お題小説

ルカ(聖夜月ルカ)

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090 : 昔日の涙

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それからの数日間も、私達は女性の家に厄介になっていた。
彼女の名はマギー。
寡黙な主人と、それによく似た息子の三人暮らしのようだ。
彼らは、見ず知らずの私達にとても親切にしてくれた。
おかげで、私達が無茶をして痛めた身体も日一日と回復していった。
未だ、完全に立ち直れたわけではなかったが、最初の頃のようにいきなり感情が溢れ涙がこみあげてくるようなことは少なくなっていた。
涙を押さえるだけの理性が少しずつ私の中にも甦って来たのを感じた。

酔っ払って暴れたあの晩、私達は部屋の中を無茶苦茶にしてしまっていたようだ。
次の日から別の部屋に寝かされていたのは、そのせいだったのだ。
しかし、マギー達はそのことを咎めるどころか、言いもしなかった。
本当に良い人達だ。
パスカル一家も、きっとこの家族にはいろいろと支えられることがあったのではないかと思われた。



「すまなかったな。
あの部屋は、俺たちが責任持ってちゃんと修理するから勘弁してくれよ。」

「何言ってんだよ。
そんなこと気にしなくて良いんだよ。
どうせ古い家なんだしさ。」

「そういうわけにはいかないさ。
……しかし、俺達も相当暴れたんだな。
我ながら呆れたよ。
しかも、マルタンがあんなに強いとはな。
あんたは、いつも穏やかだから喧嘩なんてしたことがないんじゃないかと思ってたよ。」

リュックの言葉に、私は何か言いようのない薄ら寒いものを感じていた。
私は、本当は穏やかな性格等ではなく実は残忍で酷い人間だったのではないか?
クロワに発見された時も、私は瀕死の状態だったという…
それは、もしや悪い仲間と諍いでも起こしたのではないか…




「……どうかしたか、マルタン?」

「いや…あの時は本当にすまなかった…
それで、身体の具合はどうなんだ?」

「あぁ、無理なことさえしなきゃたいしたことないさ。
もう少し身体がよくなったら、また部屋の修理に取りかからないといけないな。」

「そうだな。」

しかし、修理に取りかかる程身体が良くなるにはもうしばらくはかかるだろう。
いくらなんでもそう長い間、マギーの家で厄介になるのは気がひける。
彼女は、私達の食い扶持さえ受け取ってはくれなかった。
一面識もなかったこの一家に、そこまで迷惑をかけているのは心が痛む。
私達はそのことについて話し合った。
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