上 下
27 / 364
ナポレオンにはなれないけれど

しおりを挟む
「まぁ、綺麗!
サファイヤね。」

 「うん、そうなんだ。」

 涼子は、早速、それを薬指にさして眺める。



 「でも、どうしてサファイヤなの?
 私の誕生石は真珠だし、好きな石はダイヤなのに…」

 「うん、同じ石ばかりっていうのも芸がないかなって思ってね。
たまにはこういう色も良いんじゃないかって…」

 「そうね。良いわ。
 気に入った。
ありがとう。」

 彼女は、どうやら僕の贈ったサファイヤが気に入ったようだ。



 (……これで最後だから……)



 彼女と知り合ったのは、半年程前のことだった。
 友人に誘われて行ったパーティで、彼女と出会った。
 彼女は可愛いだけじゃなく、快活で社交的で…
パーティでもたくさんの男性に取り囲まれていた。



ところが、その彼女が僕に話しかけて来て…
帰りには連絡先を交換し、彼女の方から付き合ってほしいと告白された。
 僕は、夢心地だった。
 彼女みたいに素敵な人と付き合えるなんて、とても信じられない気分だった。
 初デートもとても楽しくて、僕は早々と彼女との結婚を夢見た。



だけど、一週間程経った頃、僕は知人から嫌な噂話を聞いた。
 彼女が、男と楽しそうに歩いてたというものだ。
 僕というものがありながら、そんなこと、あるはずがない。
どうしても気になって、彼女に直接聞いてみたら、それはただ道を訊ねられて連れて行ってあげただけだということがわかった。
 僕はほっとして、彼女にはお詫びに真珠のネックレスを贈った。
 彼女は目を輝かせて喜んだ。



 彼女は宝石が好きみたいだ。
だから、僕は会う度に彼女に宝石をプレゼントした。
 僕達はとてもうまくいっていた。
なのに、また別の者から嫌な話を聞いた。
 僕は彼女を信じていたけど、そんなことが何度か続き…気になって、興信所に彼女の身辺調査を依頼した。



その結果は、目を覆いたくなるものだった。
 彼女は、この数か月間に何人もの男と浮気をしていた。
ショックだった。
だけど、悔しいことに、それでも、彼女のことが嫌いになれなかった。



どうすれば、彼女は浮気をやめてくれるんだろう?
 毎日、僕はそのことばかりを考えていた。



そんな時、僕は、たまたまサファイヤの伝説を耳にした。
 皇帝ナポレオンが愛した女性、ジョセフィーヌの浮気癖を封じるため、サファイヤを贈ったという話を…



別に、そんなこと、本気で信じてるわけじゃない。
ただ、ナポレオンの真似をしてみただけだ。
 僕は、ナポレオンとは比べ物にはならないけれど…

 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

妾の子だからといって、公爵家の令嬢を侮辱してただで済むと思っていたんですか?

木山楽斗
恋愛
公爵家の妾の子であるクラリアは、とある舞踏会にて二人の令嬢に詰められていた。 彼女達は、公爵家の汚点ともいえるクラリアのことを蔑み馬鹿にしていたのである。 公爵家の一員を侮辱するなど、本来であれば許されることではない。 しかし彼女達は、妾の子のことでムキになることはないと高を括っていた。 だが公爵家は彼女達に対して厳正なる抗議をしてきた。 二人が公爵家を侮辱したとして、糾弾したのである。 彼女達は何もわかっていなかったのだ。例え妾の子であろうとも、公爵家の一員であるクラリアを侮辱してただで済む訳がないということを。 ※HOTランキング1位、小説、恋愛24hポイントランキング1位(2024/10/04) 皆さまの応援のおかげです。誠にありがとうございます。

短編集:あくまで私は生きている【2023年度文芸部部誌より】

氷上ましゅ。
現代文学
部活動で作成した部誌をアルファポリスに置き換えたものです。気になるものから読んでいただいて構いません。 1作目:ハグレモノ@2023版(改変) 2作目:Fellow(無修正) 3作目:へつほつの牢籠ぎ(若干改変) 4作目:西へと歩む(微修正) 5作目:フタリシズカ(改変) 6作目(長編):半年前の5日には何があった?前編(初公開作品) 7作目(長編):春に捧ぐ 1(初公開作品) 8作目:希死概念(初公開作品)

