160 / 364
軍団
1
しおりを挟む
「それはなかなか大変だな。」
「大変なんてもんじゃないよ。」
俺はラーメンをすすりながら、この店の親父に愚痴をこぼしていた。
「まぁ、嫁さんとしたら、やれることはすべてやりたいってことなんだろうな。」
「その気持ちがわからないわけじゃないよ。
だけど、あの光景を見たら、嫌にもなるよ。」
今、俺の家の軒下には、端から端までてるてる坊主がずらりと並んでいる。
通りがかる人たちが、怪訝な顔でそれを眺める。
そりゃあそうだろう。
明らかに怪しい光景だからな。
これは、さつきの願いの表れだ。
来週の結婚式は絶対に晴れさせるっていう切実な想いなんだ。
「あんたは有名な雨男だからなぁ。
ここに来る時だって、いつも雨だ。
今日だってほら。」
親父は、窓の方を顎で示した。
外では、激しい雨が地面を叩いている。
そう、俺はいわゆる『雨男』だ。
『雨男』なんて言葉を知らなかった、まだ幼い子供の頃から、どこに行くにもいつも雨だった。
だから、俺は雨には慣れてるし、結婚式も別に雨だってかまわないと思ってる。
だけど、さつきはそうじゃない。
絶対に晴れじゃないと嫌らしいんだ。
だったら、何もわざわざ梅雨のシーズンにしなくても…と思ったけれど、そこは女子のこだわりで、ジューンブライドに憧れてるからなんだ。
なんでも、『6月に結婚する花嫁は幸せになれる』という言い伝えがあるらしいんだけど、6月に結婚してもうまくいかない奴はうまくいかない。
結局、ただの迷信だと思うんだけど、そんなことを言ったら、さつきの機嫌を損ねてしまう。
言わぬが花だ。
それにしても、女っていうのは、つくづくややこしい生き物だ。
「ごちそう様。」
「結婚式が晴れることを祈ってるぜ。」
「おやっさん、ありがとう!」
店を出た時もやっぱり雨。
でも、雨は、そんなにいやなもんじゃない。
けっこうロマンチックだと思うんだけどな。
それに、結婚式は教会の中でやるんだし、それほど迷惑ってわけでもないのに。
だけど…今回だけは、さつきの願いを叶えてやってほしい。
そうだ…!家に帰ったら、俺もてるてる坊主を作ってやろう。
愛するさつきの願いのために。
「大変なんてもんじゃないよ。」
俺はラーメンをすすりながら、この店の親父に愚痴をこぼしていた。
「まぁ、嫁さんとしたら、やれることはすべてやりたいってことなんだろうな。」
「その気持ちがわからないわけじゃないよ。
だけど、あの光景を見たら、嫌にもなるよ。」
今、俺の家の軒下には、端から端までてるてる坊主がずらりと並んでいる。
通りがかる人たちが、怪訝な顔でそれを眺める。
そりゃあそうだろう。
明らかに怪しい光景だからな。
これは、さつきの願いの表れだ。
来週の結婚式は絶対に晴れさせるっていう切実な想いなんだ。
「あんたは有名な雨男だからなぁ。
ここに来る時だって、いつも雨だ。
今日だってほら。」
親父は、窓の方を顎で示した。
外では、激しい雨が地面を叩いている。
そう、俺はいわゆる『雨男』だ。
『雨男』なんて言葉を知らなかった、まだ幼い子供の頃から、どこに行くにもいつも雨だった。
だから、俺は雨には慣れてるし、結婚式も別に雨だってかまわないと思ってる。
だけど、さつきはそうじゃない。
絶対に晴れじゃないと嫌らしいんだ。
だったら、何もわざわざ梅雨のシーズンにしなくても…と思ったけれど、そこは女子のこだわりで、ジューンブライドに憧れてるからなんだ。
なんでも、『6月に結婚する花嫁は幸せになれる』という言い伝えがあるらしいんだけど、6月に結婚してもうまくいかない奴はうまくいかない。
結局、ただの迷信だと思うんだけど、そんなことを言ったら、さつきの機嫌を損ねてしまう。
言わぬが花だ。
それにしても、女っていうのは、つくづくややこしい生き物だ。
「ごちそう様。」
「結婚式が晴れることを祈ってるぜ。」
「おやっさん、ありがとう!」
店を出た時もやっぱり雨。
でも、雨は、そんなにいやなもんじゃない。
けっこうロマンチックだと思うんだけどな。
それに、結婚式は教会の中でやるんだし、それほど迷惑ってわけでもないのに。
だけど…今回だけは、さつきの願いを叶えてやってほしい。
そうだ…!家に帰ったら、俺もてるてる坊主を作ってやろう。
愛するさつきの願いのために。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
【ショートショート】ほのぼの・ほっこり系
樹(いつき)@作品使用時は作者名明記必須
青春
◆こちらは声劇用台本になりますが普通に読んで頂いても癒される作品になっています。
声劇用だと1分半〜5分ほど、黙読だと1分〜3分ほどで読みきれる作品です。
⚠動画・音声投稿サイトにご使用になる場合⚠
・使用許可は不要ですが、自作発言や転載はもちろん禁止です。著作権は放棄しておりません。必ず作者名の樹(いつき)を記載して下さい。(何度注意しても作者名の記載が無い場合には台本使用を禁止します)
・語尾変更や方言などの多少のアレンジはokですが、大幅なアレンジや台本の世界観をぶち壊すようなアレンジやエフェクトなどはご遠慮願います。
その他の詳細は【作品を使用する際の注意点】をご覧下さい。
伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします
*
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃんでした。
実際に逢ってみたら、え、おじいちゃん……!?
しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが吃驚して憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です!
めちゃくちゃかっこいー伴侶がいますので!
おじいちゃんと孫じゃないよ!
週に7日のみやこでご飯
白妙スイ@書籍&電子書籍発刊!
大衆娯楽
同棲していた元カレの裏切りにより、居場所も貯金も失い、引っ越しを余儀なくされた古谷 奈々(ふるや なな)、28歳。
意気消沈してなんとか見つけたボロアパートこと『波佐間ハイツ』にたどり着いた奈々は、大家さんに挨拶をと一室のドアを叩くが、派手な音を立てて出てきたのは、タンクトップにショートパンツ、ぼさぼさショートヘアのしどけない姿をした若い女の子だった。
身なりを整えた女の子は、波佐間 都(はざま みやこ)と名乗る。祖母に代わって大家代理を務めているらしい。
波乱のボロアパート生活がはじまったのだが、ひょんなことから奈々は都と『夕ご飯を一緒に食べる』という約束をすることに。
カルボナーラ、パエリア、大盛り餃子……。
失くしものをした同士の二人が、あたたかなご飯でお腹をいっぱいにするまで。
婚約破棄されなかった者たち
ましゅぺちーの
恋愛
とある学園にて、高位貴族の令息五人を虜にした一人の男爵令嬢がいた。
令息たちは全員が男爵令嬢に本気だったが、結局彼女が選んだのはその中で最も地位の高い第一王子だった。
第一王子は許嫁であった公爵令嬢との婚約を破棄し、男爵令嬢と結婚。
公爵令嬢は嫌がらせの罪を追及され修道院送りとなった。
一方、選ばれなかった四人は当然それぞれの婚約者と結婚することとなった。
その中の一人、侯爵令嬢のシェリルは早々に夫であるアーノルドから「愛することは無い」と宣言されてしまい……。
ヒロインがハッピーエンドを迎えたその後の話。
幽子さんの謎解きレポート~しんいち君と霊感少女幽子さんの実話を元にした本格心霊ミステリー~
しんいち
ミステリー
