212 / 217
side シュウ
4
しおりを挟む
「ひかり…」
俺は殴られるのを覚悟しながら、ひかりの唇に自分の唇を押し付けた。
久し振りの柔らかな感触に俺の心は芯から震えた。
ひかりの息遣い…温かさ…もうこれで最後なんだ…この感触はもう二度と……
様々な感情が心の中をかき乱した。
これが最後なら、ずっとこのままこうしていたい…
だけど、俺の願いは儚く消えた。
ひかりの腕がそっと俺を押し戻し、柔らかな唇が離れていった。
ただ、黙って…
「ありがとう…ひかり……」
「ど、どういうことなの?
シュウ、こんな所に呼び出して、一体何をするつもり?」
ひかりは俺にくるりと背を向け、少し怒ったような声でそう訊ねた
「ひかり……シュウはな、おまえさんを元の世界に戻すことを決意した。
とても大切なものと引き…」
「爺さん、余計なことを言うな!」
「ど…どういうこと!?
も、元の世界って……シュウ、どういうこと?」
「ひかり…実はな、この門を動かすためのエネルギーを作り出す方法を賢者が思い付いたんだ。
もちろん、成功するかどうかはまだわからない。
賢者の言うことだから多分だめだと思うけど…ま、一応、やってみよう。」
俺は涙を拭い、ひかりを門の片側に立たせた。
「良いか、ひかりはここにいて、ここを持ってるだけで良いんだ。」
「こう?」
ひかりは素直に門に触れた。
「そうだ。そのままでいるんだぞ。」
俺は、すぐに反対側に行き、ひかりと同じように門に触れた。
「どういうこと?
これで何が…あ……」
それはすぐに始まった。
俺の身体には何の異変もない。
だけど、門がうっすらと明るくなり始めて…
俺の鼓動は一気に速さを増した。
賢者の言う通り、この門は今俺達の記憶を吸い取ってエネルギーに変換してるんだと悟った。
「ひかり…なんでも良いからそのままの態勢でいるんだ。
すぐに済むから…」
「わ…わかった…」
ひかりは明るくなった門を見上げながら、言われた通りにじっとしていた。
俺は、今すぐにでも手を離してしまいたい衝動を必死に堪えて…そして、そっと目を閉じた。
ひかりのことを見るのが…忘れていくのが辛かったから…
俺は殴られるのを覚悟しながら、ひかりの唇に自分の唇を押し付けた。
久し振りの柔らかな感触に俺の心は芯から震えた。
ひかりの息遣い…温かさ…もうこれで最後なんだ…この感触はもう二度と……
様々な感情が心の中をかき乱した。
これが最後なら、ずっとこのままこうしていたい…
だけど、俺の願いは儚く消えた。
ひかりの腕がそっと俺を押し戻し、柔らかな唇が離れていった。
ただ、黙って…
「ありがとう…ひかり……」
「ど、どういうことなの?
シュウ、こんな所に呼び出して、一体何をするつもり?」
ひかりは俺にくるりと背を向け、少し怒ったような声でそう訊ねた
「ひかり……シュウはな、おまえさんを元の世界に戻すことを決意した。
とても大切なものと引き…」
「爺さん、余計なことを言うな!」
「ど…どういうこと!?
も、元の世界って……シュウ、どういうこと?」
「ひかり…実はな、この門を動かすためのエネルギーを作り出す方法を賢者が思い付いたんだ。
もちろん、成功するかどうかはまだわからない。
賢者の言うことだから多分だめだと思うけど…ま、一応、やってみよう。」
俺は涙を拭い、ひかりを門の片側に立たせた。
「良いか、ひかりはここにいて、ここを持ってるだけで良いんだ。」
「こう?」
ひかりは素直に門に触れた。
「そうだ。そのままでいるんだぞ。」
俺は、すぐに反対側に行き、ひかりと同じように門に触れた。
「どういうこと?
これで何が…あ……」
それはすぐに始まった。
俺の身体には何の異変もない。
だけど、門がうっすらと明るくなり始めて…
俺の鼓動は一気に速さを増した。
賢者の言う通り、この門は今俺達の記憶を吸い取ってエネルギーに変換してるんだと悟った。
「ひかり…なんでも良いからそのままの態勢でいるんだ。
すぐに済むから…」
「わ…わかった…」
ひかりは明るくなった門を見上げながら、言われた通りにじっとしていた。
俺は、今すぐにでも手を離してしまいたい衝動を必死に堪えて…そして、そっと目を閉じた。
ひかりのことを見るのが…忘れていくのが辛かったから…
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
ザコ魔法使いの僕がダンジョンで1人ぼっち!魔獣に襲われても石化した僕は無敵状態!経験値が溜まり続けて気づいた時には最強魔導士に!?
さかいおさむ
ファンタジー
戦士は【スキル】と呼ばれる能力を持っている。
僕はスキルレベル1のザコ魔法使いだ。
そんな僕がある日、ダンジョン攻略に向かう戦士団に入ることに……
パーティに置いていかれ僕は1人ダンジョンに取り残される。
全身ケガだらけでもう助からないだろう……
諦めたその時、手に入れた宝を装備すると無敵の石化状態に!?
頑張って攻撃してくる魔獣には申し訳ないがダメージは皆無。経験値だけが溜まっていく。
気づけば全魔法がレベル100!?
