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秋祭りの後で
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(私…何やってるんだろう?)
秋祭りの雑踏の中で、私はふと立ち止まり、空を見上げた。
雨こそ降らなかったけど、雲に覆い隠されて星すら見えない。
今の私にお似合いだ。
わざわざ浴衣なんて着て…
本当に馬鹿みたい。
あたりを見渡せば、浴衣を着てるのは子供か若い女の子。
私みたいなおばさんは浴衣なんて着ていない。
そんなことを思ったら、その場からすぐに逃げ出したいような恥ずかしさを感じた。
人混みからなんとか抜け出して、古びたベンチに腰掛けた。
今日の私はどうかしていた…
どうして、そんなことに今気付くんだろう。
もっと早くに気が付けば、こんな所には来なかったし、もっと遅くに気が付けば、こんな恥ずかしい想いをすることはなかったのに…
私は、遠い昔に想いを馳せた。
あれは、高校三年の頃のこと…
父さんの仕事の都合で、年明けには引っ越すことが決まっていて、引っ越しの準備やら、受験のことやらで精神的にも落ち着けない日々を過ごしていた。
「琴美…秋祭りに行かないか?」
誘ってくれたのは、幼馴染の圭祐。
同じ年だし、家も近所だし、子供の頃はすごく仲良かったけど、中学に入ってしばらくしたあたりからなんとなく疎遠になった。
理由なんてない。
あるとすれば、ただ、お互いに思春期だったからだろう。
そんな圭祐からの久しぶりに誘いは、嬉しいような…それでいて煩わしいような気がした。
今更、なによ…そんな気分だった。
きっと、私は圭祐にはほのかな恋心を抱いていたのだろう。
だけど、ずっと冷たくされ…もうすぐここを離れるって時になって、そんな誘いをしてくることが、無性に腹立たしかったのだ。
秋祭りの誘い…それは告白するという意味だ。
私の周りにも、秋祭りで告白されてカップルになった友達が何人かいる。
誘われた女の子は、浴衣を着て秋祭りに出掛ける。
浴衣を着ていて、誘いに応じる時点でそれはほぼOKという意味になる。
私は迷いに迷い…その挙句に行かなかった。
意地を張ってしまったのだ。
後悔はしたけれど、もう遅かった。
圭祐は学校や近所で会っても、あからさまに私を避けた。
嫌われた…そう思った。
やがて、引っ越しの日が来て…
私は圭祐と話すことも出来ないまま、遠くの土地へ引っ越した。
それから、いつの間にか15年の時が流れた。
その間には、本当にいろいろなことがあった。
何の因果か、私と両親はまたこの町に舞い戻って来た。
おばあちゃんの介護のためだ。
圭祐の家は、跡形もなくなくなっていた。
ショックだったけど、どこかでほっとしてもいた。
そして、秋祭り…
私は、何を期待していたのだろう?
ここに来れば、圭祐に会えるとでも…?
あれから15年も経ってる…会えるはずなんてないし、会ってどうするつもりだったんだろう?
私達はただの幼馴染なのに…
とりとめのない考えを巡らせているうちに、祭りは終わっていた。
人影もまばらな暗い道を歩き始めた時…
「琴美…琴美じゃないのか…?」
私の名を呼ぶ声がした。
秋祭りの雑踏の中で、私はふと立ち止まり、空を見上げた。
雨こそ降らなかったけど、雲に覆い隠されて星すら見えない。
今の私にお似合いだ。
わざわざ浴衣なんて着て…
本当に馬鹿みたい。
あたりを見渡せば、浴衣を着てるのは子供か若い女の子。
私みたいなおばさんは浴衣なんて着ていない。
そんなことを思ったら、その場からすぐに逃げ出したいような恥ずかしさを感じた。
人混みからなんとか抜け出して、古びたベンチに腰掛けた。
今日の私はどうかしていた…
どうして、そんなことに今気付くんだろう。
もっと早くに気が付けば、こんな所には来なかったし、もっと遅くに気が付けば、こんな恥ずかしい想いをすることはなかったのに…
私は、遠い昔に想いを馳せた。
あれは、高校三年の頃のこと…
父さんの仕事の都合で、年明けには引っ越すことが決まっていて、引っ越しの準備やら、受験のことやらで精神的にも落ち着けない日々を過ごしていた。
「琴美…秋祭りに行かないか?」
誘ってくれたのは、幼馴染の圭祐。
同じ年だし、家も近所だし、子供の頃はすごく仲良かったけど、中学に入ってしばらくしたあたりからなんとなく疎遠になった。
理由なんてない。
あるとすれば、ただ、お互いに思春期だったからだろう。
そんな圭祐からの久しぶりに誘いは、嬉しいような…それでいて煩わしいような気がした。
今更、なによ…そんな気分だった。
きっと、私は圭祐にはほのかな恋心を抱いていたのだろう。
だけど、ずっと冷たくされ…もうすぐここを離れるって時になって、そんな誘いをしてくることが、無性に腹立たしかったのだ。
秋祭りの誘い…それは告白するという意味だ。
私の周りにも、秋祭りで告白されてカップルになった友達が何人かいる。
誘われた女の子は、浴衣を着て秋祭りに出掛ける。
浴衣を着ていて、誘いに応じる時点でそれはほぼOKという意味になる。
私は迷いに迷い…その挙句に行かなかった。
意地を張ってしまったのだ。
後悔はしたけれど、もう遅かった。
圭祐は学校や近所で会っても、あからさまに私を避けた。
嫌われた…そう思った。
やがて、引っ越しの日が来て…
私は圭祐と話すことも出来ないまま、遠くの土地へ引っ越した。
それから、いつの間にか15年の時が流れた。
その間には、本当にいろいろなことがあった。
何の因果か、私と両親はまたこの町に舞い戻って来た。
おばあちゃんの介護のためだ。
圭祐の家は、跡形もなくなくなっていた。
ショックだったけど、どこかでほっとしてもいた。
そして、秋祭り…
私は、何を期待していたのだろう?
ここに来れば、圭祐に会えるとでも…?
あれから15年も経ってる…会えるはずなんてないし、会ってどうするつもりだったんだろう?
私達はただの幼馴染なのに…
とりとめのない考えを巡らせているうちに、祭りは終わっていた。
人影もまばらな暗い道を歩き始めた時…
「琴美…琴美じゃないのか…?」
私の名を呼ぶ声がした。
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