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恋
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「ご…ごめんなさい…私ったら…
私…本当はさっきのことがちょっとショックで…それで、苛々して…」
そう言って俯いたイヴの肩に、ジュリアンが優しく手を置いた。
「俺の方こそしつこく聞いてすまなかったな。
よくわかった。もう二度と聞かねぇ。
……さぁ、行こう。」
イヴは、いつものようにジュリアンの腕を掴み、二人はゆっくりと歩き出した。
*
「けっこう高いもんだなぁ…
実は、俺もこんなに大きな船に乗るのは初めてなんだ。」
ジュリアンは甲板から下を見下ろし、感嘆の言葉を漏らした。
「そうでしょうね。
あれだけ階段を上ったんだから、ここはきっと見晴らしが良い場所なんでしょうね。」
「見送りの人がたくさん来てるぜ。」
「あ、ジュリアンさん!
そういえば、エレスさんは?
もしかしたら見送りに来られてるんじゃありませんか?」
「……いや、いない。
あいつは、人見知りが酷いからこんな所には来ないさ…」
「そんなことありません。
ジュリアンさんとエレスさんはあんなに仲良しだったんですもの。
そうだわ、どこか隅っこの方で隠れてらっしゃるかもしれないわ。
ジュリアンさん、探してみて下さい!」
強い口調でそうすすめるイヴに、仕方なくジュリアンは探すふりをしたが、そこにエレスがいないことはわかりきったことだった。
「……やっぱりいないようだな。
あいつは本当にこういう所は……」
その話を遮るように、一人の若い男が何かを叫びながら、見送りの人々をかきわけ走り込んで来るのがジュリアンの目に映った。
「イヴ!!
その船に乗ってるのか?」
男性の声に、イヴの背中がびくんと波打った。
「…ミリアム……」
イヴの唇が小さく動く。
「イーヴ!
いないのか!?
僕だ!ミリアムだ!」
「イヴ、ミリアムって…あいつ、もしかして…」
「ジュリアンさん、あっちへ行きましょう。」
「で、でも…」
「良いから早く…!」
ミリアムの声からにげるように、イヴは力任せにジュリアンの腕をひっぱっていく。
「わかったよ。
じゃあ、客室の方へ行こう。
さ、こっちだ。」
ジュリアンはイヴを連れ、客室への階段を下り始めた。
私…本当はさっきのことがちょっとショックで…それで、苛々して…」
そう言って俯いたイヴの肩に、ジュリアンが優しく手を置いた。
「俺の方こそしつこく聞いてすまなかったな。
よくわかった。もう二度と聞かねぇ。
……さぁ、行こう。」
イヴは、いつものようにジュリアンの腕を掴み、二人はゆっくりと歩き出した。
*
「けっこう高いもんだなぁ…
実は、俺もこんなに大きな船に乗るのは初めてなんだ。」
ジュリアンは甲板から下を見下ろし、感嘆の言葉を漏らした。
「そうでしょうね。
あれだけ階段を上ったんだから、ここはきっと見晴らしが良い場所なんでしょうね。」
「見送りの人がたくさん来てるぜ。」
「あ、ジュリアンさん!
そういえば、エレスさんは?
もしかしたら見送りに来られてるんじゃありませんか?」
「……いや、いない。
あいつは、人見知りが酷いからこんな所には来ないさ…」
「そんなことありません。
ジュリアンさんとエレスさんはあんなに仲良しだったんですもの。
そうだわ、どこか隅っこの方で隠れてらっしゃるかもしれないわ。
ジュリアンさん、探してみて下さい!」
強い口調でそうすすめるイヴに、仕方なくジュリアンは探すふりをしたが、そこにエレスがいないことはわかりきったことだった。
「……やっぱりいないようだな。
あいつは本当にこういう所は……」
その話を遮るように、一人の若い男が何かを叫びながら、見送りの人々をかきわけ走り込んで来るのがジュリアンの目に映った。
「イヴ!!
その船に乗ってるのか?」
男性の声に、イヴの背中がびくんと波打った。
「…ミリアム……」
イヴの唇が小さく動く。
「イーヴ!
いないのか!?
僕だ!ミリアムだ!」
「イヴ、ミリアムって…あいつ、もしかして…」
「ジュリアンさん、あっちへ行きましょう。」
「で、でも…」
「良いから早く…!」
ミリアムの声からにげるように、イヴは力任せにジュリアンの腕をひっぱっていく。
「わかったよ。
じゃあ、客室の方へ行こう。
さ、こっちだ。」
ジュリアンはイヴを連れ、客室への階段を下り始めた。
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