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俺はまだ君を追いかける
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今日はバレンタインデー。
ただ、それだけのことなのに、俺の心は暗く塞がる。
世間は浮かれているけれど、俺はバレンタインデーに辛いトラウマがあるんだ。
いや、正確にはバレンタインデーではないけれど…
バレンタインデーの少し前、俺は川瀬美鈴に告白した。
そして、美鈴と鬼ごっこをした。
美鈴を捕まえられたら付き合ってあげると言われ、俺は必死に彼女を追いかけた。
しかし、俺は彼女を捕まえることは出来ず、結局、早々に諦めて家に戻った。
だけど、次の日、とんでもないことを知らされた。
美鈴が昨日から家に戻ってないという話だ。
次の日後には、警察が来た。
最後にあいつに会った者ということで、俺は取り調べを受け、正直にあの日のことを話した。
俺と美鈴が校内を走っているところを見かけた者は何人もいたから、嘘を吐いても仕方がないと思ったんだ。
俺は多分疑われていたんだろうと思うけど、帰った時間が早かったことや、事件に繋がるようなものが発見されることもなかったから、俺の容疑はなんとか晴れた。
やがて、美鈴の行方がわからないまま、次の年に俺たちは卒業した。
その間も、美鈴のことを忘れたことはなかった。
俺がすぐに捕まえていたら…もっとしっかり探していたら…そんな想いが俺をずっと苦しめ続けた。
彼女の失踪を自分のせいのように感じていた。
大学には入ったものの、俺の気持ちは暗いままでいつしか登校しなくなり、家にひきこもった。
もちろん就職もすることはなく、生きてるのか死んでるのかわからないような無為な日々を過ごした。
卒業して十数年程が経った時、経営難から高校は廃校となった。
俺は、今、その朽ちた校門の前に佇んでいる。
なぜ、今頃、こんな所に来てしまったのかよくわからない…
いつもバレンタインデーには特に気持ちが深く沈んで、外になんて出ようと考えないのに…
俺は門を乗り越え、中に足を踏み入れた。
人気のない日暮れの学校は、ただ不気味なだけだった。
それなのに、俺は引き返さなかった。
まるで、引き寄せられるように歩いて行った。
それは、美鈴に呼び出された体育館の裏だ。
そう、ここで、美鈴は捕まえたら付き合ってあげると言い、その場からうさぎのように駆け出したんだ。
俺は一瞬出遅れたが、彼女を追って駆け出して…
そんなことを思い出したら、俺は自然と駆け出していた。
そこには俺以外誰もいないのに、俺はまるで、そこに美鈴の姿が見えるかのように全力で駆け続ける。
息が切れて苦しくなっても、俺の足は止まらない。
(もうダメだ…)
俺は廊下に倒れ込んだ。
吹き出す汗を拭いながら、なんとか息を整える。
朦朧とした意識の中で、俺は美術室の壁に揺らめく穴のようなものがあることに気付いた。
それを見た時、なぜだか、不思議と涙が込み上げた。
現実離れした光景なのに、俺は確信した。
美鈴はここに入ったのだ、と。
ここに入れば、きっと美鈴に会える…
何の根拠もないのに、俺はそのことを確信していた。
(美鈴…待たせたな…)
俺は、揺らめく穴に向かって歩き出した。
ただ、それだけのことなのに、俺の心は暗く塞がる。
世間は浮かれているけれど、俺はバレンタインデーに辛いトラウマがあるんだ。
いや、正確にはバレンタインデーではないけれど…
バレンタインデーの少し前、俺は川瀬美鈴に告白した。
そして、美鈴と鬼ごっこをした。
美鈴を捕まえられたら付き合ってあげると言われ、俺は必死に彼女を追いかけた。
しかし、俺は彼女を捕まえることは出来ず、結局、早々に諦めて家に戻った。
だけど、次の日、とんでもないことを知らされた。
美鈴が昨日から家に戻ってないという話だ。
次の日後には、警察が来た。
最後にあいつに会った者ということで、俺は取り調べを受け、正直にあの日のことを話した。
俺と美鈴が校内を走っているところを見かけた者は何人もいたから、嘘を吐いても仕方がないと思ったんだ。
俺は多分疑われていたんだろうと思うけど、帰った時間が早かったことや、事件に繋がるようなものが発見されることもなかったから、俺の容疑はなんとか晴れた。
やがて、美鈴の行方がわからないまま、次の年に俺たちは卒業した。
その間も、美鈴のことを忘れたことはなかった。
俺がすぐに捕まえていたら…もっとしっかり探していたら…そんな想いが俺をずっと苦しめ続けた。
彼女の失踪を自分のせいのように感じていた。
大学には入ったものの、俺の気持ちは暗いままでいつしか登校しなくなり、家にひきこもった。
もちろん就職もすることはなく、生きてるのか死んでるのかわからないような無為な日々を過ごした。
卒業して十数年程が経った時、経営難から高校は廃校となった。
俺は、今、その朽ちた校門の前に佇んでいる。
なぜ、今頃、こんな所に来てしまったのかよくわからない…
いつもバレンタインデーには特に気持ちが深く沈んで、外になんて出ようと考えないのに…
俺は門を乗り越え、中に足を踏み入れた。
人気のない日暮れの学校は、ただ不気味なだけだった。
それなのに、俺は引き返さなかった。
まるで、引き寄せられるように歩いて行った。
それは、美鈴に呼び出された体育館の裏だ。
そう、ここで、美鈴は捕まえたら付き合ってあげると言い、その場からうさぎのように駆け出したんだ。
俺は一瞬出遅れたが、彼女を追って駆け出して…
そんなことを思い出したら、俺は自然と駆け出していた。
そこには俺以外誰もいないのに、俺はまるで、そこに美鈴の姿が見えるかのように全力で駆け続ける。
息が切れて苦しくなっても、俺の足は止まらない。
(もうダメだ…)
俺は廊下に倒れ込んだ。
吹き出す汗を拭いながら、なんとか息を整える。
朦朧とした意識の中で、俺は美術室の壁に揺らめく穴のようなものがあることに気付いた。
それを見た時、なぜだか、不思議と涙が込み上げた。
現実離れした光景なのに、俺は確信した。
美鈴はここに入ったのだ、と。
ここに入れば、きっと美鈴に会える…
何の根拠もないのに、俺はそのことを確信していた。
(美鈴…待たせたな…)
俺は、揺らめく穴に向かって歩き出した。
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