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side 慎太郎

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その山はいかにも怪しげっていうのか……
一応、道らしきものはあるにはあったけど、その周りには背の高い草が生い茂っていて、逃げ場がない。
こんな所でやさぐれヨウカイに出会ったら、ひとたまりもないって感じだ。
 先頭を行くのは美戎……
あいつは少し頭が足りてないから、この状況もまだよくわかってないのかもしれない。
そうじゃなきゃ、あんな風に平気でずんずん進んで行けるはずがない。
その後を俺と子供達が歩いて、一番後ろがゆかりさんだ。
 子供たちやゆかりさんはかなり緊張してるとみえて、強ばった顔をして何も話さない。



しばらく進んだ所で美戎が急に立ち止まり、俺の方に振り向いた。



 「慎太郎さん、どこか座れるような場所があったら、そこでお昼ご飯を食べようよ。
 僕、おなかがすいてきたよ。」

 「おまえなぁ…今、そんなこと言わなくて良いだろう?
 座れるような場所なんて、どこにもないじゃないか。」

 「だから…そういうところがあったら…だよ。」

 美戎はそう言うと、またすたすたと歩き始めた。



やっぱり、奴はこの状況をよく理解していない。
 運悪く、やさぐれヨウカイや有害種にでも出会ったら、生きて戻れないかもしれないのに、そんな時に昼ごはんのことを考えているんだから……



(あ~あ、あほは気楽で良いな……)



 山の様子はその後もなかなか変わらなかった。
 相変わらず、鬱蒼とした草の生い茂る道を登って行くだけ。
ただ、やさぐれ達に出会うこともなく進めたのは、ラッキーなことだと思えた。
このままずっと会わずに無事に進めたら、言うことなしなんだけど……




「あ!」




そんなことを考えている時に、急に美戎が立ち止まったから、僕は思わず身構えた。




 「ど、どうした?
なにかいたのか?」

 「ううん、ほら、慎太郎さん、あそこ…あそこならゆっくり出来そうだね。」

そう言いながら美戎が指差す先には、拓けた場所があった。
 鬱陶しい草があと少しで途切れ、その先は少し歩きやすい状態になっていた。
 言われてみればお腹も減っていたし、なによりも歩きにくい道を歩いたことと緊張していたせいで疲れていたから、その場所が見えたことで俺も少々ほっとした。
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