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猫のレストラン

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(う~…さむっ……)

 背を丸め、ポケットに手を突っ込んで、僕は会社への道を急いだ。


 (あ……)

 寒いはずだ…
空からはふわりと白いものが舞い降りてきた。


 立春はとっくに過ぎたのに、やっぱりまだまだ冬なんだ…
諦めにも似た気持ちで、僕は小雪の舞う町を歩き続けた。


やがて、昼になり…僕は、同僚の吉田に誘われて、新しく出来たレストランにランチを食べに向かった。


 「今週は、ランチメニューが半額なんですよ。」

 「へぇ、そりゃあ嬉しいな。」

レストランは、会社から10分程歩いた場所にあった。
それは、駅とは反対側の道で、あまり来たことのない場所だった。


 「あ、あれだ!」

 大きな猫の描かれた看板が目を引く。
 何語かわからない文字が書いてあるけど、きっと猫を意味するものなんじゃないかと思った。


 「いらっしゃいませ。」

 軽やかなベルの音と共に、僕達は店の中に入った。
 店の中は思ったよりも広く、席の大半が埋まってる。
 出窓や、家具の上…至る所に、猫の置物が飾られていた。


 「わっ!」

 足元にふわりとした感触を感じ、思わず僕は声をあげてしまった。
 視線を落とすと、それは毛足の長いもこもこした猫だった。
きっと、この店の飼い猫なんだろう。


 僕たちは窓際のテーブルについた。


 「良い席が空いてましたね。」

 「ツイてたな。」

ふと見ると、窓の外にはピンクの可愛らしい梅の花が咲いていた。
 寒いとはいえ、やはり春は近付いてきてるんだと、なんだか気持ちがほっと和んだ。


 「……おいしいですね!」

しばらくすると、ランチが運ばれて来た。
 見た目にも綺麗で、ボリュームもなかなかだ。
 吉田はうまそうに食べていたけど、僕は正直言って味はいまいちだと思った。
なんだかはっきりしない味だ。


 「三上さん、本当にうまかったですね!
ぜひ、また行きましょうね!」

 「そうだな。」

 吉田は味音痴なのかもしれない。
そう思いながら、僕達は会社に戻った。


その晩…家に戻った僕は酷い寒気と、のどの痛みと頭痛に襲われた。
 関節も痛い…
次の朝、ふらふらの身体で病院に向かった。
インフルエンザだった…


そうか…
昨日のランチがうまくないと思ったのは、そのせいだったのか…
全身に倦怠感を感じながら、ぼんやりとそんなことを考えた。


 家への帰り道…
近所の家の庭に咲いてる梅の花が目に映った。


もうすぐ春…
冬の名残のインフルエンザも、じきに良くなることだろう…
良くなったら、また行ってみよう。
あの猫だらけのレストランに…
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