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side 慎太郎
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「やぁ、いらっしゃい。
君達が美戎の旅の仲間なんだね。
私はアジュの父・ミマカだ。
そして、こちらが妻のヨシュカ。」
食堂に入って来たのは、俺の両親より少し若い感じの男女で、特にミマカさんの方は愛想が良くて社交的な雰囲気の人だった。
「初めまして。
俺、山ノ内慎太郎です。
そして、こちらはゆかりさんです。」
「よろしくな、慎太郎君。
名前からすると君も美戎と同じ流れの人間なんだな。
ゆかりさん、君はあまりみかけないヨウカイだな……
あれ……」
「あなた……」
奥さんが不安そうな顔をして、ミマカさんの耳元で何かを小声で囁く。
それを聞きながら、ミマカさんの表情もだんだん険しいものに変わっていった。
「君……もしかして……かっぱなのか?」
躊躇いがちなミマカさんの言葉に、ゆかりさんは、何も言わず、ただ小さく頷いた。
その途端、二人は顔を見合わせ、そっと後ずさりする。
「あ…あの、あたい……」
「……お父さん、お母さん…何を怖がってるんです?」
「美戎……その、かっぱっていうのは…確か、人間の魂を……」
「あ、あたい……そんなことしません!」
ゆかりさんは、真剣な目をして首を振る。
「それは迷信かなにかですよ。
僕達は、ゆかりさんと一緒に旅をしています。
特に、慎太郎さんは今も一緒に住んでるんですよ。
本当にかっぱがそんなに危険なものなら、僕達はとっくに腑抜けにされてるはずですよ。」
優しく微笑みながらそう話す美戎に、夫妻の表情もなんとなくほぐれた。
「でも…その…言いにくいんだが……
かっぱは……病気を持ってるとか……」
「お父さん…だったら、僕も慎太郎さんももうとっくに移ってるはずでしょう?
それも勝手な迷信です。
皆さんご存知の通り、かっぱは希少種です。
しかも、そのほとんどは町中には出ず、山の中でひっそりと隠れ住んでいます。
ですから、かっぱのことはますます誤解されていったんでしょう。
僕達は、ゆかりさんと一緒に旅をして、かっぱが有害種でもなければ、病気も持ってないことを実感しています。」
「その通りです!
元々俺は、さむいもの餌食になりそうなところをゆかりさんに助けてもらったことで知り合ったんですから……命の恩人なわけですよ!
今だって、俺が働いてる間、こいつらの面倒をみてもらってますし、食事の準備もやってもらってますし…とにかくゆかりさんにはものすごく世話になってるんです!」
気が付けば俺は自分でも少し驚くほど熱く、そんなことを話していた。
君達が美戎の旅の仲間なんだね。
私はアジュの父・ミマカだ。
そして、こちらが妻のヨシュカ。」
食堂に入って来たのは、俺の両親より少し若い感じの男女で、特にミマカさんの方は愛想が良くて社交的な雰囲気の人だった。
「初めまして。
俺、山ノ内慎太郎です。
そして、こちらはゆかりさんです。」
「よろしくな、慎太郎君。
名前からすると君も美戎と同じ流れの人間なんだな。
ゆかりさん、君はあまりみかけないヨウカイだな……
あれ……」
「あなた……」
奥さんが不安そうな顔をして、ミマカさんの耳元で何かを小声で囁く。
それを聞きながら、ミマカさんの表情もだんだん険しいものに変わっていった。
「君……もしかして……かっぱなのか?」
躊躇いがちなミマカさんの言葉に、ゆかりさんは、何も言わず、ただ小さく頷いた。
その途端、二人は顔を見合わせ、そっと後ずさりする。
「あ…あの、あたい……」
「……お父さん、お母さん…何を怖がってるんです?」
「美戎……その、かっぱっていうのは…確か、人間の魂を……」
「あ、あたい……そんなことしません!」
ゆかりさんは、真剣な目をして首を振る。
「それは迷信かなにかですよ。
僕達は、ゆかりさんと一緒に旅をしています。
特に、慎太郎さんは今も一緒に住んでるんですよ。
本当にかっぱがそんなに危険なものなら、僕達はとっくに腑抜けにされてるはずですよ。」
優しく微笑みながらそう話す美戎に、夫妻の表情もなんとなくほぐれた。
「でも…その…言いにくいんだが……
かっぱは……病気を持ってるとか……」
「お父さん…だったら、僕も慎太郎さんももうとっくに移ってるはずでしょう?
それも勝手な迷信です。
皆さんご存知の通り、かっぱは希少種です。
しかも、そのほとんどは町中には出ず、山の中でひっそりと隠れ住んでいます。
ですから、かっぱのことはますます誤解されていったんでしょう。
僕達は、ゆかりさんと一緒に旅をして、かっぱが有害種でもなければ、病気も持ってないことを実感しています。」
「その通りです!
元々俺は、さむいもの餌食になりそうなところをゆかりさんに助けてもらったことで知り合ったんですから……命の恩人なわけですよ!
今だって、俺が働いてる間、こいつらの面倒をみてもらってますし、食事の準備もやってもらってますし…とにかくゆかりさんにはものすごく世話になってるんです!」
気が付けば俺は自分でも少し驚くほど熱く、そんなことを話していた。
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