オカルトに魅了された主人公、しんいち君は、ある日、霊感を持つ少女「幽子」と出会う。彼女は不思議な力を持ち、様々な霊的な現象を感じ取ることができる。しんいち君は、幽子から依頼を受け、彼女の力を借りて数々のミステリアスな事件に挑むことになる。
彼らは、失われた魂の行方を追い、過去の悲劇に隠された真実を解き明かす旅に出る。幽子の霊感としんいち君の好奇心が交錯する中、彼らは次第に深い絆を築いていく。しかし、彼らの前には、恐ろしい霊や謎めいた存在が立ちはだかり、真実を知ることがどれほど危険であるかを思い知らされる。
果たして、しんいち君と幽子は、数々の試練を乗り越え、真実に辿り着くことができるのか?彼らの冒険は、オカルトの世界の奥深さと人間の心の闇を描き出す、ミステリアスな物語である。
【本編完結】異世界再建に召喚されたはずなのにいつのまにか溺愛ルートに入りそうです⁉︎
sutera
恋愛
仕事に疲れたボロボロアラサーOLの悠里。
遠くへ行きたい…ふと、現実逃避を口にしてみたら
自分の世界を建て直す人間を探していたという女神に
スカウトされて異世界召喚に応じる。
その結果、なぜか10歳の少女姿にされた上に
第二王子や護衛騎士、魔導士団長など周囲の人達に
かまい倒されながら癒し子任務をする話。
時々ほんのり色っぽい要素が入るのを目指してます。
初投稿、ゆるふわファンタジー設定で気のむくまま更新。
2023年8月、本編完結しました!以降はゆるゆると番外編を更新していきますのでよろしくお願いします。
怒れるおせっかい奥様
asamurasaki
恋愛
ベレッタ・サウスカールトンは出産時に前世の記憶を思い出した。
可愛い男の子を産んだその瞬間にベレッタは前世の記憶が怒涛のことく甦った。
日本人ので三人の子持ちで孫もいた60代女性だった記憶だ。
そして今までのベレッタの人生も一緒に思い出した。
コローラル子爵家第一女として生まれたけど、実の母はベレッタが4歳の時に急な病で亡くなった。
そして母の喪が明けてすぐに父が愛人とその子を連れて帰ってきた。
それからベレッタは継母と同い年の義妹に虐げられてきた。
父も一緒になって虐げてくるクズ。
そしてベレッタは18歳でこの国の貴族なら通うことが義務付けられてるアカデミーを卒業してすぐに父の持ってきた縁談で結婚して厄介払いされた。
相手はフィンレル・サウスカールトン侯爵22歳。
子爵令嬢か侯爵と結婚なんて…恵まれているはずがない!
あのクズが持ってきた縁談だ、資金援助を条件に訳あり侯爵に嫁がされた。
そのベレッタは結婚してからも侯爵家で夫には見向きもされず、使用人には冷遇されている。
白い結婚でなかったのは侯爵がどうしても後継ぎを必要としていたからだ。
良かったのか悪かったのか、初夜のたったの一度でベレッタは妊娠して子を生んだ。
前世60代だった私が転生して19歳の少女になった訳よね?
ゲームの世界に転生ってやつかしら?でも私の20代後半の娘は恋愛ゲームやそういう異世界転生とかの小説が好きで私によく話していたけど、私はあまり知らないから娘が話してたことしかわからないから、当然どこの世界なのかわからないのよ。
どうして転生したのが私だったのかしら?
でもそんなこと言ってる場合じゃないわ!
あの私に無関心な夫とよく似ている息子とはいえ、私がお腹を痛めて生んだ愛しい我が子よ!
子供がいないなら離縁して平民になり生きていってもいいけど、子供がいるなら話は別。
私は自分の息子の為、そして私の為に離縁などしないわ!
無関心夫なんて宛にせず私が息子を立派な侯爵になるようにしてみせるわ!
前世60代女性だった孫にばぁばと言われていたベレッタが立ち上がる!
無関心夫の愛なんて求めてないけど夫にも事情があり夫にはガツンガツン言葉で責めて凹ませますが、夫へのざまあはありません。
他の人たちのざまあはアリ。
ユルユル設定です。
ご了承下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる