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忘れられない
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「あ…見て、見て!雪!」
「あ…本当…」
ファミレスの大きな窓から、私達は降り出した雪を見ていた。
雪は、ゆっくりとまるで踊るように落ちて来る。
「そりゃ、寒いはずだわ。
もしかして、初雪かな?」
「そうだね、多分…」
仲の良い女友達と他愛ない会話を交わしながら、私は以前のことを思い出していた。
三年前に別れた彼を…
いまだに忘れきれない人…
最初から背伸びしっぱなしの恋だった。
待ち合わせしていた友達から遅れると連絡が来て…
私は近くで催されていた美術展に足を踏み入れた。
何の関心もなく、ただ暇を潰すためだけに…
そんな私とは違い、彼は、まるで愛する人を愛でるかのような熱い視線で絵画を見ていた。
その真剣で真っすぐな視線に、私はまさかの一目惚れ。
突発的な情熱からいつになく積極的になり、私の方から声をかけた。
彼は私の知らないことをたくさん知っていて…
「へぇ、雪待月生まれだなんて、素敵だね。」
「雪待月…?確か、11月は霜月じゃなかった?」
「そう、陰暦では霜月だね。
雪待月も、11月の別名なんだよ。
雪を待つ月だなんて、風情があって本当に素敵だよね。」
誕生月を誉められたことなんて、いまだかつてなかったからか、なんだかやけに嬉しく感じた。
なんでもないただの11月生まれが、キラキラしたものに思えたのだ。
私はなんとか彼についていこうと頑張ったけど、彼と私の間には予想通り大きな隔たりがあり…
無理をしていた私は次第に疲れ、地を出して、彼に不満や我が儘をぶつけた。
彼は、そういうことが嫌いな人だとわかっていたのに、私は彼の嫌がることばかりしてしまったのだ。
「またいつか…今回とは違うお付き合いが出来たら良いね…」
彼は去って行った。
二年にも満たない付き合いだったけど、彼を失った衝撃はとても大きなものだった。
あの日以来、私の心には大きな穴が開き、それはまだ今もぽっかりと口を開けている。
「11月ってね…」
「何?」
「11月って、雪待月っていう別名があるんだって。」
「雪待月?えーーっ!誰も雪なんて待たないよね。
寒いし雪かき大変だしさ。
あ、スノーボーダーは待ってるか。」
「……そうだね。」
これから先、私の誕生月をほめてくれる人と出会えることなんて、きっとないだろう。
(やり直すことなんて、出来るのかな?)
私は、白い粉雪を見ながら、ふとそんなことを考えた。
「あ…本当…」
ファミレスの大きな窓から、私達は降り出した雪を見ていた。
雪は、ゆっくりとまるで踊るように落ちて来る。
「そりゃ、寒いはずだわ。
もしかして、初雪かな?」
「そうだね、多分…」
仲の良い女友達と他愛ない会話を交わしながら、私は以前のことを思い出していた。
三年前に別れた彼を…
いまだに忘れきれない人…
最初から背伸びしっぱなしの恋だった。
待ち合わせしていた友達から遅れると連絡が来て…
私は近くで催されていた美術展に足を踏み入れた。
何の関心もなく、ただ暇を潰すためだけに…
そんな私とは違い、彼は、まるで愛する人を愛でるかのような熱い視線で絵画を見ていた。
その真剣で真っすぐな視線に、私はまさかの一目惚れ。
突発的な情熱からいつになく積極的になり、私の方から声をかけた。
彼は私の知らないことをたくさん知っていて…
「へぇ、雪待月生まれだなんて、素敵だね。」
「雪待月…?確か、11月は霜月じゃなかった?」
「そう、陰暦では霜月だね。
雪待月も、11月の別名なんだよ。
雪を待つ月だなんて、風情があって本当に素敵だよね。」
誕生月を誉められたことなんて、いまだかつてなかったからか、なんだかやけに嬉しく感じた。
なんでもないただの11月生まれが、キラキラしたものに思えたのだ。
私はなんとか彼についていこうと頑張ったけど、彼と私の間には予想通り大きな隔たりがあり…
無理をしていた私は次第に疲れ、地を出して、彼に不満や我が儘をぶつけた。
彼は、そういうことが嫌いな人だとわかっていたのに、私は彼の嫌がることばかりしてしまったのだ。
「またいつか…今回とは違うお付き合いが出来たら良いね…」
彼は去って行った。
二年にも満たない付き合いだったけど、彼を失った衝撃はとても大きなものだった。
あの日以来、私の心には大きな穴が開き、それはまだ今もぽっかりと口を開けている。
「11月ってね…」
「何?」
「11月って、雪待月っていう別名があるんだって。」
「雪待月?えーーっ!誰も雪なんて待たないよね。
寒いし雪かき大変だしさ。
あ、スノーボーダーは待ってるか。」
「……そうだね。」
これから先、私の誕生月をほめてくれる人と出会えることなんて、きっとないだろう。
(やり直すことなんて、出来るのかな?)
私は、白い粉雪を見ながら、ふとそんなことを考えた。
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