問答無用、食道楽事件帳

献残屋藤吉郎
大衆娯楽
事業に失敗するまでは食道楽をして楽しんでいた無用主水が托鉢旅をして、全国の名刹を訪ねながら、仲間になった平正義と言う武道家と、流かすみと言う女性と知り合い、三人で托鉢旅を続ける、社会派サスペンス小説、ハードボイル的な物語

【意味怖】意味が解ると怖い話【いみこわ】

灰色猫
ホラー
意味が解ると怖い話の短編集です! 1話完結、解説付きになります☆ ちょっとしたスリル・3分間の頭の体操 気分のリラックスにいかがでしょうか。 皆様からの応援・コメント 皆様からのフォロー 皆様のおかげでモチベーションが保てております。 いつも本当にありがとうございます! ※小説家になろう様 ※アルファポリス様 ※カクヨム様 ※ノベルアッププラス様 にて更新しておりますが、内容は変わりません。 【死に文字】42文字の怖い話 【ゆる怖】 も連載始めました。ゆるーくささっと読めて意外と面白い、ゆる怖作品です。 ニコ動、YouTubeで試験的に動画を作ってみました。見てやってもいいよ、と言う方は 「灰色猫 意味怖」 を動画サイト内でご検索頂ければ出てきます。

新☆何でも屋

みのる
大衆娯楽
店主中村となった新装開店『何でも屋』。その約1年の軌跡をまた!思いついた時にみのるがseiiti氏から引き継ぎ、書いていきます。著作権はseiiti氏から譲り受けました。 (気が向いたら足を止めてやって下さい) ※とても短文であることを覚悟しておいてください。 ※※更に不定期更新であることも覚悟しておいてください。m(_ _)m ※※※知ってる人は知っている…… 知らなかった人……は、……そのまま居ても(ある意味)良し!←? 実は作者が……最近みのるではありませぬ。 (てか気づいてたけどぉ?) そう!まさかのseiiti氏なのです!

アルファポリス収益報告書 初心者の1ヶ月の収入 お小遣い稼ぎ(投稿インセンティブ)スコアの換金&アクセス数を増やす方法 表紙作成について

黒川蓮
エッセイ・ノンフィクション
アルファポリスさんで素人が投稿を始めて約2ヶ月。書いたらいくら稼げたか?24hポイントと獲得したスコアの換金方法について。アルファポリスを利用しようか迷っている方の参考になればと思い書いてみました。その後1ヶ月経過、実践してみてアクセスが増えたこと、やると増えそうなことの予想も書いています。ついでに、小説家になるためという話や表紙作成方法も書いてみましたm(__)m

【一話完結】3分で読める背筋の凍る怖い話

冬一こもる
ホラー
本当に怖いのはありそうな恐怖。日常に潜むあり得る恐怖。 読者の日常に不安の種を植え付けます。 きっといつか不安の花は開く。

愛すべきマリア

志波 連
恋愛
幼い頃に婚約し、定期的な交流は続けていたものの、互いにこの結婚の意味をよく理解していたため、つかず離れずの穏やかな関係を築いていた。 学園を卒業し、第一王子妃教育も終えたマリアが留学から戻った兄と一緒に参加した夜会で、令嬢たちに囲まれた。 家柄も美貌も優秀さも全て揃っているマリアに嫉妬したレイラに指示された女たちは、彼女に嫌味の礫を投げつける。 早めに帰ろうという兄が呼んでいると知らせを受けたマリアが発見されたのは、王族の居住区に近い階段の下だった。 頭から血を流し、意識を失っている状態のマリアはすぐさま医務室に運ばれるが、意識が戻ることは無かった。 その日から十日、やっと目を覚ましたマリアは精神年齢が大幅に退行し、言葉遣いも仕草も全て三歳児と同レベルになっていたのだ。 体は16歳で心は3歳となってしまったマリアのためにと、兄が婚約の辞退を申し出た。 しかし、初めから結婚に重きを置いていなかった皇太子が「面倒だからこのまま結婚する」と言いだし、予定通りマリアは婚姻式に臨むことになった。 他サイトでも掲載しています。 表紙は写真ACより転載しました。

処理中です...