574 / 641
094 : 名声と恋
12
しおりを挟む
*
「じゃあ、頼むな!」
「わかった!まかしとけ!」
リュックが、診療所に行く男に何事かを話していた。
「どうかしたのか?」
「あぁ、クロワさんに伝言を頼んだんだ。
今週末は、俺とマルタンはちょっと用が出来て町に行けないってな。」
「用事?そんなもの、何かあったか?」
「ないに決まってんだろ!
気をきかせてやってるんだよ。
クロワさんがあの先生と楽しめるようにな。」
「なるほど…そういうことか…」
リュックは、先日クロードの両親に会って以来、クロワさんとクロード医師との縁談を本格的に進める気になったようだ。
そのことについては私も異論はなかったが、何に対しても行動的なリュックのことだ。
やりすぎなければ良いのだが…
私の心配をよそに、リュックはその後も毎週クロワへの伝言を頼んだ。
*
町にでかけて偶然クロワに会っても困る…私達は、週末を宿舎にこもって過ごしていた。
いつもほとんどでかけていたのでわからなかったのだが、休みになってもどこにも行かず宿舎で過ごしている者達は意外に多かった。
私達は、そういう仲間達と昼過ぎから酒を酌み交わし、他愛ない話に花を咲かせ、それなりに楽しい時を過ごした。
「なに~?海底神殿だぁ?
変わったもんを探してるんだな!
本当にそんなもん、あるのか?」
「そりゃあまぁ突拍子もない話だが、完全にないとも言えねぇぜ!
第一、それを見たって人もいるんだから!」
「海の底の神殿を見た?
それは、魚の友達か?それとも人魚か?」
男達はそんな冗談を言ってはどっと笑った。
「笑いたけりゃあ笑うが良いさ!
でも、本当にいるんだぞ!
しかも、どえらい大聖堂を設計した建築家だって話だぞ!」
「……あ……思い出した!
俺、その話、知ってるぞ!
言われてみりゃあ、あの大聖堂は何か普通じゃないもんなぁ…」
「あんた!大聖堂に行った事があるのか?」
「あるぜ!もうずいぶん前のことだが、いまだにはっきりと覚えてるぜ!
あんなすごい建物を見たのは、初めてだったからな!」
「そんなにすごいのか…
実は、俺達もそこへ行ってみようと思ってるんだ。」
「そりゃあ良い。
あんな建物はめったに見られるもんじゃないからな。
一生、忘れられない思い出になると思うぜ。」
「そうか、そんなにすごいんだな。
早く行ってみたいもんだな、マルタン!」
「そうだな…」
「じゃあ、頼むな!」
「わかった!まかしとけ!」
リュックが、診療所に行く男に何事かを話していた。
「どうかしたのか?」
「あぁ、クロワさんに伝言を頼んだんだ。
今週末は、俺とマルタンはちょっと用が出来て町に行けないってな。」
「用事?そんなもの、何かあったか?」
「ないに決まってんだろ!
気をきかせてやってるんだよ。
クロワさんがあの先生と楽しめるようにな。」
「なるほど…そういうことか…」
リュックは、先日クロードの両親に会って以来、クロワさんとクロード医師との縁談を本格的に進める気になったようだ。
そのことについては私も異論はなかったが、何に対しても行動的なリュックのことだ。
やりすぎなければ良いのだが…
私の心配をよそに、リュックはその後も毎週クロワへの伝言を頼んだ。
*
町にでかけて偶然クロワに会っても困る…私達は、週末を宿舎にこもって過ごしていた。
いつもほとんどでかけていたのでわからなかったのだが、休みになってもどこにも行かず宿舎で過ごしている者達は意外に多かった。
私達は、そういう仲間達と昼過ぎから酒を酌み交わし、他愛ない話に花を咲かせ、それなりに楽しい時を過ごした。
「なに~?海底神殿だぁ?
変わったもんを探してるんだな!
本当にそんなもん、あるのか?」
「そりゃあまぁ突拍子もない話だが、完全にないとも言えねぇぜ!
第一、それを見たって人もいるんだから!」
「海の底の神殿を見た?
それは、魚の友達か?それとも人魚か?」
男達はそんな冗談を言ってはどっと笑った。
「笑いたけりゃあ笑うが良いさ!
