天使からの贈り物・恋

ルカ(聖夜月ルカ)

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「良い天気になって良かったな。」

「ええ…」

次の日は、二人の船出を祝うかのような澄み渡る晴天だった。



「船酔いの薬も買っといたし、何も心配いらないからな。
なぁに、一週間なんてあっという間に過ぎちまうさ。
個室は高いから取れなかったが、勘弁してくれよ。」

「そんなこと、構いません。
……潮の香りがしますね。
ついに……私、ここまで来たんですね。」

ジュリアンは、その言葉に様々なイヴの想いを感じた。
そのまんま、この町まで来たということでもあり、人生の新しい出発を向かえようとしているということでもあり、それを諦めているようにも寂しがっているようにも感じられた。



「イヴ…もしも、気が変わったのなら…」

「ジュリアンさん、私の気持ちには迷いはありません。
……もう決めたんです。
さぁ、船の近くに連れて行って下さい。」

「イヴ……」

好きな相手と新しい旅立ちをするにしては、とても相応しいとは思えないせつない笑顔を浮かべるイヴに、ジュリアンは困惑する。
いくら見知らぬ土地へ行くにしても、本来ならもっと嬉しそうな顔をするのではないか…そう考えると、ジュリアンの胸には大きな不安が渦巻いた。




「……あれ…?
あんた……」

港の傍で中年の男が、イヴを見て立ち止まり、イヴはジュリアンの背中に隠れるように身を潜める。



「なんだ?何かあんのか?」

「いや……なんでもない。
すまなかったな。」

男はすぐに去って行ったが、イヴはそのままジュリアンの後ろに立っていた。



「ジュリアンさん…私、やっぱり、黒眼鏡をかけます。
私の目は開いていてもなにも映していない…
それは、他人から見たらどこか薄気味が悪いのでしょうね。」

「ば、馬鹿!そんなことないぞ。
あんたの目は綺麗だし、気味悪いことなんて少しもない。
今の奴はきっとあんたが可愛いから見惚れてたんだ。」

「……ジュリアンさん、ありがとう。
でも、私、こんなこと、なんともありませんから。
……心配しないで。」

イヴは、袋から黒眼鏡を取り出しそれをかけた。



「さ、行きましょう、ジュリアンさん。
もうそろそろ出航の時間でしょう?」

「それはそうだが…イヴ…本当に良いのか?
船に乗っちまったら、しばらくは引き返せねぇんだぞ。」

「……良いって言ってるじゃない!」

急に声を荒げたイヴに、ジュリアンは驚いて言葉を失った。
二人の間に、気まずい沈黙が流れる。
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