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side 野々村美咲
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(今日も駄目か…)
私はパソコンの前で小さな溜め息を吐いた。
あれ以来、私のあの能力は少しも回復することはなかった。
青木さんのブログは考えながらなんとか書いてはいるものの、美幸さんの小説は全く書けない。
それに、こっちは私が考えて書いたのでは意味がない。
あくまでも感じるものを書かないと、それはただの私の小説になってしまうから。
時間を変え、気分を変えて日に何度もパソコンに向かってみるのだけど、どうやってもやっぱり全く駄目だった。
青木さんも仕事が忙しいのか、最近はメールもまるで届かない。
そろそろ画像のストックも少なくなって来たし、連絡しようと思うものの、どうも気が乗らない。
(私、一体、どうなっちゃったんだろ…)
私はパソコンの前から離れ、居間に戻ってテレビを付けた。
お茶を飲みながら、見るとはなしにつけていたテレビから流れてきたその内容に、私は思わず息を飲んだ。
それは、青木さんとあの人との熱愛についての話題だった。
見慣れた顔のリポーターが、写真雑誌の画像の前で話している。
その画像は、あの人と青木さんの熱烈な路チューのシーン。
私は自分の心臓が飛び出しそうな速度で脈を打ち、身体が震えるのを感じていた。
あの人はやはりモデルでけっこう人気のある人らしい。
私はあまり芸能人には詳しくないから知らなかったけど、もうじきドラマにも出演することになってるということだった。
今回の熱愛が発覚したのはあの人のブログからだそうで、激写されてしまったから雑誌が発売される前に…と、自分から告白する形で書かれていた。
リポーターの後ろの画像が、路チューの画像からそのブログの画面に変わった。
なんでも、あれが激写されたのは青木さんからプロポーズをされた晩だったそうで、ブログには青木さんが贈ったエンゲージリングをはめた彼女の綺麗な手の画像が掲載されていた。
彼女は、青木さんとの出会いの事なども簡単に書いていて、ブログの最後には「今、とても幸せです。」と綴っていた。
青木さんの経歴などもいろいろと紹介され、それと同時に青木さんの会社の外観が映し出され、慌しく走り去る車の映像が流れた。
窓からちらっと見えたのは、青木さんではなくアッシュさんの横顔のようだったけど、きっとあの車には青木さんも乗ってたんだと思う。
リポーターは近々正式な発表があるだろうとコメントして、お幸せに…と笑顔を浮かべ…
その笑顔とは裏腹に、私の顔はとても強張っていた。
テレビの話題はとっくに変わってるのに、私の頭の中は青木さんのことで一杯で、何も手に着かない気分だった。
(今日も駄目か…)
私はパソコンの前で小さな溜め息を吐いた。
あれ以来、私のあの能力は少しも回復することはなかった。
青木さんのブログは考えながらなんとか書いてはいるものの、美幸さんの小説は全く書けない。
それに、こっちは私が考えて書いたのでは意味がない。
あくまでも感じるものを書かないと、それはただの私の小説になってしまうから。
時間を変え、気分を変えて日に何度もパソコンに向かってみるのだけど、どうやってもやっぱり全く駄目だった。
青木さんも仕事が忙しいのか、最近はメールもまるで届かない。
そろそろ画像のストックも少なくなって来たし、連絡しようと思うものの、どうも気が乗らない。
(私、一体、どうなっちゃったんだろ…)
私はパソコンの前から離れ、居間に戻ってテレビを付けた。
お茶を飲みながら、見るとはなしにつけていたテレビから流れてきたその内容に、私は思わず息を飲んだ。
それは、青木さんとあの人との熱愛についての話題だった。
見慣れた顔のリポーターが、写真雑誌の画像の前で話している。
その画像は、あの人と青木さんの熱烈な路チューのシーン。
私は自分の心臓が飛び出しそうな速度で脈を打ち、身体が震えるのを感じていた。
あの人はやはりモデルでけっこう人気のある人らしい。
私はあまり芸能人には詳しくないから知らなかったけど、もうじきドラマにも出演することになってるということだった。
今回の熱愛が発覚したのはあの人のブログからだそうで、激写されてしまったから雑誌が発売される前に…と、自分から告白する形で書かれていた。
リポーターの後ろの画像が、路チューの画像からそのブログの画面に変わった。
なんでも、あれが激写されたのは青木さんからプロポーズをされた晩だったそうで、ブログには青木さんが贈ったエンゲージリングをはめた彼女の綺麗な手の画像が掲載されていた。
彼女は、青木さんとの出会いの事なども簡単に書いていて、ブログの最後には「今、とても幸せです。」と綴っていた。
青木さんの経歴などもいろいろと紹介され、それと同時に青木さんの会社の外観が映し出され、慌しく走り去る車の映像が流れた。
窓からちらっと見えたのは、青木さんではなくアッシュさんの横顔のようだったけど、きっとあの車には青木さんも乗ってたんだと思う。
リポーターは近々正式な発表があるだろうとコメントして、お幸せに…と笑顔を浮かべ…
その笑顔とは裏腹に、私の顔はとても強張っていた。
テレビの話題はとっくに変わってるのに、私の頭の中は青木さんのことで一杯で、何も手に着かない気分だった。
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