天使からの贈り物・恋

ルカ(聖夜月ルカ)

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幸いなことに二人共特に船酔いをすることもなく、初めての船旅はそういう意味では快適なものになった。



「やっぱり無理しても個室の方が良かったかな?
あんた、こういうのは苦手だろ?」

「いいえ、そんなことありません。
皆さん、とても親切にして下さるんですよ。」

イヴの目のことに気付いた人々が、話しかけたりなにくれとなく世話を焼く。
それは善意からの行為なのだろうが、中には明らかに興味本意の者や無神経な態度をとる者もいた。
そんな者にもイヴは冷静に対応していたが、そのことがジュリアンの気に障り、ちょっとした揉め事に繋がることもあった。
二人はお互いに妙な気を遣い合い、そのせいで二人の間にはどこかぎこちない空気が流れていた。
それ以前に、ジュリアンはミリアムのことが気になっていた。
なぜ今頃になってミリアムがイヴを探しに来たのか…そのことがどうしても頭から離れなかった。
だが、そんなことは考えない方が二人のためには良いのだという想いもあった。
どんな夫婦も様々な障害を乗り越えて絆を結んでいく。
自分たちにはその障害が早目に来ただけなのだと、ジュリアンは強く自分に言い聞かせた。







(あれっ……!?)

三日目の深夜、ジュリアンがふと目を覚ますと、傍にいるはずのイヴの姿がなかった。
何事か予期せぬ出来事が起きたのかと、ジュリアンは不安に心を揺るがし、イヴの姿を探して歩いた。



(あ……)

月明かりに照らされた甲板の片隅に、ジュリアンはうずくまる女性の姿を発見した。



近付き、声をかけようとしたジュリアンの耳に、イヴのすすり泣きの声が届いた。
その声は絶望を感じさせる程に悲しげで、ジュリアンはその場に立ちつくす。
やはり、故郷を離れるのが寂しかったのか、乗客のことで傷付いているのか、ジュリアンはイヴの涙の理由の想いを馳せる。
とにかくどうにかしてイヴを慰めよう…そう考え、ジュリアンが足を踏み出したその時…



「ミリアム……」

イヴの口から、涙の原因がささやかに零れ落ちた。



(イヴ…やっぱり、あんたは今でもあいつのことを……!)


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