天使からの贈り物・恋

ルカ(聖夜月ルカ)

文字の大きさ
上 下
7 / 45

しおりを挟む
『だが、確かに不思議といえば不思議だな』

「は?」

『あの子と私は全くの初対面だ。
何の関わりもない。
あの子は、おまえのように石に特別関心が高いということもなさそうだった。
それでも、私の存在に気がついた…』

「お…おぅっ、多分、その通りだ。」

エレスは、優雅な動きで長椅子に腰を沈め、何かを思い出すような表情で目を細めた。



『おまえ達人間の本能というものは時に奇蹟のようなことを引き起こす…』

「奇蹟…?」

『そうだ、身体のどこかの機能が劣ると、それを補うように他のどこかが特別鋭敏になったりするという話を聞いたことはないか?
……イヴもおそらくそういう状態になっているのではあるまいか。
普通ならもっと他の部分が鋭くなるのだろうが、彼女はなぜか…一般とは違う部分が研ぎ澄まされてしまったのだろう…』

「なるほど…それで……って、本当にそんなことがあるのか!?」

『……さぁ、どうだろうな…しかし、今はそうとしか考えられん。』

その言葉に、ジュリアンは思わず舌を打つ。



「あ~あ、あの子も可哀想にな。
何の因果でこんな変なのの存在がわかるようになったんだか…」

『変なの…?
それは、私のことなのか?』

ジュリアンは、エレスの問いには返事をせず、その代わりに大きなあくびをする。



「あぁ…急に眠くなっちまった。」

質問の返事を誤魔化すためにジュリアンは大袈裟にそう言うと、目を閉じ、エレスに背中を向けた。



『……おい、それで明日はどうするんだ?』

「明日?う~ん、石の掘れそうな山はもう少し先に行かなきゃなさそうだから、明日はこの町を発つつもりだ。」

エレスがそれに対して何も言わないことを不審に感じ、ジュリアンが振り向くと、エレスの姿はすでに消えていた。



(なんだ?別に興味もないくせに、聞くだけ聞いて…やっぱり、変な奴だな…)

ジュリアンは、再び大きなあくびをすると、そのまま深い眠りに落ちた…
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

天使からの贈り物・誤算

ルカ(聖夜月ルカ)
ファンタジー
ジュリアンとエレスの旅物語・第4弾です。 ある町で、ジュリアンはネイサンとポールという二人の炭鉱夫と仲良くなった。 その出会いは、ジュリアンに深い心の傷を与えることに…

天使からの贈り物・夢

ルカ(聖夜月ルカ)
ファンタジー
たまたま入ったレストランには、とても気持ちの良い絵が飾られていた。 ジュリアンは、その絵を描いた画家志望の青年・アルドーとその恋人・ライラと関わることに… ジュリアンとエレスの旅物語・第3弾!

天使からの贈り物・決意

ルカ(聖夜月ルカ)
ファンタジー
単細胞の石好き男・ジュリアンと、石の精霊・エレスの不思議な旅物語・第5弾! 旅の途中でジュリアンが知り合ったのは、ラリーとスージーという仲の良い兄妹だった。 もうじき結婚することが決まっていたスージーの身に、とんでもないことが起きて…

天使の探しもの

ルカ(聖夜月ルカ)
ファンタジー
創造主との賭けにより、身体を二つに分けられ、一切の能力をも奪われて地上に落とされた天使・ブルーとノワールは、遠く離れた場所にいた。 しかし、天界に戻るためには、二人が出会わなければならない。 二人は数々の苦難を乗り越え、そして…… ※表紙画は詩乃様に描いていただきました。

妖精からの贈り物

ルカ(聖夜月ルカ)
ファンタジー
ジュリアンが苦労をしてついにみつけたお宝は、ただの黒い玉だった。 無類の石好き男・ジュリアンと、石の精霊・エレスのいつもの旅物語。 「天使からの贈り物」の番外編です。

天使からの贈り物・偽り

ルカ(聖夜月ルカ)
ファンタジー
ジュリアンとエレスのおかしな旅が始まった。 今回、ジュリアンが知り合ったのは、お互いのことを想いながらも素直になれない恋人たちだった…

婚約破棄?一体何のお話ですか?

リヴァルナ
ファンタジー
なんだかざまぁ(?)系が書きたかったので書いてみました。 エルバルド学園卒業記念パーティー。 それも終わりに近付いた頃、ある事件が起こる… ※エブリスタさんでも投稿しています

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...