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恋
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「ジュリアンさん、エレスさんはあれからどうなさったんですか?」
「……あいつは、神出鬼没だからな。
きっと、港のある町で待ってんじゃないかな。
ほら、最近は、送別会だのなんだのって人が集まることが多かっただろ?
あいつは極度の人見知りだから、人が多いのは苦手らしいんだ。
うん、きっと先回りしていやがるに違いねぇ!」
口ではそんなこと言いながらも、ジュリアンは心の中ではエレスのことを心配していた。
イヴが宿を訪ねて来た日以来、エレスは一度も姿を現していない。
この数日間は忙しかったり、ジュリアンの周りに人が多かったということはあるにはあるが、夜になりジュリアンが一人の時間にも、エレスはどれほど呼びかけても絶対に現れなかった。
こんなことは今まで一度もなかっただけに、ジュリアンは、内心、不安な気持ちを抱えていた。
イヴは余程早くこの土地から離れたかったのか、驚く程の頑張りを見せ、普段のジュリアンと同じくらいの速度で歩き続けたため、良そうよりも早く次の町に着く事が出来た。
その後もイヴは少しも音を上げることなく、彼女には少しきついと思われる程の道程を日々こなしていった。
エレスはその間にも一度も姿を現す事はなく、楽しい筈のイヴと二人旅も、ジュリアンはそのことが気がかりで心から楽しむ事は出来なかった。
「あと少しで港に着くんですね。」
「そうだな、あんたが頑張ってくれたから思ったよりも早く着けそうだな。
無理したんじゃないか?
体調は大丈夫か?」
「ええ、全然平気です。
ただ、普段こんなに歩く事がないからなのか、このところ食事がおいしくってちょっと食べ過ぎみたいで…」
「そうだな。今までよりずっとよく食べるようになったな。
でも、これだけ動いてたら当然のことだ。
なぁに、心配しなくても太ったりしないさ。
それに、顔色もとても良くなってる。」
「そうですか…?」
イヴは少し照れたように、微笑んだ。
港から程近い町の宿屋で、二人は差し向かい和やかに夕食を採る。
二人っきりの旅を続けるうちに、二人の距離はほんの少し縮まったようにも感じられた。
「イヴ…明日、俺に時間をくれないか?
ちょっと行きたい場所があるんだ。
……やっぱり、一人で宿にいるのは不安か?」
「いやだわ、ジュリアンさん。
私、そんなことくらいなんともありません。」
「そうか、悪いな。
なるべく早く帰って来るからな。
……腹も膨れたことだし、じゃ、そろそろ寝るか。
あんたも疲れただろ?」
「あ…あの…ジュリアンさん。」
イヴが赤い顔をして、すでに立ち上がったジュリアンにおずおずと声をかけた。
「……あいつは、神出鬼没だからな。
きっと、港のある町で待ってんじゃないかな。
ほら、最近は、送別会だのなんだのって人が集まることが多かっただろ?
あいつは極度の人見知りだから、人が多いのは苦手らしいんだ。
うん、きっと先回りしていやがるに違いねぇ!」
口ではそんなこと言いながらも、ジュリアンは心の中ではエレスのことを心配していた。
イヴが宿を訪ねて来た日以来、エレスは一度も姿を現していない。
この数日間は忙しかったり、ジュリアンの周りに人が多かったということはあるにはあるが、夜になりジュリアンが一人の時間にも、エレスはどれほど呼びかけても絶対に現れなかった。
こんなことは今まで一度もなかっただけに、ジュリアンは、内心、不安な気持ちを抱えていた。
イヴは余程早くこの土地から離れたかったのか、驚く程の頑張りを見せ、普段のジュリアンと同じくらいの速度で歩き続けたため、良そうよりも早く次の町に着く事が出来た。
その後もイヴは少しも音を上げることなく、彼女には少しきついと思われる程の道程を日々こなしていった。
エレスはその間にも一度も姿を現す事はなく、楽しい筈のイヴと二人旅も、ジュリアンはそのことが気がかりで心から楽しむ事は出来なかった。
「あと少しで港に着くんですね。」
「そうだな、あんたが頑張ってくれたから思ったよりも早く着けそうだな。
無理したんじゃないか?
体調は大丈夫か?」
「ええ、全然平気です。
ただ、普段こんなに歩く事がないからなのか、このところ食事がおいしくってちょっと食べ過ぎみたいで…」
「そうだな。今までよりずっとよく食べるようになったな。
でも、これだけ動いてたら当然のことだ。
なぁに、心配しなくても太ったりしないさ。
それに、顔色もとても良くなってる。」
「そうですか…?」
イヴは少し照れたように、微笑んだ。
港から程近い町の宿屋で、二人は差し向かい和やかに夕食を採る。
二人っきりの旅を続けるうちに、二人の距離はほんの少し縮まったようにも感じられた。
「イヴ…明日、俺に時間をくれないか?
ちょっと行きたい場所があるんだ。
……やっぱり、一人で宿にいるのは不安か?」
「いやだわ、ジュリアンさん。
私、そんなことくらいなんともありません。」
「そうか、悪いな。
なるべく早く帰って来るからな。
……腹も膨れたことだし、じゃ、そろそろ寝るか。
あんたも疲れただろ?」
「あ…あの…ジュリアンさん。」
イヴが赤い顔をして、すでに立ち上がったジュリアンにおずおずと声をかけた。
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