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気合いの鍋

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(あぁ~…だりぃ…)



もう9月だっていうのに、まったくもうなんて暑さだ。
 俺は、見た目から体力だけが取り柄みたいに思われてるけど、意外と暑さには弱い。
 今年は特に暑さが厳しかったせいか、もうすっかり夏バテ状態だ。
 身体は鉛のように重いし、最近はめっきり食欲も落ちた。
ただ、見栄だけでなんとか食べてはいるものの、それもどこまで頑張れるのやら。
そもそも、そんな見栄を張ることがおかしい。
 食欲がないならないと言えば良いのに、俺は変に意地っ張りだから。



 (よ~し!一丁、気合いを入れるか!)



 *



 (準備万端整った!)



テーブルの上には、ぐつぐつと煮えるチゲ鍋。
エアコンはつけない。
 窓も締め切った。



 思いっきり汗を流してすっきりすれば、こんな症状なんてきっと吹き飛ぶ!



 (うまい!)



 辛さと熱さでちょっと食べただけで、汗が噴き出る。
なんとなく食欲も刺激されたみたいで、いつもより食が進む気がした。
 俺は、調子に乗ってどんどん食べ続けた。



そのうちに、俺は異変に気がついた。
なにかがおかしい…
鼓動が速い…
頭がふらふらする…



やばい…なんだか…俺……







 目が覚めたのはベッドの上だった。
 俺は、熱中症で病院に運ばれたらしい。



 「感謝しろよ。
 俺が行かなかったら、お前あのまま死んでたかもしれないんだからな。」

 「あぁ、本当にありがとう。」

 俺を助けてくれたのは、隣の吉村だったらしい。
 吉村も独身で、俺たちは良くお互いの部屋を行き来していた。
 昨夜も、吉村は、俺と一緒に飲もうと思ってうちに来たらしい。



 「しかし、なんでまたあんなくそ暑いところで鍋なんかやってたんだ?」

 「え?あ、あぁ…ちょっと、その…我慢大会みたいな…」

 「我慢大会…?ひとりでか?」

 「まぁな…」

 「おまえ…本当に変わってんな。」

そう言って、吉村は笑った。



 無駄な見栄はもうやめよう…腕に繋がれた点滴を見ながら、俺は心からそう思った。
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