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鯉のぼり

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「パパ、僕、もっと大きいのがほしい!」

 「大樹、そのことなら前にもお話しただろ?
このアパートには大きな鯉のぼりを立てる場所はない。
だから、ちっちゃいのしか無理なんだ。大樹にもわかるだろ?」

 「わかんないよ、リョウちゃんのところにはすっごく大きな鯉のぼりがあるんだ。
ものすごくかっこいい鯉のぼりだよ。
 僕もあんなのがほしい!」

 「リョウちゃんの家は大きなお家だから出来るんだ。
でも、ここは狭いから無理なんだって。」

 「だったら、僕も広いお家に住みたい!
そしたら、鯉のぼりだって…」

 「……いいかげんにしないか!
 何度言っても、だめなもんはだめなんだ!」

 感情的な声をあげてしまった俺に、大樹は大きな声で泣き出した。



 「うるさいっ!泣いたってどうにもならないぞ!」

 苛立ち、俺は大樹を怒鳴りつけ、大樹は美和子にすがってさらに大きな声で泣いた。
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