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094 : 名声と恋
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*
「クロワさん、患者さんもいらっしゃらないようですし、一休みしましょうか?」
「はい、先生、では、今、お茶を煎れてきますね。」
クロワの運んで来たお茶の良い香りが部屋に漂う。
「その後、マルタンさんの症状は安定してるんですね。」
「はい、お仕事は大変みたいですが、体調の方はとても良いようです。」
「そうですか…それにしても、あなた方は本当に仲が良いんですね。
休みの日には、毎週、会ってらっしゃるんですよね?」
「ええ…一週間のことを報告しあうのが習慣みたいになっていて…」
医師は小さな咳払いをした。
「今度の休み、僕とつきあって下さいと言ったら…無理ですか?」
「なにかあるんですか?」
「ええ…ちょっと会ってほしい人がいて…
実は、あなたのことを話したら、その人達も、あなたにとても会いたがってるんです。」
「私に…?」
(もしかしたら、身体がお悪い方なのかしら?
それで、私に看病を頼みたい…とか、そういうことなのかしら?)
「駄目ですか?」
「い…いえ、駄目なんてことはありません。
マルタンさん達にはまたいつでも会えますから。」
「本当ですか!
それは良かった!」
マルタン達に、連絡を取らなければ…と思っていた所、ちょうど、炭坑で怪我をした男が診療所を訪れたので、その男に伝言を頼むことが出来た。
*
やがて、週末…
診療所に迎えに来た馬車に、クロワと医師は乗りこんだ。
「先生、馬車で行くなんて、遠いんですか?」
「いえ…すぐですよ。」
乗合の馬車にさえほとんど乗ったことのないクロワにとって、こんな立派な馬車に乗る事は初めてのことだった。
(きっと患者さんは相当なお金持ちなのね。)
医師の言った通り、一時間もしないうちに馬車は止まった。
「ここですよ。」
馬車が止まった先は、圧倒される程大きな屋敷だった。
門から屋敷の玄関までもがかなり遠い。
(なんて大きなお屋敷…)
今まで足を踏み入れたことのないような、いや、見た事さえないような立派な屋敷は、よく見るとかなり古いようにも見えた。
その外観は名門の旧家といった風情を漂わせていた。
クロワが呆然と屋敷をみつめていると、大きな扉が開き、中から中年の男女が顔をのぞかせた。
「クロワさん、患者さんもいらっしゃらないようですし、一休みしましょうか?」
「はい、先生、では、今、お茶を煎れてきますね。」
クロワの運んで来たお茶の良い香りが部屋に漂う。
「その後、マルタンさんの症状は安定してるんですね。」
「はい、お仕事は大変みたいですが、体調の方はとても良いようです。」
「そうですか…それにしても、あなた方は本当に仲が良いんですね。
休みの日には、毎週、会ってらっしゃるんですよね?」
「ええ…一週間のことを報告しあうのが習慣みたいになっていて…」
医師は小さな咳払いをした。
「今度の休み、僕とつきあって下さいと言ったら…無理ですか?」
「なにかあるんですか?」
「ええ…ちょっと会ってほしい人がいて…
実は、あなたのことを話したら、その人達も、あなたにとても会いたがってるんです。」
「私に…?」
(もしかしたら、身体がお悪い方なのかしら?
それで、私に看病を頼みたい…とか、そういうことなのかしら?)
「駄目ですか?」
「い…いえ、駄目なんてことはありません。
マルタンさん達にはまたいつでも会えますから。」
「本当ですか!
それは良かった!」
マルタン達に、連絡を取らなければ…と思っていた所、ちょうど、炭坑で怪我をした男が診療所を訪れたので、その男に伝言を頼むことが出来た。
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やがて、週末…
診療所に迎えに来た馬車に、クロワと医師は乗りこんだ。
「先生、馬車で行くなんて、遠いんですか?」
「いえ…すぐですよ。」
乗合の馬車にさえほとんど乗ったことのないクロワにとって、こんな立派な馬車に乗る事は初めてのことだった。
(きっと患者さんは相当なお金持ちなのね。)
医師の言った通り、一時間もしないうちに馬車は止まった。
「ここですよ。」
馬車が止まった先は、圧倒される程大きな屋敷だった。
門から屋敷の玄関までもがかなり遠い。
(なんて大きなお屋敷…)
今まで足を踏み入れたことのないような、いや、見た事さえないような立派な屋敷は、よく見るとかなり古いようにも見えた。
その外観は名門の旧家といった風情を漂わせていた。
クロワが呆然と屋敷をみつめていると、大きな扉が開き、中から中年の男女が顔をのぞかせた。
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