天使からの贈り物・恋

ルカ(聖夜月ルカ)

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それからというもの、ジュリアンとエレスは毎日イヴを連れ出した。
最初のうちこそ多少警戒していたイヴも、屈託のないジュリアンや常に冷静な次第に打ち解け、いつしか二人を信頼出来る友人として受け入れるようになった。
そんな毎日を過ごしているうちに、イヴの顔にも明るい笑顔が増えていた。



「よぉ、ジュリアン、久し振りだな!」

「あ、あんたは…ええっと…」

酒場で飲んでいたジュリアンに声をかけて来たのは、初めてイヴに出会った時にイヴを助けた中年の男だった。



「えっと…確か……」

「ロナウドだよ。
……ここ、座って良いか?」

名前を思い出せないでいるジュリアンに、ロナウドは再び名を名乗った。



「あぁ…一緒に飲もうぜ!」

「ありがとうよ。」

ロナウドは、ジュリアンの向かいに腰を降ろした。



「……それにしても、あんたもやるもんだなぁ…」

酒をちびりとなめるように飲みながら、ロナウドが呟く。



「やるって……何がだ?」

「なにがって…もうすっかり町の噂になってるぜ。
あんたが遊びのつもりなら、俺達も黙っちゃいない所だが、あんたはいつも夕方にはあの子を家に送ってくれる。
……あんた、良い人なんだな。
でも、それがただの同情なら…イヴは余計に辛い想いをするかもしれないぜ。」

「な、なんだ!?
遊びだのなんだのって…
俺が、イヴに何か下心があって近付いてるって思ってんのか!?」

「そりゃあ、あの子は目は見えないが、若い女の子だからな。
そう思われたって仕方がないぜ。
もちろん、本気で考えてくれてるのなら俺達もこんな嬉しいことはないんだが、さっきも言った通り、ただの同情なら困るんだ。
イヴがあんたのことを本気で好きになっちまったら…あんたの優しさを愛情だと勘違いしたら……それこそ、可哀想じゃないか…」

ロナウドは、ジュリアンと目を合わせることなく、まるで独り言のように呟いた。

 
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