でも、本当にいるんだぞ!
しかも、どえらい大聖堂を設計した建築家だって話だぞ!」
「……あ……思い出した!
俺、その話、知ってるぞ!
言われてみりゃあ、あの大聖堂は何か普通じゃないもんなぁ…」
「あんた!大聖堂に行った事があるのか?」
「あるぜ!もうずいぶん前のことだが、いまだにはっきりと覚えてるぜ!
あんなすごい建物を見たのは、初めてだったからな!」
「そんなにすごいのか…
実は、俺達もそこへ行ってみようと思ってるんだ。」
「そりゃあ良い。
あんな建物はめったに見られるもんじゃないからな。
一生、忘れられない思い出になると思うぜ。」
「そうか、そんなにすごいんだな。
早く行ってみたいもんだな、マルタン!」
「そうだな…」
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
こじらせ中年の深夜の異世界転生飯テロ探訪記
陰陽@2作品コミカライズと書籍化準備中
ファンタジー
※コミカライズ進行中。
なんか気が付いたら目の前に神様がいた。
異世界に転生させる相手を間違えたらしい。
元の世界に戻れないと謝罪を受けたが、
代わりにどんなものでも手に入るスキルと、
どんな食材かを理解するスキルと、
まだ見ぬレシピを知るスキルの、
3つの力を付与された。
うまい飯さえ食えればそれでいい。
なんか世界の危機らしいが、俺には関係ない。
今日も楽しくぼっち飯。
──の筈が、飯にありつこうとする奴らが集まってきて、なんだか騒がしい。
やかましい。
食わせてやるから、黙って俺の飯を食え。
貰った体が、どうやら勇者様に与える筈のものだったことが分かってきたが、俺には戦う能力なんてないし、そのつもりもない。
前世同様、野菜を育てて、たまに狩猟をして、釣りを楽しんでのんびり暮らす。
最近は精霊の子株を我が子として、親バカ育児奮闘中。
更新頻度……深夜に突然うまいものが食いたくなったら。
工芸職人《クラフトマン》はセカンドライフを謳歌する
鈴木竜一
ファンタジー
旧題:工芸職人《クラフトマン》はセカンドライフを謳歌する~ブラック商会をクビになったので独立したら、なぜか超一流の常連さんたちが集まってきました~
【お知らせ】
このたび、本作の書籍化が正式に決定いたしました。
発売は今月(6月)下旬!
詳細は近況ボードにて!
超絶ブラックな労働環境のバーネット商会に所属する工芸職人《クラフトマン》のウィルムは、過労死寸前のところで日本の社畜リーマンだった前世の記憶がよみがえる。その直後、ウィルムは商会の代表からクビを宣告され、石や木片という簡単な素材から付与効果付きの武器やアイテムを生みだせる彼のクラフトスキルを頼りにしてくれる常連の顧客(各分野における超一流たち)のすべてをバカ息子であるラストンに引き継がせると言いだした。どうせ逆らったところで無駄だと悟ったウィルムは、退職金代わりに隠し持っていた激レアアイテムを持ちだし、常連客たちへ退職報告と引き継ぎの挨拶を済ませてから、自由気ままに生きようと隣国であるメルキス王国へと旅立つ。
ウィルムはこれまでのコネクションを駆使し、田舎にある森の中で工房を開くと、そこで畑を耕したり、家畜を飼育したり、川で釣りをしたり、時には町へ行ってクラフトスキルを使って作ったアイテムを売ったりして静かに暮らそうと計画していたのだ。
一方、ウィルムの常連客たちは突然の退職が代表の私情で行われたことと、その後の不誠実な対応、さらには後任であるラストンの無能さに激怒。大貴族、Sランク冒険者パーティーのリーダー、秘境に暮らす希少獣人族集落の長、世界的に有名な鍛冶職人――などなど、有力な顧客はすべて商会との契約を打ち切り、ウィルムをサポートするため次々と森にある彼の工房へと集結する。やがて、そこには多くの人々が移住し、最強クラスの有名人たちが集う村が完成していったのだった。
3521回目の異世界転生 〜無双人生にも飽き飽きしてきたので目立たぬように生きていきます〜
I.G
ファンタジー
神様と名乗るおじいさんに転生させられること3521回。
レベル、ステータス、その他もろもろ
最強の力を身につけてきた服部隼人いう名の転生者がいた。
彼の役目は異世界の危機を救うこと。
異世界の危機を救っては、また別の異世界へと転生を繰り返す日々を送っていた。
彼はそんな人生で何よりも
人との別れの連続が辛かった。
だから彼は誰とも仲良くならないように、目立たない回復職で、ほそぼそと異世界を救おうと決意する。
しかし、彼は自分の強さを強すぎる
が故に、隠しきることができない。
そしてまた、この異世界でも、
服部隼人の強さが人々にばれていく
のだった。
世界に差別されたソロ冒険者、女魔導士に取り憑かれる 〜実質俺以外が戦ってます〜
なかの豹吏
ファンタジー
世界は少数民族である亜人に冷たかった。 ノエルはその亜人と人間のハーフという更に珍しい存在。 故に人間からも亜人からも敬遠されてしまう。
辺境暮しから飛び出し冒険者になったものの、世界の法は亜人に厳しく、パーティ登録が亜人の場合ソロでしか活動出来ないという悪法が定められていた。
しかし、サポートとして唯一許されているのが派遣冒険者。 ノエルは一人では厳しいと感じるクエストに初めて派遣を頼る。
だがそれが、彼の今後を大きく変えてしまう出会いの始まりだったのだ。
シリアス無縁の(ちょっとはあるけど)ギャグラブコメファンタジーの世界で、ふんわりしてみませんかぁ?
※この作品は他サイトでも掲載されています。
勘当された少年と不思議な少女
レイシール
ファンタジー
15歳を迎えた日、ランティスは父親から勘当を言い渡された。
理由は外れスキルを持ってるから…
眼の色が違うだけで気味が悪いと周りから避けられてる少女。
そんな2人が出会って…
異世界へ誤召喚されちゃいました~女神の加護でほのぼのスローライフ送ります~
モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎
飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。
保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。
そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。
召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。
強制的に放り込まれた異世界。
知らない土地、知らない人、知らない世界。
不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。
そんなほのぼのとした物語。
おばさん、異世界転生して無双する(꜆꜄꜆˙꒳˙)꜆꜄꜆オラオラオラオラ
Crosis
ファンタジー
新たな世界で新たな人生を_(:3 」∠)_
【残酷な描写タグ等は一応保険の為です】
後悔ばかりの人生だった高柳美里(40歳)は、ある日突然唯一の趣味と言って良いVRMMOのゲームデータを引き継いだ状態で異世界へと転移する。
目の前には心血とお金と時間を捧げて作り育てたCPUキャラクター達。
そして若返った自分の身体。
美男美女、様々な種族の|子供達《CPUキャラクター》とアイテムに天空城。
これでワクワクしない方が嘘である。
そして転移した世界が異世界であると気付いた高柳美里は今度こそ後悔しない人生を謳歌すると決意するのであった。
ブラック・スワン ~『無能』な兄は、優美な黒鳥の皮を被る~
碧
ファンタジー
「詰んだ…」遠い眼をして呟いた4歳の夏、カイザーはここが乙女ゲーム『亡国のレガリアと王国の秘宝』の世界だと思い出す。ゲームの俺様攻略対象者と我儘悪役令嬢の兄として転生した『無能』なモブが、ブラコン&シスコンへと華麗なるジョブチェンジを遂げモブの壁を愛と努力でぶち破る!これは優雅な白鳥ならぬ黒鳥の皮を被った彼が、無自覚に周りを誑しこんだりしながら奮闘しつつ総愛され(慕われ)する物語。生まれ持った美貌と頭脳・身体能力に努力を重ね、財力・身分と全てを活かし悪役令嬢ルート阻止に励むカイザーだがある日謎の能力が覚醒して…?!更にはそのミステリアス超絶美形っぷりから隠しキャラ扱いされたり、様々な勘違いにも拍車がかかり…。鉄壁の微笑みの裏で心の中の独り言と突っ込みが炸裂する彼の日常。(一話は短め設定です)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる