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相思華

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彼と知り合ったのは、一年半程前のこと。
 当時、彼は私が良く行くカラオケ店で働いていて、何度か顔を合わせたことがあった。
そんなある日、近くのコンビニでたまたま出会うということが二度程続いて、それがきっかけで私達は次第に仲良くなっていった。


 付き合い始めて半年もしないうちに、私達は一緒に暮らすことになった。
 私の部屋の方が広かったから、彼がうちに転がり込んで来た形だ。
 最初はとてもうまくいっていた。
だけど、彼が職を変えてから、私達はすっかり冷え切った関係に変わってた。

 彼には借金があった。
はっきりとは言わないけれど、どうやら親御さんの遺した借金みたいだ。
 私と暮らすようになってから、彼は早くに借金を返したいからと、夜働くようになった。
その方が時給が良いからと。
 私が帰って来ると、彼はもういない。
 明け方に戻って来て、彼が寝入った頃、私が起きて仕事に行く…
完全なすれちがいだ。
 一緒に暮らしてるとはいえ、一人で暮らしていた時となんら変わらない。
いや、一緒に暮らしているからこそ、こんなすれ違いが殊更に辛く想えてしまう。



 (あ……)



 仕事からの帰り道、目の端に捕えた赤い群生…
燃えるようなその赤は、彼岸花だった。



 (……まるで私達みたい……)



この花には「相思華」という呼び方もあると聞いた。
この花には葉がない。
 冬になり花が終わると葉が出て来る。
 花と葉は決して同じ時期には巡り合えない…
だからこそ、花は葉を想い、葉は花を想うと言われているけれど、私達は違う…
会えない時間が二人の距離を遠ざけている。



 我慢はしたけど、もう限界だ。
 私から別れを告げよう…
私の方が年上なんだから…


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