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恋
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『……おまえにしてはかっこ良過ぎだな。』
エレスは、ジュリアンの肩を優しく叩く。
「良いじゃねぇか!ちょっとくらいかっこ付けたって!」
ジュリアンは投げやりな様子でそう言うと、上着の袖で頬の涙と鼻水を拭った。
エレスはその様子に眉をひそめ、思わず出かかった小言をどうにか飲み込んだ。
『……そうだな。
今日は、かっこ良いおまえでいさせてやっても良いだろう。
……そういえば、あの石…おまえ、気に入ってたんじゃないのか?』
「……まぁな。
ロナウドから聞いて最後の石掘りのつもりで掘りにいった石がセレスタイトだった。
……それを見た時、俺、実は、やっぱりイヴは俺の運命の相手だったんだって思ったんだ。
イヴとの結婚を、セレスタイトが祝福してくれたんだって。
でも、違った…
イヴの運命の相手はミリアムだったんだな…」
ジュリアンはそう言うと、派手な音を立てて鼻水をすする。
『……そうだったのか。
本当にきっぱりと石掘りをやめるつもりだったのか。
道理でいつもにも増して真剣に掘っていたのだな。』
「やっぱり見てたんだな。
なんで、しばらく姿を現さなかった!」
『それは…私がしゃしゃり出るよりはおまえに全て考えさせた方が良いと思ったからだ。
私がいたら、おまえは私に頼るだろう。
……それと、おまえ達を二人っきりにしてやりたかった…』
「石っころがつまんねぇ気を遣うんじゃねぇ!」
エレスは、ジュリアンの悪態に苦い笑いを浮かべる。
『しかし、あれをミリアムに渡さずにおまえが持っていれば、もしかしたら今度こそ本当の運命の相手に出会えたのではないか?
ミリアム達は、セレスタイトがなくとも幸せな結婚をしただろうからな。』
「そ、そうなのか?
ば、馬鹿野郎、それならそうとその時に言えよ!」
『なぜだ?
あちこちの町におまえを待ってる女がいるのだろう?
だったらそんなもの必要ないではないか…
なんせ、おまえはモテるのだからな。』
「て…てめぇ…!
畜生!
俺が全然モテないことを知ってるくせに!」
風を切って差し出されたジュリアンの拳を、エレスは優雅な動きで軽々と交わす。
『モテたいのなら、上着の袖で鼻水を拭うような見苦しい真似はやめるべきだな。』
「う、うるせぇ!細かいことばっかり言いやがって!」
拳を振り上げたジュリアンにエレスは、その場から走り出した。
その後をジュリアンが追いかける。
追いかけるうちに、ジュリアンの顔には無邪気な笑みが浮かんでいた。
二人の子供のような追いかけっこは、ジュリアンが疲れて倒れるまで続いた。
エレスは、ジュリアンの肩を優しく叩く。
「良いじゃねぇか!ちょっとくらいかっこ付けたって!」
ジュリアンは投げやりな様子でそう言うと、上着の袖で頬の涙と鼻水を拭った。
エレスはその様子に眉をひそめ、思わず出かかった小言をどうにか飲み込んだ。
『……そうだな。
今日は、かっこ良いおまえでいさせてやっても良いだろう。
……そういえば、あの石…おまえ、気に入ってたんじゃないのか?』
「……まぁな。
ロナウドから聞いて最後の石掘りのつもりで掘りにいった石がセレスタイトだった。
……それを見た時、俺、実は、やっぱりイヴは俺の運命の相手だったんだって思ったんだ。
イヴとの結婚を、セレスタイトが祝福してくれたんだって。
でも、違った…
イヴの運命の相手はミリアムだったんだな…」
ジュリアンはそう言うと、派手な音を立てて鼻水をすする。
『……そうだったのか。
本当にきっぱりと石掘りをやめるつもりだったのか。
道理でいつもにも増して真剣に掘っていたのだな。』
「やっぱり見てたんだな。
なんで、しばらく姿を現さなかった!」
『それは…私がしゃしゃり出るよりはおまえに全て考えさせた方が良いと思ったからだ。
私がいたら、おまえは私に頼るだろう。
……それと、おまえ達を二人っきりにしてやりたかった…』
「石っころがつまんねぇ気を遣うんじゃねぇ!」
エレスは、ジュリアンの悪態に苦い笑いを浮かべる。
『しかし、あれをミリアムに渡さずにおまえが持っていれば、もしかしたら今度こそ本当の運命の相手に出会えたのではないか?
ミリアム達は、セレスタイトがなくとも幸せな結婚をしただろうからな。』
「そ、そうなのか?
ば、馬鹿野郎、それならそうとその時に言えよ!」
『なぜだ?
あちこちの町におまえを待ってる女がいるのだろう?
だったらそんなもの必要ないではないか…
なんせ、おまえはモテるのだからな。』
「て…てめぇ…!
畜生!
俺が全然モテないことを知ってるくせに!」
風を切って差し出されたジュリアンの拳を、エレスは優雅な動きで軽々と交わす。
『モテたいのなら、上着の袖で鼻水を拭うような見苦しい真似はやめるべきだな。』
「う、うるせぇ!細かいことばっかり言いやがって!」
拳を振り上げたジュリアンにエレスは、その場から走り出した。
その後をジュリアンが追いかける。
追いかけるうちに、ジュリアンの顔には無邪気な笑みが浮かんでいた。
二人の子供のような追いかけっこは、ジュリアンが疲れて倒れるまで続いた。
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