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花より団子
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「あ、片瀬さん!良かったら、お昼ごはん…」
「ごめん!
今日もこいつと打ち合わせがあるんだ。」
「あ…そ、そうなんですね…じゃあ、また……」
藤田花音は、決まりの悪い顔をして、去って行った。
「あ~あ…なんて、もったいないことするんだ。
藤田さん、可哀想に…
っていうか、俺をだしにするのはやめろよ。
俺、絶対、藤田さんに恨まれてるわ。
酷いじゃないか!」
「まぁ、そう言うなって。
昼飯、おごるから。」
「700円の定食じゃ、引き合わないぞ!」
ぶつくさ言いながらも、上条は僕に付いてきた。
「それにしても……マジで興味ないのか?」
焼き鯖を頬張りながら、上条が僕に問う。
「……興味って?」
「だ~か~ら~…
藤田さんのこと。
おまえも知ってるだろ?
藤田さんにはファンクラブまであるんだぞ。
あんな美人がうちみたいな会社に入って来ただけでも奇跡だ。
新入社員の中でも断トツの綺麗さじゃないか。」
「まぁ、確かに美人だよな。
僕もそれはそう思う。」
「でも、興味がない…?」
僕は素直に頷いた。
「か~…信じられないな。
そもそも、おまえ…知り合ってから特定の彼女がいないよな。
まさか…噂通りなんじゃないだろうな。」
「馬鹿、そんなことあるわけないだろ。
僕は、理想が高いだけ。
それに、ここんとこずっと仕事が忙しかったからな。」
「おまえ、イケメンだからっていい気になってるんじゃないのか?
いつか、女性からの告白を全部断ってきたことへの天罰が下るかもしれないぞ。
一生独身とか、男のストーカーに追いまくられるとか…」
「そんなわけないだろ。」
上条の奴…全くいやなことを言う。
僕には、今、好きな人がいる。
何年ぶりかに、本気で好きになった人だ。
ゴールデンウィークに、どこかに誘おうと思っていたところだというのに。
新入社員の歓迎会の時から、ずっと気になっていた。
とても気が利き、かといって少しもでしゃばることはない。
それは、仕事においても同じだった。
ただ優秀だというだけではない。
僕は、彼女の細かな気配りにどれほど癒されていることか。
知れば知るほど、惹かれてしまう。
「あ、藤田さんだ…」
社に戻って来た時、向かい側から藤田と彼女が歩いて来た。
僕の胸はにわかに高鳴る。
「まさに引き立て役だな。」
上条がそう言うのは、彼女のことだ。
背が高く、スタイルもセンスも良い藤田と比べると、小柄で地味な彼女は確かに霞んで見える。
だけど、それがなんだというんだ。
彼女の名は、武田団子(まるこ)
その名前のせいで、彼女はまるちゃんと呼ばれている。
僕には藤田よりそんな団子の方がずっと魅力的に見える。
そのことを言ったら、きっと上条は驚くだろうな。
「……なに、笑ってんだよ?」
「別に……」
僕の笑みはなかなか消えなかった。
「ごめん!
今日もこいつと打ち合わせがあるんだ。」
「あ…そ、そうなんですね…じゃあ、また……」
藤田花音は、決まりの悪い顔をして、去って行った。
「あ~あ…なんて、もったいないことするんだ。
藤田さん、可哀想に…
っていうか、俺をだしにするのはやめろよ。
俺、絶対、藤田さんに恨まれてるわ。
酷いじゃないか!」
「まぁ、そう言うなって。
昼飯、おごるから。」
「700円の定食じゃ、引き合わないぞ!」
ぶつくさ言いながらも、上条は僕に付いてきた。
「それにしても……マジで興味ないのか?」
焼き鯖を頬張りながら、上条が僕に問う。
「……興味って?」
「だ~か~ら~…
藤田さんのこと。
おまえも知ってるだろ?
藤田さんにはファンクラブまであるんだぞ。
あんな美人がうちみたいな会社に入って来ただけでも奇跡だ。
新入社員の中でも断トツの綺麗さじゃないか。」
「まぁ、確かに美人だよな。
僕もそれはそう思う。」
「でも、興味がない…?」
僕は素直に頷いた。
「か~…信じられないな。
そもそも、おまえ…知り合ってから特定の彼女がいないよな。
まさか…噂通りなんじゃないだろうな。」
「馬鹿、そんなことあるわけないだろ。
僕は、理想が高いだけ。
それに、ここんとこずっと仕事が忙しかったからな。」
「おまえ、イケメンだからっていい気になってるんじゃないのか?
いつか、女性からの告白を全部断ってきたことへの天罰が下るかもしれないぞ。
一生独身とか、男のストーカーに追いまくられるとか…」
「そんなわけないだろ。」
上条の奴…全くいやなことを言う。
僕には、今、好きな人がいる。
何年ぶりかに、本気で好きになった人だ。
ゴールデンウィークに、どこかに誘おうと思っていたところだというのに。
新入社員の歓迎会の時から、ずっと気になっていた。
とても気が利き、かといって少しもでしゃばることはない。
それは、仕事においても同じだった。
ただ優秀だというだけではない。
僕は、彼女の細かな気配りにどれほど癒されていることか。
知れば知るほど、惹かれてしまう。
「あ、藤田さんだ…」
社に戻って来た時、向かい側から藤田と彼女が歩いて来た。
僕の胸はにわかに高鳴る。
「まさに引き立て役だな。」
上条がそう言うのは、彼女のことだ。
背が高く、スタイルもセンスも良い藤田と比べると、小柄で地味な彼女は確かに霞んで見える。
だけど、それがなんだというんだ。
彼女の名は、武田団子(まるこ)
その名前のせいで、彼女はまるちゃんと呼ばれている。
僕には藤田よりそんな団子の方がずっと魅力的に見える。
そのことを言ったら、きっと上条は驚くだろうな。
「……なに、笑ってんだよ?」
「別に……」
僕の笑みはなかなか消えなかった。
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