64 / 364
イヴの日に…
1
しおりを挟む
(私って、馬鹿みたい…)
自分自身の馬鹿さ加減に腹が立って仕方なかった。
だけど、好きな気持ちは止められない。
あの日…粉雪の降るイヴの日から、彼のことが忘れられなくなった。
どうしてあの時、連絡先を訊かなかったんだろう?
いや…訊いても無駄だったかもしれない。
彼は、あの瞬間を一人で過ごしたくなかっただけ。
私のことなんて、なんとも思っていない。
だからこそ、連絡先を訊かなかったんだ。
そんなことはわかってるのに、私は、次の年のイヴ…あの場所に向かった。
彼に会えるのではないかという淡い期待は、すぐに弾け飛んだけど…
彼は、東京住まいだと言っていた。
それが本当だったら、そんなところに来るはずがない。
そもそも、そんな話も本当かどうかわからないのだ。
もしかしたら、あんな話は全部嘘で、彼には愛する妻や子供だっているかもしれない。
そんな想像をしながらも、私はまた次の年のイヴに同じ行動をした。
そしてまた次の年も、そのまた次の年も…
愚かな自分自身に呆れ果てた。
あまりにも馬鹿だ…
5年もこんな馬鹿なことを繰り返してしまった。
さすがにもう諦めよう。
彼に会える可能性なんて、ないに等しいんだから。
(あ……)
帰ろうと思った時…鉛色の空から降りだしたのは、雨ではなく雪だった。
それを見たら、5年前のことがより鮮明に思い出された。
そう…あの時、美香から行けないっていう電話があって…
やりきれない気分で電話を切ったら…
「あ、あの……」
振り向いた先に立っていたのは、彼だった。
人懐っこい笑顔を浮かべて…
(え?)
私は瞬間的にパニックに陥った。
えっと…これは…夢?
「まさか、会えるとは思わなかった…」
「え…?えっと……」
「……そうですよね。覚えてないですよね、5年も前のことなんて。」
私は、首を振った。
そうじゃない。
あなたのことは、一時も忘れたことがない。
今、私が戸惑っているのは…
「良かったら…今日、一緒に過ごしてもらえませんか?」
「え?あ、あの…」
「先約がありますか?」
「い、いえ…」
5年前とは違うレストランで、私たちはいろいろなことを話した。
彼は言った。
待ち合わせをした相手が彼氏だと思ってたから、名前も連絡先も訊ねなかったのだと。
「本当はすぐにでも来たかったんですが、なかなか休みが取れなくて…
それに、まさか会えるなんて思ってなかったんです。」
「そ、そうですよね。」
「今日はどうしてあそこへ?」
ちょっと迷ったけれど、私は正直に答えた。
「私…あの日からあなたのことが忘れられなくて…
もしかしたら、イヴにあそこに行ったら、また会えるんじゃないかと思って…それで、毎年あそこに行ってたんです。今年で5回目です…」
「え……」
彼は、私の言葉に固まった。
引いてしまったんだろうか?痛い女だって思われたかな。
「……あの…名前も知らないのに、こんなことを言って良いのかどうかわかりませんが…
良かったら、僕と付き合って下さい。
僕も、ずっとあなたのことが忘れられなかった…」
私の答えは『YES』に決まっている。
レストランを出たら、あたりは白に覆われていた。
「これからは、イヴ以外にも会えますよね?」
「ええ、もちろんです。」
降り積もった雪を踏みしめながら、私たちは歩く…
この奇跡的な再会は、雪の精からの贈り物…そんなファンタジックな妄想に浮かれながら…
自分自身の馬鹿さ加減に腹が立って仕方なかった。
だけど、好きな気持ちは止められない。
あの日…粉雪の降るイヴの日から、彼のことが忘れられなくなった。
どうしてあの時、連絡先を訊かなかったんだろう?
いや…訊いても無駄だったかもしれない。
彼は、あの瞬間を一人で過ごしたくなかっただけ。
私のことなんて、なんとも思っていない。
だからこそ、連絡先を訊かなかったんだ。
そんなことはわかってるのに、私は、次の年のイヴ…あの場所に向かった。
彼に会えるのではないかという淡い期待は、すぐに弾け飛んだけど…
彼は、東京住まいだと言っていた。
それが本当だったら、そんなところに来るはずがない。
そもそも、そんな話も本当かどうかわからないのだ。
もしかしたら、あんな話は全部嘘で、彼には愛する妻や子供だっているかもしれない。
そんな想像をしながらも、私はまた次の年のイヴに同じ行動をした。
そしてまた次の年も、そのまた次の年も…
愚かな自分自身に呆れ果てた。
あまりにも馬鹿だ…
5年もこんな馬鹿なことを繰り返してしまった。
さすがにもう諦めよう。
彼に会える可能性なんて、ないに等しいんだから。
(あ……)
帰ろうと思った時…鉛色の空から降りだしたのは、雨ではなく雪だった。
それを見たら、5年前のことがより鮮明に思い出された。
そう…あの時、美香から行けないっていう電話があって…
やりきれない気分で電話を切ったら…
「あ、あの……」
振り向いた先に立っていたのは、彼だった。
人懐っこい笑顔を浮かべて…
(え?)
私は瞬間的にパニックに陥った。
えっと…これは…夢?
「まさか、会えるとは思わなかった…」
「え…?えっと……」
「……そうですよね。覚えてないですよね、5年も前のことなんて。」
私は、首を振った。
そうじゃない。
あなたのことは、一時も忘れたことがない。
今、私が戸惑っているのは…
「良かったら…今日、一緒に過ごしてもらえませんか?」
「え?あ、あの…」
「先約がありますか?」
「い、いえ…」
5年前とは違うレストランで、私たちはいろいろなことを話した。
彼は言った。
待ち合わせをした相手が彼氏だと思ってたから、名前も連絡先も訊ねなかったのだと。
「本当はすぐにでも来たかったんですが、なかなか休みが取れなくて…
それに、まさか会えるなんて思ってなかったんです。」
「そ、そうですよね。」
「今日はどうしてあそこへ?」
ちょっと迷ったけれど、私は正直に答えた。
「私…あの日からあなたのことが忘れられなくて…
もしかしたら、イヴにあそこに行ったら、また会えるんじゃないかと思って…それで、毎年あそこに行ってたんです。今年で5回目です…」
「え……」
彼は、私の言葉に固まった。
引いてしまったんだろうか?痛い女だって思われたかな。
「……あの…名前も知らないのに、こんなことを言って良いのかどうかわかりませんが…
良かったら、僕と付き合って下さい。
僕も、ずっとあなたのことが忘れられなかった…」
私の答えは『YES』に決まっている。
レストランを出たら、あたりは白に覆われていた。
「これからは、イヴ以外にも会えますよね?」
「ええ、もちろんです。」
降り積もった雪を踏みしめながら、私たちは歩く…
この奇跡的な再会は、雪の精からの贈り物…そんなファンタジックな妄想に浮かれながら…
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子
ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。
Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。
連続寸止めで、イキたくて泣かされちゃう女の子のお話
まゆら
恋愛
投稿を閲覧いただき、ありがとうございます(*ˊᵕˋ*)
「一日中、イかされちゃうのと、イケないままと、どっちが良い?」
久しぶりの恋人とのお休みに、食事中も映画を見ている時も、ずっと気持ち良くされちゃう女の子のお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる