天使からの贈り物・恋

ルカ(聖夜月ルカ)

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「本当にすまなかった…」

そう言って不意にイヴの手を取った男に、イヴは短い叫び声を上げ、男は、逆にそのことに驚いて顔を上げる。



「どうかしたのか?」

男はまだイヴの目のことに気づいていないようで、不思議そうにイヴの顔をみつめる。



「いや…なんでもない。
それより、どういうことなのか話してくれ。
なんで、あんたがイヴに謝るんだ?」

イヴの代わりにジュリアンが口を挟んだ。




「あ…あぁ…それは…
あんたの父親はトーマスだよな?」

「え、ええ…そうですが…」

「トーマスは、突然、姿を消したんじゃねぇか?」

その質問にイヴは答えず、ただ黙って俯いた。



「それがどうかしたのか!?
あんた、イヴの父親の知り合いなのか?」

「知りあいってわけじゃねぇんだが…もう確か五~六年程前のことだと思う。
トーマスがこの町にやって来たんだ。」

「父さんがここへ!?」

イヴは驚き、男の方へ顔を上げた。



「あぁ…なんでも、かみさんが病気で金がいるから、仕事を探しに来たとか言ってたよ。
港の荷運びの仕事は確かにちょっと金は良いが、かなりきつい仕事だぞって…そんなことを話してると、トーマスは娘の写真を俺に見せたんだ。
文句一つ言わず、母親の面倒をみてくれる天使みたいな娘達だって、とても嬉しそうにな。
あんたの妹のメグって名前がうちの娘と同じだったんでよく覚えてたんだ。
それから、俺は現場にあいつを連れて行った。
続かなかったら困るから、普段運んでるのがどの程度の重さの荷物なのか担がせてみたり、どんな仕事なのかを教えてやってたんだ。
その日はちょいと急ぎの荷があって、いつもより現場は混んでた。
それがあいつの不幸だったんだな…」

そう呟いた男の顔に暗い影が差した。



「不幸って…何があったんだ!?」

「……ごった返してる現場で、あいつは運んでる荷物にぶつかって海に落ちた。」

「落ちたって…まさか、そのまま溺れたんじゃないだろう?
そこには人がたくさんいたんだよな?」

「あぁ……
トーマスが落ちたのを見て、そこらの奴らは笑った。
……皆、ふざけてると思ったんだ。
見た奴の話によると、あいつは一瞬驚いたような顔をして、そのまま静かに沈んでいったらしいんだ。
もがく様子もなかったらしい。
だいたい、ここらで働いてる奴の中には泳げない奴なんていねぇ。
こんな所で溺れることなんてありえないんだ。
……だが、あいつはなかなか浮かんで来なかった。
不安になって、何人かが潜った時には……あいつは……」

最後までは語られなかったその言葉から、イヴは父親の運命を知り、両手で口許を押さえて俯いた。

 
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