１ページ劇場②

主人公

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 「主人公・香田瞬役を務めます、小林悠太です。
どうぞよろしくお願いします。」

 笑顔で拍手を送りながら、俺は奥歯を噛みしめた。
 悔しさで胸が張り裂けそうだ。



 今回のドラマは携帯小説からのドラマ化だ。
どうせちゃらい男と女のラブコメか、お涙ちょうだいの病気ものかと思ったら、意外にもしっかりした骨太の内容で、特に、主人公の香田瞬には自分と重なるところをいくつも感じ、共感を覚えた。
 久しぶりに「演じてみたい！」と強く感じるキャラクターだった。
 何度かのオーディションを突破し、最終段階に残ったのが俺と小林だった。
 小林は、ルックスは良いが、経験も浅いし演技的にはそう際立った役者ではない。
 主人公は俺に決定するものと思っていた。
 事務所もそう信じていた。
だが、結果は意外にも小林に軍配が上がった。
 信じられない想いだった。
なんでも、プロデューサーの娘が小林の大ファンだからという噂を聞いて、俺は腸が煮えくり返る想いだった。
たとえ、それが真実だとしても、俺にはそれをどうこう言うことは出来ない。
 言ったところで、負け犬の遠吠えとしか思ってもらえない。
 結局、俺は、香田瞬の親友役の安田英二の役におさまった。
けっこう出番は多いが、やはり主人公と比べると影は薄い。
 熱血漢な主人公に対して、穏やかで控えめな性格で、俺の好きな性格とは違う。
 今更もうどうにもならないことはわかっていながら、俺は香田瞬役がなかなか諦めきれないでいた。