あ…警察ですか?
〇〇山の展望台の近くに、子供が二人います。
はい、キャンピングカーの中です。」



(和樹、俊…どうか、強く生きてくれ……)



警察に電話をかけた僕は車を離れ、崖に向かって歩き出した。


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