28 / 45
恋
28
しおりを挟む
*
「行き先は、本当に俺が決めて良いんだな?」
「ええ。私はここから離れられればどこだって良いんです。」
「……そうか。
じゃ…そうだ、町に着いて一番先に出航する船にしないか?
行き先がどんな場所なのか知らないで行くのも面白いんじゃないか?」
「……そうですね。
じゃあ、そうしましょう。
どんな所に行くことになるのか、今からとても楽しみです。
……ところで、ジュリアンさん、今日はどこへ行かれてたんですか?」
「うん…ちょっとな。」
ジュリアンは適当に言葉を濁し、どこへ行ってたかを明かすことはなかったが、その口調から、きっと何らかの楽しいことがあったのだろうとイヴは推測した。
二人は次の日、夕刻過ぎに港のある町に着いたが、その日はもう出航する船はなく、一番早い船は次の日の昼近くに出る船だとわかった。
行き先は、ジュリアンもまだ行ったことのない東の大陸だった。
東の大陸には船でしか行く事が出来ないため、ジュリアンもそこにどのような町があるのかも知らず、温暖で暮らしやすい所だという評判を聞いたことがあるくらいだった。
しかし、三月に一度しか来ない船にたまたま出会えたことは、ジュリアンにはまるで運命のようにも感じられた。
イヴは、行き先が決まってもさしてその場所に興味を示さず、そのことがジュリアンの不安をかきたてる。
(どこでも良いったって、これから住む場所なんだから、気にならないはずがねぇ…
それなのにイヴは……
いや、きっとイヴも不安なんだ。
なんたって全く知らない場所に行くんだからな…聞けばその不安がますます大きくなるような気がして、それで詳しく聞こうとしないのかもしれないな。
……うん、きっとそうだ。)
部屋の窓から夜空を見上げながら、ジュリアンは自分に言い聞かせるように心の中で呟いた。
しかし、それでもやはり不安は拭い去れず、ジュリアンは救いを求めるように何度も呼びかけたが、とうとうエレスが現れることはなかった。
(エレスの奴…もう出て来ねぇつもりなのか?
一体、なんで…?
まさか、なにかあったわけじゃないよな?
石には何の異変もないもんな…
畜生!心配かけやがって…!)
エレスが姿を消した理由もわからず悶々とした気持ちを抱えたまま、ジュリアンは眠れない夜を過ごした。
「行き先は、本当に俺が決めて良いんだな?」
「ええ。私はここから離れられればどこだって良いんです。」
「……そうか。
じゃ…そうだ、町に着いて一番先に出航する船にしないか?
行き先がどんな場所なのか知らないで行くのも面白いんじゃないか?」
「……そうですね。
じゃあ、そうしましょう。
どんな所に行くことになるのか、今からとても楽しみです。
……ところで、ジュリアンさん、今日はどこへ行かれてたんですか?」
「うん…ちょっとな。」
ジュリアンは適当に言葉を濁し、どこへ行ってたかを明かすことはなかったが、その口調から、きっと何らかの楽しいことがあったのだろうとイヴは推測した。
二人は次の日、夕刻過ぎに港のある町に着いたが、その日はもう出航する船はなく、一番早い船は次の日の昼近くに出る船だとわかった。
行き先は、ジュリアンもまだ行ったことのない東の大陸だった。
東の大陸には船でしか行く事が出来ないため、ジュリアンもそこにどのような町があるのかも知らず、温暖で暮らしやすい所だという評判を聞いたことがあるくらいだった。
しかし、三月に一度しか来ない船にたまたま出会えたことは、ジュリアンにはまるで運命のようにも感じられた。
イヴは、行き先が決まってもさしてその場所に興味を示さず、そのことがジュリアンの不安をかきたてる。
(どこでも良いったって、これから住む場所なんだから、気にならないはずがねぇ…
それなのにイヴは……
いや、きっとイヴも不安なんだ。
なんたって全く知らない場所に行くんだからな…聞けばその不安がますます大きくなるような気がして、それで詳しく聞こうとしないのかもしれないな。
……うん、きっとそうだ。)
部屋の窓から夜空を見上げながら、ジュリアンは自分に言い聞かせるように心の中で呟いた。
しかし、それでもやはり不安は拭い去れず、ジュリアンは救いを求めるように何度も呼びかけたが、とうとうエレスが現れることはなかった。
(エレスの奴…もう出て来ねぇつもりなのか?
一体、なんで…?
まさか、なにかあったわけじゃないよな?
石には何の異変もないもんな…
畜生!心配かけやがって…!)
エレスが姿を消した理由もわからず悶々とした気持ちを抱えたまま、ジュリアンは眠れない夜を過ごした。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説

天使からの贈り物・誤算
ルカ(聖夜月ルカ)
ファンタジー
ジュリアンとエレスの旅物語・第4弾です。
ある町で、ジュリアンはネイサンとポールという二人の炭鉱夫と仲良くなった。
その出会いは、ジュリアンに深い心の傷を与えることに…

天使からの贈り物・夢
ルカ(聖夜月ルカ)
ファンタジー
たまたま入ったレストランには、とても気持ちの良い絵が飾られていた。
ジュリアンは、その絵を描いた画家志望の青年・アルドーとその恋人・ライラと関わることに…
ジュリアンとエレスの旅物語・第3弾!

天使からの贈り物・決意
ルカ(聖夜月ルカ)
ファンタジー
単細胞の石好き男・ジュリアンと、石の精霊・エレスの不思議な旅物語・第5弾!
旅の途中でジュリアンが知り合ったのは、ラリーとスージーという仲の良い兄妹だった。
もうじき結婚することが決まっていたスージーの身に、とんでもないことが起きて…
天使の探しもの
ルカ(聖夜月ルカ)
ファンタジー
創造主との賭けにより、身体を二つに分けられ、一切の能力をも奪われて地上に落とされた天使・ブルーとノワールは、遠く離れた場所にいた。
しかし、天界に戻るためには、二人が出会わなければならない。
二人は数々の苦難を乗り越え、そして……
※表紙画は詩乃様に描いていただきました。

妖精からの贈り物
ルカ(聖夜月ルカ)
ファンタジー
ジュリアンが苦労をしてついにみつけたお宝は、ただの黒い玉だった。
無類の石好き男・ジュリアンと、石の精霊・エレスのいつもの旅物語。
「天使からの贈り物」の番外編です。


婚約破棄?一体何のお話ですか?
リヴァルナ
ファンタジー
なんだかざまぁ(?)系が書きたかったので書いてみました。
エルバルド学園卒業記念パーティー。
それも終わりに近付いた頃、ある事件が起こる…
※エブリスタさんでも投稿しています

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる