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愛しの彼女
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「うぅ…さ、さむっ!」
「寒い?おかしいわね。こんなに暖かいのに…
和君、もしかして熱でもあるんじゃないの?」
助手席の美香が俺の顔を心配そうに覗き込む。
「え?そうかなぁ…」
言われてみれば、少し熱っぽいような気もする。
(あ……そう言えば……)
おととい、突然の通り雨に遭って、ずぶ濡れになって帰ったんだ。
もしかしたら、そのせいで風邪をひいてしまったのかもしれない。
「どうする?帰る?」
「いや、たいしたことないから大丈夫だ。」
俺は、少しばかり強がってそう言った。
今日は、約一か月ぶりのデート。
このところ、俺の仕事が忙しかったからなかなか会えなくて、ようやく会えたこんな日に、早々に帰るなんてこと、出来るはずがない。
「具合悪かったら言ってよ。
運転変わるから。」
「だから、大丈夫だって。」
そうは言ったものの、確かに体はだるい。
美香の話に、相槌を打つのが精一杯だ。
やがて、一時間程経って、車はどうにか目的地に着いた。
「わぁ、なんか良い香りがするね。」
今日は、ドライブがてらさくらんぼ狩りにやって来たんだ。
俺も美香もとにかく果物が好きだから、今日、ここに来ることをとても楽しみにしていた。
「いっぱい実ってるね!美味しそう~!」
「そうだね。」
目の前のさくらんぼをもいで口の中に放り込む。
とてもうまいはずなのに…ほんの少し食べただけで、もう食べられないような気がした。
しかも、立っているだけで、くらくらしてきた。
「和君…大丈夫?
なんか、顔色が悪いよ。」
「うん…やっぱり、だめみたいだ。」
「えーっ!?」
結局、さくらんぼをほとんど食べないうちに、俺たちは帰る羽目になってしまった。
それなのに、文句ひとつ言わずに俺を連れて帰ってくれて、そのまま看病してくれた美香の優しさに、俺は惚れ直した。
やはり、結婚するなら彼女しかいない。
そんな気持ちが、さらに強く固まった。
「寒い?おかしいわね。こんなに暖かいのに…
和君、もしかして熱でもあるんじゃないの?」
助手席の美香が俺の顔を心配そうに覗き込む。
「え?そうかなぁ…」
言われてみれば、少し熱っぽいような気もする。
(あ……そう言えば……)
おととい、突然の通り雨に遭って、ずぶ濡れになって帰ったんだ。
もしかしたら、そのせいで風邪をひいてしまったのかもしれない。
「どうする?帰る?」
「いや、たいしたことないから大丈夫だ。」
俺は、少しばかり強がってそう言った。
今日は、約一か月ぶりのデート。
このところ、俺の仕事が忙しかったからなかなか会えなくて、ようやく会えたこんな日に、早々に帰るなんてこと、出来るはずがない。
「具合悪かったら言ってよ。
運転変わるから。」
「だから、大丈夫だって。」
そうは言ったものの、確かに体はだるい。
美香の話に、相槌を打つのが精一杯だ。
やがて、一時間程経って、車はどうにか目的地に着いた。
「わぁ、なんか良い香りがするね。」
今日は、ドライブがてらさくらんぼ狩りにやって来たんだ。
俺も美香もとにかく果物が好きだから、今日、ここに来ることをとても楽しみにしていた。
「いっぱい実ってるね!美味しそう~!」
「そうだね。」
目の前のさくらんぼをもいで口の中に放り込む。
とてもうまいはずなのに…ほんの少し食べただけで、もう食べられないような気がした。
しかも、立っているだけで、くらくらしてきた。
「和君…大丈夫?
なんか、顔色が悪いよ。」
「うん…やっぱり、だめみたいだ。」
「えーっ!?」
結局、さくらんぼをほとんど食べないうちに、俺たちは帰る羽目になってしまった。
それなのに、文句ひとつ言わずに俺を連れて帰ってくれて、そのまま看病してくれた美香の優しさに、俺は惚れ直した。
やはり、結婚するなら彼女しかいない。
そんな気持ちが、さらに強く固まった。
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