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関東人と関西人
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「そこだよ、そこのマンション。」
「わぁ、すっごいおしゃれやん。」
「外観だけだよ。中は普通だから。」
ちょっと照れたように、梨花がそう言って笑った。
今日は雛祭り。
私が東京に出て来て初めての雛祭りだ。
そして、梨花の家に来たのも初めて。
梨花は、私が働くブティックのすぐ傍の雑貨店の店員。
お互いに店を行き来するうちに仲良くなった、初めての関東の友達だ。
「さ、そこに座って。」
「わぁ、中もめちゃめちゃええ感じやん。
なぁ、ここって家賃なんぼなん?」
「え……」
あ、いけない。
つい、いつもの癖が出てしまった。
梨花が引いてるよ。
こっちではそういうことは聞いちゃいけないんだった。
「あ…か、可愛いお雛さん!」
私は話を逸らすため、そう言って愛想笑いを浮かべた。
雛祭りを一緒に祝おうと誘ってくれたのは梨花だ。
一人暮らしなのに、小さいとはいえ、お雛様を持ってるなんて、なんかすごい。
「すぐに用意するからね。」
エプロンをかけながら、梨花が言う。
「あ…なんか手伝おか?」
「え?……じゃあ、ワインの栓抜いといて。」
差し出された栓抜きも可愛い。
雑貨店に勤めてるせいか、梨花の部屋にあるものはどれもこれも可愛い。
そんなことを思ってる間にも、テーブルの上には次々と料理やお菓子が並んでいく。
(あれ…?)
私の視線はあるもののところで止まった。
「なぁ、梨花…なんでポン菓子なん?」
「ポン菓子?」
「ほら、これ。」
「やだ、芳佳ったら。これはひなあられじゃない。」
「え…?」
いや、どう見てもポン菓子なんだけど…
「私ね、ひなあられ大好きなんだ。」
梨花はそう言って、ポン菓子を口の中に放り込んで微笑む。
だから、私も真似して食べてみたら…
「わぁ、なんや、これ…」
「え?どうかした?」
「やっぱしこれ、ポン菓子やん。
ひなあられやったら、甘いはずないやん。」
「えー、ひなあられは甘いもんだよ。」
「な、なんでやねんな。」
そこでようやく、私たちは関西と関東では、ひなあられが違うものだということに気がついた。
「うちらのひなあられは、丸くてもっと大きくて基本甘くないねん。
チョコのかかったやつだけが甘いんよ。」
「へぇ、そうなんだ!」
「あ、そうや。来年お母さんに送ってもらうわ。」
「わぁ、楽しみ!」
他愛ない話を続けながら、私たちはお雛祭りを楽しんだ。
来年の雛祭りも、梨花と一緒にやりたいと思いながら…
「わぁ、すっごいおしゃれやん。」
「外観だけだよ。中は普通だから。」
ちょっと照れたように、梨花がそう言って笑った。
今日は雛祭り。
私が東京に出て来て初めての雛祭りだ。
そして、梨花の家に来たのも初めて。
梨花は、私が働くブティックのすぐ傍の雑貨店の店員。
お互いに店を行き来するうちに仲良くなった、初めての関東の友達だ。
「さ、そこに座って。」
「わぁ、中もめちゃめちゃええ感じやん。
なぁ、ここって家賃なんぼなん?」
「え……」
あ、いけない。
つい、いつもの癖が出てしまった。
梨花が引いてるよ。
こっちではそういうことは聞いちゃいけないんだった。
「あ…か、可愛いお雛さん!」
私は話を逸らすため、そう言って愛想笑いを浮かべた。
雛祭りを一緒に祝おうと誘ってくれたのは梨花だ。
一人暮らしなのに、小さいとはいえ、お雛様を持ってるなんて、なんかすごい。
「すぐに用意するからね。」
エプロンをかけながら、梨花が言う。
「あ…なんか手伝おか?」
「え?……じゃあ、ワインの栓抜いといて。」
差し出された栓抜きも可愛い。
雑貨店に勤めてるせいか、梨花の部屋にあるものはどれもこれも可愛い。
そんなことを思ってる間にも、テーブルの上には次々と料理やお菓子が並んでいく。
(あれ…?)
私の視線はあるもののところで止まった。
「なぁ、梨花…なんでポン菓子なん?」
「ポン菓子?」
「ほら、これ。」
「やだ、芳佳ったら。これはひなあられじゃない。」
「え…?」
いや、どう見てもポン菓子なんだけど…
「私ね、ひなあられ大好きなんだ。」
梨花はそう言って、ポン菓子を口の中に放り込んで微笑む。
だから、私も真似して食べてみたら…
「わぁ、なんや、これ…」
「え?どうかした?」
「やっぱしこれ、ポン菓子やん。
ひなあられやったら、甘いはずないやん。」
「えー、ひなあられは甘いもんだよ。」
「な、なんでやねんな。」
そこでようやく、私たちは関西と関東では、ひなあられが違うものだということに気がついた。
「うちらのひなあられは、丸くてもっと大きくて基本甘くないねん。
チョコのかかったやつだけが甘いんよ。」
「へぇ、そうなんだ!」
「あ、そうや。来年お母さんに送ってもらうわ。」
「わぁ、楽しみ!」
他愛ない話を続けながら、私たちはお雛祭りを楽しんだ。
来年の雛祭りも、梨花と一緒にやりたいと思いながら…
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