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side シュウ
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「じゃ、そろそろ私……」
「待ちなさい。」
立ちあがろうとするひかりの手を、賢者が引き止めた。
「ひかり…もう一度聞くが、おまえさん、本当にここを出ていくのか?
シュウとは本当に別れるつもりなのか?」
「……うん。
その気持ちは変わらない。」
ひかりの返事に迷いはなかった。
なぜ、そんなに早く答えられるんだ。
そんなにあいつのことが好きなのか!
「……わかった。
では、ひかり…今夜はここに泊まっていくんじゃ。」
「え?で…でも…」
「これはわしのわがままじゃがな…
最後に、三人で楽しく夕食を食べて、夜はいろんなことを話して…
良い思い出を作りたいんじゃ…頼む、年寄りの願いを聞いてくれ。」
賢者は、両手を合わせてひかりにそう懇願した。
爺さん、まさか俺の本当の気持ちをひかりに話すつもりじゃないだろうな?
俺が今でもひかりを愛していることを…
それはなんとしても阻止しなくてはならない。
だけど、今夜一晩だけでもひかりと一緒にいられるなら、どんなに嬉しいことだろう…
未練なのはわかってる…だけど、俺はその誘惑に勝てなかった。
「そうだな、うまいもの食べて、昔話でもして楽しく別れるのも良いかもしれない。
うん、そうしよう!」
「だけど…私……」
俺のテンションとは裏腹に、ひかりは気乗りしない様子だった。
「心配すんなって!
俺はもうひかりとよりを戻したいなんて気持ちは欠片程もないから、引き止めようなんて思ってないよ。
ただ、この前のあれはあまりにも…な?
だから、良い別れ方をしたいんだ。
そうだ、お別れパーティーってことで盛り上がろうぜ!」
戸惑った様子のひかりに、俺はハラハラしながらその返事を待った。
「……わかった。
でも、雅樹君に連絡しなきゃ。
家には電話がないから、私ちょっと…」
「ひかり、それなら雅樹君とやらに手紙を書くんじゃ。
そして、それをタカにでも届けてもらえばええ。
な、シュウ?」
「あ、そ、そうだな。」
賢者の言った通りに、ひかりはあいつへ簡単な手紙を書き、俺はタカに連絡をしてその手紙を預けた。
「じゃ、そろそろ私……」
「待ちなさい。」
立ちあがろうとするひかりの手を、賢者が引き止めた。
「ひかり…もう一度聞くが、おまえさん、本当にここを出ていくのか?
シュウとは本当に別れるつもりなのか?」
「……うん。
その気持ちは変わらない。」
ひかりの返事に迷いはなかった。
なぜ、そんなに早く答えられるんだ。
そんなにあいつのことが好きなのか!
「……わかった。
では、ひかり…今夜はここに泊まっていくんじゃ。」
「え?で…でも…」
「これはわしのわがままじゃがな…
最後に、三人で楽しく夕食を食べて、夜はいろんなことを話して…
良い思い出を作りたいんじゃ…頼む、年寄りの願いを聞いてくれ。」
賢者は、両手を合わせてひかりにそう懇願した。
爺さん、まさか俺の本当の気持ちをひかりに話すつもりじゃないだろうな?
俺が今でもひかりを愛していることを…
それはなんとしても阻止しなくてはならない。
だけど、今夜一晩だけでもひかりと一緒にいられるなら、どんなに嬉しいことだろう…
未練なのはわかってる…だけど、俺はその誘惑に勝てなかった。
「そうだな、うまいもの食べて、昔話でもして楽しく別れるのも良いかもしれない。
うん、そうしよう!」
「だけど…私……」
俺のテンションとは裏腹に、ひかりは気乗りしない様子だった。
「心配すんなって!
俺はもうひかりとよりを戻したいなんて気持ちは欠片程もないから、引き止めようなんて思ってないよ。
ただ、この前のあれはあまりにも…な?
だから、良い別れ方をしたいんだ。
そうだ、お別れパーティーってことで盛り上がろうぜ!」
戸惑った様子のひかりに、俺はハラハラしながらその返事を待った。
「……わかった。
でも、雅樹君に連絡しなきゃ。
家には電話がないから、私ちょっと…」
「ひかり、それなら雅樹君とやらに手紙を書くんじゃ。
そして、それをタカにでも届けてもらえばええ。
な、シュウ?」
「あ、そ、そうだな。」
賢者の言った通りに、ひかりはあいつへ簡単な手紙を書き、俺はタカに連絡をしてその手紙を預けた。
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