天使からの贈り物・恋

ルカ(聖夜月ルカ)

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「あ、あんた、まさか、エレスのことが…?」

「エレス…ですか?」

女性は意味がわからないといった風に小首を傾げる。



(おい、エレス、もう1回何か話してみろよ。)

(話すって何を話せば良いんだ?)

(だから…なんだって良いんだ!
あの人におまえの声が本当に聞こえてるかどうか確かめるだけなんだから!
さ、早くしろ!)

ジュリアンに急かされたエレスは、緊張を解きほぐすためか小さく咳払いをすると、口を開いた。



「あ~…この野菜はずいぶんと量が多いようですが、ご家族が多いのですか?」

「え…?あぁ…いえ、そうではないのです…
町の近くを少し散歩していたら、お知りあいの方が声をかけて下さって…
ちょうど教会へ野菜を差し入れにいこうと思ってたとおっしゃるので、私もその方と一緒に帰ろうとしていたのですが…
そこへ、誰かが走って来られて、その方の奥様がぎっくり腰になったということでその方は家に帰られたのです。
野菜は重いから…と気を遣って下さったのですが、このくらいなら私にも持てないほどではありません。
ただ、両手が塞がって杖が使えなかったので、それで荷車に気がつかなくて…」

女性は、俯いたまま言葉を選ぶようにゆっくりとそう話した。



(間違いねぇ!やっぱりおまえの声が聞こえてるようだな。
一体、どういうことだ?)

(その話は後だ。)



「ジュリアン、その人を家までおぶってあげたらどうなんだ?」

「え?いえ…そんなこと…
私は、大丈夫ですから…!」

女性は、エレスに素早く返事を返すと、二人を警戒するように後ずさる。



「心配すんなって!
あんたが心配するのもわからないわけじゃないが、俺達を信じてくれ。
こんな町の中だから大丈夫だって。
あ、誰か来たぞ。」

ジュリアンはたまたま通りがかった男性に声をかけた。



「……イヴじゃないか。
どうしたんだ?」

「ロナウドさんですか?」

イヴと呼ばれた女性はその男のことを知っていたらしく、声を聞いた途端に安心したような笑みを浮かべた。



「あぁ、そうだ。」

「この荷車にぶつかって転んだ時に、ちょっと足首をひねったらしいんだ。」

「そうだったのか、そいつはすまなかったな。
いつもはこんな所に荷車なんてないのに、誰かが置いてったんだな…
あ、後は俺が送って行くから大丈夫だ、ありがとうな。」

「だが、その人は足を痛めてる。
あんたも荷物が多いからおぶってやるのは無理だろう?
俺がこの人をおぶって行くから、あんたはこの野菜と杖を頼むよ。」

「あ…あぁ、そうだな。でも、良いのか?」

イヴは遠慮したが、結局は足の痛みに負け、ジュリアンの提案を受け入れる事になった。

 
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