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ルカ(聖夜月ルカ)

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094 : 名声と恋

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 「クロワさん、患者さんもいらっしゃらないようですし、一休みしましょうか?」

「はい、先生、では、今、お茶を煎れてきますね。」


クロワの運んで来たお茶の良い香りが部屋に漂う。



「その後、マルタンさんの症状は安定してるんですね。」

「はい、お仕事は大変みたいですが、体調の方はとても良いようです。」

「そうですか…それにしても、あなた方は本当に仲が良いんですね。
休みの日には、毎週、会ってらっしゃるんですよね?」

「ええ…一週間のことを報告しあうのが習慣みたいになっていて…」

 医師は小さな咳払いをした。



「今度の休み、僕とつきあって下さいと言ったら…無理ですか?」

「なにかあるんですか?」

「ええ…ちょっと会ってほしい人がいて…
実は、あなたのことを話したら、その人達も、あなたにとても会いたがってるんです。」

「私に…?」



(もしかしたら、身体がお悪い方なのかしら?
それで、私に看病を頼みたい…とか、そういうことなのかしら?)



「駄目ですか?」

「い…いえ、駄目なんてことはありません。
マルタンさん達にはまたいつでも会えますから。」

「本当ですか!
それは良かった!」



マルタン達に、連絡を取らなければ…と思っていた所、ちょうど、炭坑で怪我をした男が診療所を訪れたので、その男に伝言を頼むことが出来た。







やがて、週末…
診療所に迎えに来た馬車に、クロワと医師は乗りこんだ。



「先生、馬車で行くなんて、遠いんですか?」

「いえ…すぐですよ。」


乗合の馬車にさえほとんど乗ったことのないクロワにとって、こんな立派な馬車に乗る事は初めてのことだった。



(きっと患者さんは相当なお金持ちなのね。)



医師の言った通り、一時間もしないうちに馬車は止まった。



「ここですよ。」

馬車が止まった先は、圧倒される程大きな屋敷だった。
門から屋敷の玄関までもがかなり遠い。



(なんて大きなお屋敷…)



今まで足を踏み入れたことのないような、いや、見た事さえないような立派な屋敷は、よく見るとかなり古いようにも見えた。
その外観は名門の旧家といった風情を漂わせていた。
クロワが呆然と屋敷をみつめていると、大きな扉が開き、中から中年の男女が顔をのぞかせた。

 
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