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095 : 修道院
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「じゃあ、でかけようか!
あぁ~、ついに大聖堂が見られるんだな!」
リュックは、今にも大聖堂に向かって走り出してしまいそうだった。
「リュック、大聖堂は逃げないからゆっくり行きましょう!」
「そんなこと、わかってるさ!」
そうは言いながらもリュックの足取りはいつもより軽くて速い。
クロワは、クロードの方はあえて見ないように…いや、クロードの存在を感じていないかのように振舞っていた。
クロードもクロワのそんな態度に気が付いていないはずはないと思うのだが、まるで気に留めていないような素振りで歩いていた。
お坊ちゃま育ちだと思っていたが、意外と気骨のある男だと、私は彼のことを頼もしく感じていた。
「このあたりは、修道士が多いな。」
「近くに修道院があるみたいですよ。
大聖堂は、その修道院の管理下にあるようです。」
「なるほどな。それで…」
聖堂に近付くにつれ、黒い修道服の修道士や修道女の姿を頻繁にみかけるようになった。
ある種、異様な光景に心が少しざわめく。
*
大聖堂は隣町との中間地点だということだったが、思いの外遠かった。
夕方近くになった頃、どこからか鐘の音が聞こえて来た。
重厚な鐘の音が風に乗って響いて来る…
「あ、あれが修道院じゃないか?」
鐘の音…
修道院…
修道士の黒い服…
それらが入り混じり、私の頭の中を自由気ままに動きまわる…
それは私の心をかき乱し、脈が乱れ、汗が噴き出すのを感じる。
鐘の音…
修道院…
修道士の黒い服…
今度はそれらが私の頭の中を激しく殴りつける。
「あ……頭が………」
私は頭を抱え、がっくりとその場に膝を着いた。
「どうした、マルタン!!」
「マルタンさん、大丈夫ですか?!
マルタンさん!!」
なにかが…なにかが動き始めていた…
クロワの声が聞こえたのを最後に、私の意識はぷっつりと途切れてしまった…
あぁ~、ついに大聖堂が見られるんだな!」
リュックは、今にも大聖堂に向かって走り出してしまいそうだった。
「リュック、大聖堂は逃げないからゆっくり行きましょう!」
「そんなこと、わかってるさ!」
そうは言いながらもリュックの足取りはいつもより軽くて速い。
クロワは、クロードの方はあえて見ないように…いや、クロードの存在を感じていないかのように振舞っていた。
クロードもクロワのそんな態度に気が付いていないはずはないと思うのだが、まるで気に留めていないような素振りで歩いていた。
お坊ちゃま育ちだと思っていたが、意外と気骨のある男だと、私は彼のことを頼もしく感じていた。
「このあたりは、修道士が多いな。」
「近くに修道院があるみたいですよ。
大聖堂は、その修道院の管理下にあるようです。」
「なるほどな。それで…」
聖堂に近付くにつれ、黒い修道服の修道士や修道女の姿を頻繁にみかけるようになった。
ある種、異様な光景に心が少しざわめく。
*
大聖堂は隣町との中間地点だということだったが、思いの外遠かった。
夕方近くになった頃、どこからか鐘の音が聞こえて来た。
重厚な鐘の音が風に乗って響いて来る…
「あ、あれが修道院じゃないか?」
鐘の音…
修道院…
修道士の黒い服…
それらが入り混じり、私の頭の中を自由気ままに動きまわる…
それは私の心をかき乱し、脈が乱れ、汗が噴き出すのを感じる。
鐘の音…
修道院…
修道士の黒い服…
今度はそれらが私の頭の中を激しく殴りつける。
「あ……頭が………」
私は頭を抱え、がっくりとその場に膝を着いた。
「どうした、マルタン!!」
「マルタンさん、大丈夫ですか?!
マルタンさん!!」
なにかが…なにかが動き始めていた…
クロワの声が聞こえたのを最後に、私の意識はぷっつりと途切れてしまった…
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