お題小説

094 ： 名声と恋

７

「そう…そんな風におっしゃって下さるのは、この広い世界の中でもきっとあなただけね。
あの子は、とにかく人の病気を直す事しか興味がなくて…
正直言って、あの子が医者になることにも私達は賛成ってわけじゃなかったんですよ。
でも、家の仕事はあの子の兄達が継いでくれましたし、あの子は昔から言い出したら聞かない子でしたからね。
診療所も、もっと大きなものをうちの近くに建てたら？って言ったんですけど、そんなに大きなものじゃ手が回らないとかなんとか言いましてね。
それじゃあ、今の所は、従兄弟にまかせて、小さくても良いからうちの近くに建てたらどうなの？って言ったんですが、とにかくうちの近所っていうのがいやみたいですわ…
本当に何を考えているんだか…
あら、私ったら…またおしゃべりしすぎだって怒られますね。
今の話は聞かなかったことにしといて下さいね。
クロワさん、そろそろランチにしましょうか！
あの人とクロードが、準備してくれてますから。」



その日、クロワとクロード一家は、楽しいピクニックを楽しんだ。
 夕食後には、クロードの母親御自慢のデザートを味わい、和やかな雰囲気のうちに休日が終わった。



「クロワさん、今日は本当にどうもありがとうございました。
両親もとても喜んでくれたようです。」

「こちらこそ、あんな素敵な場所に連れて行って下さってありがとうございました。
お母様のアップルパイ、とてもおいしかったです。」

「そうでしょう？
またいつか機会があったら食べてやって下さいね！
ただ、誉めすぎると調子に乗って山ほど作りますから、適当にしとかないといけないんですが…
あ……それから、クロワさん、ちょっとお願いがあるんですが…」

「なんですか？」

「今度のお休みには、マルタンさん達とお会いになるんでしょう？」

「ええ、そのつもりですが…」

「良かったら、僕もご一緒させていただけませんか？」

「え…ええ、それは構いませんが…
でも、マルタンさんは特に今の所、変わった様子はないようですが…」

「ありがとうございます！
では、よろしくお願いしますね！」