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(……ここは…?)

ジュリアンは、きょろきょろとあたりを見渡す。
それは、先程と同じ甲板の上だったが、空に上がっているのは月ではなく太陽で、船にも動きはなかった。



(戻ってる!
そうだ、これはあの日だ!
出航前に戻ったんだ!)

時の逆行は、今度もほぼジュリアンの思い通りに叶えられた。
成功を喜んだのも束の間、ジュリアンはイヴが甲板にいないことに気付き、慌ててイヴを探し始めた。



「イヴーー!」

ジュリアンは大きな声をあげ、イヴの名を呼びながら甲板を駆けまわる。



「ジュリアンさーん!ここですー!」

返事はすぐに返って来た。
声の方へ行ってみると、階段の途中に、見知らぬ老夫婦に付き添われるイヴがいた。



「イヴ!」

「ジュリアンさん!良かった…みつかって…」

「ごめんな、イヴ。
あぁ、どうもありがとう。
世話かけてすまなかったな。
これからは俺がちゃんと付き添うからもう大丈夫だ。」

老夫婦に礼を述べ、ジュリアンは代わりにイヴの手を取った。



「イヴ、こっちだ。」

「え…?でも、甲板に出てみようって…」

「うん…それが、ちょっと忘れ物をしてな…」

ジュリアンは、戸惑うイヴの手を引きながら乗降口へ引き返す。




「イヴ!!
その船に乗ってるのか?」



不意に聞こえたその声に、イヴの足はぴたりと動きを止めた。



「イーヴ!
いないのか!?
僕だ!ミリアムだ!」



「イヴ、どうしたんだ?」

「……ジュリアンさん、私、ここで待ってます。」

「……だめだ。
さぁ、行くぜ!」

「いやです。
離して!」

ジュリアンは、もうすぐ出航だからという係員の制止も無視し、いやがるイヴの手を強引に引っ張って桟橋へ戻った。

 
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