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あぁ、勘違い。
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「はぁ~…」
「なんだい、なんだい、辛気臭い顔した上に、溜め息なんて吐くんじゃないよ!」
「うっせー!
これだけ客が来ないんじゃ、溜め息くらい吐きたくなるだろうが。」
「あんたって人は昔からそうなんだ。
大した努力もせずに、世の中を憂いてばかり…
そんなんじゃ、うまくいくものだってうまくいかないね!」
「なんだとぉ!」
泰造と美津子は、結婚当初からこの魚屋を営んでいる。
ここは、泰造の親から受け継いだ魚屋だ。
ただ誠実に活きの良い魚を仕入れ、お客のために薄利で頑張って来た。
だから、店の佇まいもオンボロで、昭和感満載のものだった。
今月には増税というものが始まり、そして、世の中はキャッシュレス時代へと移行した。
しかし、夫婦揃ってメカ音痴のふたりには、なんとかペイなんて対応出来るはずもない。
ふたりはスマホさえ持っていないのだ。
魚離れの昨今、売り上げはただでさえ下降気味なのに、そんなに時代遅れでは店は潰れてしまう。
何かしなければ…しかし、金はない。
二人は、すっかり崖っぷちに追いやられていた。
「じゃあ、おまえには何か良い案があるっていうのか。」
「ないさ、ないからイライラすんだろう!」
言い争いの最中、テレビはハロウィンの特集を流していた。
ふたりは、画面に気を惹かれる。
「美津子!今の奴だ!
今月は、魔物の仮想をして店に出るんだ!」
「私も今、同じことを言おうって思ったんだ。
そうだよ、ハロインで盛り上がれば、きっと客は来るよ!
じゃあ、私は仮想を作って来るから、店は頼んだよ。」
「おう、任せとけ!」
美津子は家に戻り、古くなったシーツを使って、衣装の作製に取り掛かった。
「へい、らっしゃい、らっしゃい。
魚を買わなきゃ、いたずらするぞ!」
「ハッピーハロイン!」
ふたりは、すすけたシーツで作った衣装を着こみ、顔にもメイクを施した。
美津子的にはゾンビのつもりだったのだが、どう見てもパンダにしか見えなかった。
「あ、ママ…パンダちゃんがいるよ。」
「あら、本当。」
『うちの近所に、なぜだかパンダの格好をした魚屋を発見。
意味不明だが、意外にも魚は新鮮、しかも安い!』
子供やツイッターのおかげで、泰造と美津子の魚屋は大盛況。
「やったな!さすがはハロインだ!」
「本当だね。あぁ、ありがたや、ありがたや。」
泰造は、神棚に備えたカボチャに手を合わせた。
「なんだい、なんだい、辛気臭い顔した上に、溜め息なんて吐くんじゃないよ!」
「うっせー!
これだけ客が来ないんじゃ、溜め息くらい吐きたくなるだろうが。」
「あんたって人は昔からそうなんだ。
大した努力もせずに、世の中を憂いてばかり…
そんなんじゃ、うまくいくものだってうまくいかないね!」
「なんだとぉ!」
泰造と美津子は、結婚当初からこの魚屋を営んでいる。
ここは、泰造の親から受け継いだ魚屋だ。
ただ誠実に活きの良い魚を仕入れ、お客のために薄利で頑張って来た。
だから、店の佇まいもオンボロで、昭和感満載のものだった。
今月には増税というものが始まり、そして、世の中はキャッシュレス時代へと移行した。
しかし、夫婦揃ってメカ音痴のふたりには、なんとかペイなんて対応出来るはずもない。
ふたりはスマホさえ持っていないのだ。
魚離れの昨今、売り上げはただでさえ下降気味なのに、そんなに時代遅れでは店は潰れてしまう。
何かしなければ…しかし、金はない。
二人は、すっかり崖っぷちに追いやられていた。
「じゃあ、おまえには何か良い案があるっていうのか。」
「ないさ、ないからイライラすんだろう!」
言い争いの最中、テレビはハロウィンの特集を流していた。
ふたりは、画面に気を惹かれる。
「美津子!今の奴だ!
今月は、魔物の仮想をして店に出るんだ!」
「私も今、同じことを言おうって思ったんだ。
そうだよ、ハロインで盛り上がれば、きっと客は来るよ!
じゃあ、私は仮想を作って来るから、店は頼んだよ。」
「おう、任せとけ!」
美津子は家に戻り、古くなったシーツを使って、衣装の作製に取り掛かった。
「へい、らっしゃい、らっしゃい。
魚を買わなきゃ、いたずらするぞ!」
「ハッピーハロイン!」
ふたりは、すすけたシーツで作った衣装を着こみ、顔にもメイクを施した。
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「あ、ママ…パンダちゃんがいるよ。」
「あら、本当。」
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意味不明だが、意外にも魚は新鮮、しかも安い!』
子供やツイッターのおかげで、泰造と美津子の魚屋は大盛況。
「やったな!さすがはハロインだ!」
「本当だね。あぁ、ありがたや、ありがたや。」
泰造は、神棚に備えたカボチャに手を合わせた。
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