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イミテーション・ハネムーン

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 「おいしいね!」

 「本当においしいわ。」

 私達は、列車の中で景色を見ながら駅弁を食べた。
 旅行のお金は当然前払いだ。
お弁当やお茶の代金は、夫である圭吾さんが払ってくれたけど、それもきっと料金に含まれてるんだと思う。
なんたって税込み55万円だもの。
でも、周りの人はそんなことを知る由もない。
きっと、傍目には仲の良い夫婦のように見えているのだろう…
それはもちろんいやなことではない。
 私は結婚もしないままにこの世とおさらばするけれど、幸せの真似事が出来ただけまだ良かったと思う。
 偽りの記憶であっても、最後に楽しい想いが出来るのはきっと幸せなことだから…



「紗季、今度売り子さんが来たらアイス食べない?」

 「いいわね。」

 初対面の人と旅行をしてること自体不思議だけど、その相手とこんなに自然に接していることもまた不思議だ。
 私は、どちらかというと人見知りする方なのに…
やはり、最後だと思ったら、普段の自分とは少し違った自分にもなれるのかもしれない。
それに、圭吾さんの演技がうまいせいもあるのかも…
本当に自然で、まるで昔から知ってる人みたいな気分になってしまう。
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