天使からの贈り物・恋

恋

１９

「何しやがるんだ！」

食ってかかるジュリアンを気に止めることもなく、エレスはジュリアンの向かいの席に優雅に腰を降ろした。



『ジュリアン…イヴは若い女性だぞ。
彼女のプライドも考えてやれ。』

「プライドだって？
そりゃ、一体どういうことだ！」

不機嫌なジュリアンは、真正面からエレスの瞳を睨み付ける。




『おまえが、さっきのはエレスが勝手に言ったことで、本当は君のことなどなんとも思っていないと言ったら、どうなると思う？
イヴは、やっぱりそうかと…どうせ、誰も自分のことなんて好きにならない…そう思うのではないか？
彼女は目のことで自分に引け目を感じている。
彼女のそんな気持ちをさらに傷付けることにはならないか？』

「そ…それは……
で、でも、俺なんかに好かれたって……」

ジュリアンの声は先程の勢いを失い、自信なさげにそっと俯く。



『そんなことはない。
誰かに愛されることは、ほとんどの場合、その人間の自信や幸せに繋がると思う。
……そりゃあ、嫌いな相手からならそうとは言えないだろうが、不思議なことにおまえは嫌われてはおらん。』

「そ、そ、そんなこと、なんでわかるんだ！？」

『そりゃあわかるさ。
まず、いやならこう毎日会ってはくれんぞ。』

「だ、だ、だけど…そ、それは、俺じゃなくておまえに会いたいからかもしれないじゃないか。」

『……なるほど、確かにそういうこともあるな…』

エレスは、そう言いながら、何度も頷く。
ジュリアンは、そんなエレスの様子をぽかんとした表情で見つめる。



『……なんて顔をしているのだ。
今のは冗談だ。
……考えてみろ。
彼女には私の存在が感じられても、他の者からは姿さえ見えんのだぞ。
いないのも同然の存在だ。
そんな私に彼女を幸せにしてやることは出来ん。
イヴはとてもカンの良い娘だ。
私が彼女には友人として以上の好意を抱いていないことは、すでに気付いている筈だ。』

「そんなこと、わかんねぇぞ！
若い娘は、自分に脈がないと思っても本気になることがある。」

『確かにそうだが…イヴは違う。
普通の娘よりも何倍も苦労したせいで、彼女にはわかるのだな…いろいろなことが…』

「いろんなこと……」

ジュリアンはその言葉の意味を噛み締めるように、繰り返した。