そろそろ反撃開始してもいいですか?
内気な最強魔法使いの僕が美女たちと冒険しながら人助け!
またね。次ね。今度ね。聞き飽きました。お断りです。
朝山みどり
ファンタジー
ミシガン伯爵家のリリーは、いつも後回しにされていた。転んで怪我をしても、熱を出しても誰もなにもしてくれない。わたしは家族じゃないんだとリリーは思っていた。
婚約者こそいるけど、相手も自分と同じ境遇の侯爵家の二男。だから、リリーは彼と家族を作りたいと願っていた。
だけど、彼は妹のアナベルとの結婚を望み、婚約は解消された。
リリーは失望に負けずに自身の才能を武器に道を切り開いて行った。
「なろう」「カクヨム」に投稿しています。
ひっそり静かに生きていきたい 神様に同情されて異世界へ。頼みの綱はアイテムボックス
於田縫紀
ファンタジー
雨宿りで立ち寄った神社の神様に境遇を同情され、私は異世界へと転移。
場所は山の中で周囲に村等の気配はない。あるのは木と草と崖、土と空気だけ。でもこれでいい。私は他人が怖いから。
追放された英雄の辺境生活~静かに暮らしたいのに周りが放ってくれない~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
自分の家族と民を守るために、戦い続けて戦争を終わらせた英雄アイク。
しかし、国に戻ると……褒賞として、彼は辺境で領主を命じられる。
そこは廃れた場所で田舎で何もなく、爵位はもらったが実質的に追放のような扱いだった。
彼は絶望するかと思ったが……「まあ、元々頭も良くないし、貴族のあれこれはわからん。とりあえず、田舎でのんびり過ごすかね」と。
しかし、そんな彼を周りが放っておくはずもなく……これは追放された英雄が繰り広げるスローライフ?物語である。
王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません
きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」
「正直なところ、不安を感じている」
久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー
激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。
アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。
第2幕、連載開始しました!
お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。
以下、1章のあらすじです。
アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。
表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。
常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。
それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。
サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。
しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。
盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。
アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?
巻き込まれた薬師の日常
白髭
ファンタジー
商人見習いの少年に憑依した薬師の研究・開発日誌です。自分の居場所を見つけたい、認められたい。その心が原動力となり、工夫を凝らしながら商品開発をしていきます。巻き込まれた薬師は、いつの間にか周りを巻き込み、人脈と産業の輪を広げていく。現在3章継続中です。【カクヨムでも掲載しています】レイティングは念の為です。
異世界で捨て子を育てたら王女だった話
せいめ
ファンタジー
数年前に没落してしまった元貴族令嬢のエリーゼは、市井で逞しく生きていた。
元貴族令嬢なのに、どうして市井で逞しく生きれるのか…?それは、私には前世の記憶があるからだ。
毒親に殴られたショックで、日本人の庶民の記憶を思い出した私は、毒親を捨てて一人で生きていくことに決めたのだ。
そんな私は15歳の時、仕事終わりに赤ちゃんを見つける。
「えぇー!この赤ちゃんかわいい。天使だわ!」
こんな場所に置いておけないから、とりあえず町の孤児院に連れて行くが…
「拾ったって言っておきながら、本当はアンタが産んで育てられないからって連れてきたんだろう?
若いから育てられないなんて言うな!責任を持ちな!」
孤児院の職員からは引き取りを拒否される私…
はあ?ムカつくー!
だったら私が育ててやるわ!
しかし私は知らなかった。この赤ちゃんが、この後の私の人生に波乱を呼ぶことに…。
誤字脱字、いつも申し訳ありません。
ご都合主義です。
第15回ファンタジー小説大賞で成り上がり令嬢賞を頂きました。
ありがとうございました。
幼馴染み達がハーレム勇者に行ったが別にどうでもいい
みっちゃん
ファンタジー
アイ「恥ずかしいから家の外では話しかけて来ないで」
サユリ「貴方と話していると、誤解されるからもう2度と近寄らないで」
メグミ「家族とか気持ち悪、あんたとは赤の他人だから、それじゃ」
義理の妹で同い年のアイ
幼馴染みのサユリ
義理の姉のメグミ
彼女達とは仲が良く、小さい頃はよく一緒遊んでいた仲だった…
しかし
カイト「皆んなおはよう」
勇者でありイケメンでもあるカイトと出会ってから、彼女達は変わってしまった
家でも必要最低限しか話さなくなったアイ
近くにいることさえ拒絶するサユリ
最初から知らなかった事にするメグミ
そんな生活のを続けるのが
この世界の主人公 エイト
そんな生活をしていれば、普通なら心を病むものだが、彼は違った…何故なら
ミュウ「おはよう、エイト」
アリアン「おっす!エイト!」
シルフィ「おはようございます、エイト様」
エイト「おはよう、ミュウ、アリアン、シルフィ」
カイトの幼馴染みでカイトが密かに想いを寄せている彼女達と付き合っているからだ
彼女達にカイトについて言っても
ミュウ「カイト君?ただ小さい頃から知ってるだけだよ?」
アリアン「ただの知り合い」
シルフィ「お嬢様のストーカー」
エイト「酷い言われ様だな…」
彼女達はカイトの事をなんとも思っていなかった
カイト「僕の彼女達を奪いやがって」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる