555 / 641
092 : 先人の知恵
2
しおりを挟む
「今見てきたよ。
たいしたもんだな。あんなにうまく直せるなんて職人並みだな!
裏の戸も、すいすい開くようになってて驚いたよ。
ありがとうな。」
いつもはあんまり話さないマギーの旦那が、私達の所へ来て声をかけた。
「何、たいしたことじゃないさ。
それよりも、えらく迷惑をかけてすまなかったな。」
「良いんだ、そんなこと、気になんかしてないさ。
あんたらは、よほどパスカルさん達と深い関わりがあったんだろ?
俺達が、もう少し気を遣っていれば、あんなことにはならなかったかもしれない。
本当にすまなかったな。」
「あんたのせいじゃないさ。
……実はな、パスカルさんは事情があって奥さんや娘さんとはずっと長い間離れ離れになってたんだ。
それが、やっと一緒に暮らせるようになったところだったんだ。
だから、今はきっと天国で三人一緒に幸せに暮らしてると思うんだ。
もう絶対に離れたくはなかったんだろうな、きっと。」
「そうだったのか…せっかく一緒に暮らせるようになったのに…その矢先に娘さんがあんなことになっちまったんだな。
なんとも気の毒な話だな…
でも、天国じゃ病気も良くなるって話だからな。
あの子も痛い想いから解放されて、きっと楽しくやってるさ。」
「そうだな。
もう三人が離れ離れになることもないんだもんな。」
寡黙だと思っていた彼は、意外なことに話し始めるとけっこう饒舌だった。
「そういえば、あんたはやっぱり建築には興味はあるのかい?」
「いや、俺のはまったくの我流さ。
見よう見真似って感じだな。
建築なんてたいそうなものはまったくわからない。」
「そうか…俺は、若い頃に旅先で聖堂を見た事があるんだがな。
いまだにそれが忘れられないんだ。
案内してくれた男の話によると、至る所に先人の知恵が生かされた技法で建てられてるらしいんだ。
俺にはどこがどうすごいのかなんてわからなかったが、なんていうか…見た瞬間から圧倒されちまった。
建物がでかいってだけじゃないんだ。
柱一本、天井から床までいろんな所に細かい細工がされててな。
なんでも、何百年もかかって建てられたらしいんだ。」
「建てるのに何百年も?!
そいつはすごい。
ぜひ、見てみたいもんだな!
なぁ、マルタン!そう思わないか?」
リュックに言われるまでもなく、私も同じことを考えていた。
そして、その聖堂で祈りたい…と…
たいしたもんだな。あんなにうまく直せるなんて職人並みだな!
裏の戸も、すいすい開くようになってて驚いたよ。
ありがとうな。」
いつもはあんまり話さないマギーの旦那が、私達の所へ来て声をかけた。
「何、たいしたことじゃないさ。
それよりも、えらく迷惑をかけてすまなかったな。」
「良いんだ、そんなこと、気になんかしてないさ。
あんたらは、よほどパスカルさん達と深い関わりがあったんだろ?
俺達が、もう少し気を遣っていれば、あんなことにはならなかったかもしれない。
本当にすまなかったな。」
「あんたのせいじゃないさ。
……実はな、パスカルさんは事情があって奥さんや娘さんとはずっと長い間離れ離れになってたんだ。
それが、やっと一緒に暮らせるようになったところだったんだ。
だから、今はきっと天国で三人一緒に幸せに暮らしてると思うんだ。
もう絶対に離れたくはなかったんだろうな、きっと。」
「そうだったのか…せっかく一緒に暮らせるようになったのに…その矢先に娘さんがあんなことになっちまったんだな。
なんとも気の毒な話だな…
でも、天国じゃ病気も良くなるって話だからな。
あの子も痛い想いから解放されて、きっと楽しくやってるさ。」
「そうだな。
もう三人が離れ離れになることもないんだもんな。」
寡黙だと思っていた彼は、意外なことに話し始めるとけっこう饒舌だった。
「そういえば、あんたはやっぱり建築には興味はあるのかい?」
「いや、俺のはまったくの我流さ。
見よう見真似って感じだな。
建築なんてたいそうなものはまったくわからない。」
「そうか…俺は、若い頃に旅先で聖堂を見た事があるんだがな。
いまだにそれが忘れられないんだ。
案内してくれた男の話によると、至る所に先人の知恵が生かされた技法で建てられてるらしいんだ。
俺にはどこがどうすごいのかなんてわからなかったが、なんていうか…見た瞬間から圧倒されちまった。
建物がでかいってだけじゃないんだ。
柱一本、天井から床までいろんな所に細かい細工がされててな。
なんでも、何百年もかかって建てられたらしいんだ。」
「建てるのに何百年も?!
そいつはすごい。
ぜひ、見てみたいもんだな!
なぁ、マルタン!そう思わないか?」
リュックに言われるまでもなく、私も同じことを考えていた。
そして、その聖堂で祈りたい…と…
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
隣の人妻としているいけないこと
ヘロディア
恋愛
主人公は、隣人である人妻と浮気している。単なる隣人に過ぎなかったのが、いつからか惹かれ、見事に関係を築いてしまったのだ。
そして、人妻と付き合うスリル、その妖艶な容姿を自分のものにした優越感を得て、彼が自惚れるには十分だった。
しかし、そんな日々もいつかは終わる。ある日、ホテルで彼女と二人きりで行為を進める中、主人公は彼女の着物にGPSを発見する。
彼女の夫がしかけたものと思われ…
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
選ばれたのは美人の親友
杉本凪咲
恋愛
侯爵令息ルドガーの妻となったエルは、良き妻になろうと奮闘していた。しかし突然にルドガーはエルに離婚を宣言し、あろうことかエルの親友であるレベッカと関係を持った。悔しさと怒りで泣き叫ぶエルだが、最後には離婚を決意して縁を切る。程なくして、そんな彼女に新しい縁談が舞い込んできたが、縁を切ったはずのレベッカが現れる。
完結【R―18】様々な情事 短編集
秋刀魚妹子
恋愛
本作品は、過度な性的描写が有ります。 というか、性的描写しか有りません。
タイトルのお品書きにて、シチュエーションとジャンルが分かります。
好みで無いシチュエーションやジャンルを踏まないようご注意下さい。
基本的に、短編集なので登場人物やストーリーは繋がっておりません。
同じ名前、同じ容姿でも関係無い場合があります。
※ このキャラの情事が読みたいと要望の感想を頂いた場合は、同じキャラが登場する可能性があります。
※ 更新は不定期です。
それでは、楽しんで頂けたら幸いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる