542 / 641
090 : 昔日の涙
6
しおりを挟む
*
「マルタンさん!!」
「気がついたかい!」
目が覚めた時、そこにはあの女性とクロワの顔があった。
私はやはり死ななかったのだ…
そのことを知り、私は失望した。
「うっ…」
声を出そうとした時、身体のあちこちが悲鳴をあげた。
「あ!だめだよ、まだ寝てなきゃ…
まだ起きられる身体じゃないよ。」
私の腕や拳には、ぐるぐると白い包帯が巻きつけてあることに気が付いた。
「あんたもあの人も、骨折してるんだよ。怪我も酷い。
あれ以上やってたら、どっちかが死んでたかもしれないよ。」
そうなっていたら、どんなに良かったことだろう…心の中でそう呟いた。
ふと見ると、向こう側のベッドにはリュックが寝ているようだ。
「リュックは…?」
「まだ目を覚まさないんです。」
それを聞いた途端、私の瞳からは涙が溢れ出した。
彼が死んでしまったら、どうしよう…心細さと自分のやってしまったことへの罪悪感のようなものが一気に込み上げて来るのを感じた。
情調不安定になっていることを実感する冷静な自分もいるのだが、それでも溢れる涙は止める事は出来なかった。
「大丈夫だよ。
すぐに目を覚ますさ。」
「そうですよ。
リュックのことは心配いりません。」
二人のそんな言葉を聞いても、私の不安はおさまらなかった。
自分の身体が小刻みに震えてるのを感じる。
「う…うぅ…」
「あ!リュック!
気が付いたのね!
マルタンさん!リュックが目を覚ましましたよ!」
低いうめき声と共に、リュックが目を覚ました。
「あぁ…頭がいてぇ…
それに…うっ…いってぇ!
なんだ、これ!」
「リュック、動いちゃだめよ。
あなた、あばら骨が折れてるんだから。」
「あばら骨が…」
「指も折れてるわよ。」
「指も!!
…なんてこった…」
子供のように泣きじゃくる私とは違い、リュックの精神はすでに立ち直っているようだ。
「マルタン!昨夜はよくも!
……マルタン…!」
リュックは冗談で怒ったふりをしようとしたのだろうが、泣き顔の私を見て何も言えなくなったようだ。
「リュック、マルタンさんはあなたのことを心配して…」
クロワも私の情緒不安定を案じ気を遣っている。
その気持ちがわかるだけに、余計に私は自分自身のふがいなさが恥ずかしく、彼らと顔を合わさないようにもうふ 毛布を頭からすっぽりとかぶった。
「マルタンさん!!」
「気がついたかい!」
目が覚めた時、そこにはあの女性とクロワの顔があった。
私はやはり死ななかったのだ…
そのことを知り、私は失望した。
「うっ…」
声を出そうとした時、身体のあちこちが悲鳴をあげた。
「あ!だめだよ、まだ寝てなきゃ…
まだ起きられる身体じゃないよ。」
私の腕や拳には、ぐるぐると白い包帯が巻きつけてあることに気が付いた。
「あんたもあの人も、骨折してるんだよ。怪我も酷い。
あれ以上やってたら、どっちかが死んでたかもしれないよ。」
そうなっていたら、どんなに良かったことだろう…心の中でそう呟いた。
ふと見ると、向こう側のベッドにはリュックが寝ているようだ。
「リュックは…?」
「まだ目を覚まさないんです。」
それを聞いた途端、私の瞳からは涙が溢れ出した。
彼が死んでしまったら、どうしよう…心細さと自分のやってしまったことへの罪悪感のようなものが一気に込み上げて来るのを感じた。
情調不安定になっていることを実感する冷静な自分もいるのだが、それでも溢れる涙は止める事は出来なかった。
「大丈夫だよ。
すぐに目を覚ますさ。」
「そうですよ。
リュックのことは心配いりません。」
二人のそんな言葉を聞いても、私の不安はおさまらなかった。
自分の身体が小刻みに震えてるのを感じる。
「う…うぅ…」
「あ!リュック!
気が付いたのね!
マルタンさん!リュックが目を覚ましましたよ!」
低いうめき声と共に、リュックが目を覚ました。
「あぁ…頭がいてぇ…
それに…うっ…いってぇ!
なんだ、これ!」
「リュック、動いちゃだめよ。
あなた、あばら骨が折れてるんだから。」
「あばら骨が…」
「指も折れてるわよ。」
「指も!!
…なんてこった…」
子供のように泣きじゃくる私とは違い、リュックの精神はすでに立ち直っているようだ。
「マルタン!昨夜はよくも!
……マルタン…!」
リュックは冗談で怒ったふりをしようとしたのだろうが、泣き顔の私を見て何も言えなくなったようだ。
「リュック、マルタンさんはあなたのことを心配して…」
クロワも私の情緒不安定を案じ気を遣っている。
その気持ちがわかるだけに、余計に私は自分自身のふがいなさが恥ずかしく、彼らと顔を合わさないようにもうふ 毛布を頭からすっぽりとかぶった。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
選ばれたのは美人の親友
杉本凪咲
恋愛
侯爵令息ルドガーの妻となったエルは、良き妻になろうと奮闘していた。しかし突然にルドガーはエルに離婚を宣言し、あろうことかエルの親友であるレベッカと関係を持った。悔しさと怒りで泣き叫ぶエルだが、最後には離婚を決意して縁を切る。程なくして、そんな彼女に新しい縁談が舞い込んできたが、縁を切ったはずのレベッカが現れる。
隣の人妻としているいけないこと
ヘロディア
恋愛
主人公は、隣人である人妻と浮気している。単なる隣人に過ぎなかったのが、いつからか惹かれ、見事に関係を築いてしまったのだ。
そして、人妻と付き合うスリル、その妖艶な容姿を自分のものにした優越感を得て、彼が自惚れるには十分だった。
しかし、そんな日々もいつかは終わる。ある日、ホテルで彼女と二人きりで行為を進める中、主人公は彼女の着物にGPSを発見する。
彼女の夫がしかけたものと思われ…
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
魔女リリアの旅ごはん
アーチ
ファンタジー
森の奥で小さな魔法薬店を営む魔女リリア。
三人いた弟子たちは皆一人前になっていき、ついには三人目の弟子も独り立ちしてしまった。
そして彼女はあることに気づく。今日からごはんどうしよう。
いつも弟子たちにご飯を用意して貰っていたので、今更自炊なんてやってられない。
こうなったら外食するしかない。
もう弟子たちもいないし、せっかくなので一人旅をしながら色々な料理を食べてみよう。
そんな思い付きで魔女リリアは一人旅に出る。
これは魔女リリアがただ食事をするだけのお話。
※週一土曜更新予定です。
※小説家になろう様でも掲載しています。
RISING 〜夜明けの唄〜
Takaya
ファンタジー
戦争・紛争の収まらぬ戦乱の世で
平和への夜明けを導く者は誰だ?
其々の正義が織り成す長編ファンタジー。
〜本編あらすじ〜
広く豊かな海に囲まれ、大陸に属さず
島国として永きに渡り歴史を紡いできた
独立国家《プレジア》
此の国が、世界に其の名を馳せる事となった
背景には、世界で只一国のみ、そう此の
プレジアのみが執り行った政策がある。
其れは《鎖国政策》
外界との繋がりを遮断し自国を守るべく
百年も昔に制定された国家政策である。
そんな国もかつて繋がりを育んで来た
近隣国《バルモア》との戦争は回避出来ず。
百年の間戦争によって生まれた傷跡は
近年の自国内紛争を呼ぶ事態へと発展。
その紛争の中心となったのは紛れも無く
新しく掲げられた双つの旗と王家守護の
象徴ともされる一つの旗であった。
鎖国政策を打ち破り外界との繋がりを
再度育み、此の国の衰退を止めるべく
立ち上がった《独立師団革命軍》
異国との戦争で生まれた傷跡を活力に
革命軍の考えを異と唱え、自国の文化や
歴史を護ると決めた《護国師団反乱軍》
三百年の歴史を誇るケーニッヒ王家に仕え
毅然と正義を掲げ、自国最高の防衛戦力と
評され此れを迎え討つ《国王直下帝国軍》
乱立した隊旗を起点に止まらぬ紛争。
今プレジアは変革の時を期せずして迎える。
此の歴史の中で起こる大きな戦いは後に
《日の出戦争》と呼ばれるが此の物語は
此のどれにも属さず、己の運命に翻弄され
巻き込まれて行く一人の流浪人の物語ーー。
天才ですが何か?~異世界召喚された俺、クラスが勇者じゃないからハズレと放逐されてしまう~いずれ彼らは知るだろう。逃がした魚が竜だった事を
榊与一
ファンタジー
俺の名は御剣那由多(みつるぎなゆた)。
16歳。
ある日目覚めたらそこは異世界で、しかも召喚した奴らは俺のクラスが勇者じゃないからとハズレ扱いしてきた。
しかも元の世界に戻す事無く、小銭だけ渡して異世界に適当に放棄されるしまつ。
まったくふざけた話である。
まあだが別にいいさ。
何故なら――
俺は超学習能力が高い天才だから。
異世界だろうが何だろうが、この才能で適応して生き延びてやる。
そして自分の力で元の世界に帰ってやろうじゃないか。
これはハズレ召喚だと思われた御剣那由多が、持ち前の才能を生かして異世界で無双する物語。
移転した俺は欲しい物が思えば手に入る能力でスローライフするという計画を立てる
みなと劉
ファンタジー
「世界広しといえども転移そうそう池にポチャンと落ちるのは俺くらいなもんよ!」
濡れた身体を池から出してこれからどうしようと思い
「あー、薪があればな」
と思ったら
薪が出てきた。
「はい?……火があればな」
薪に火がついた。
「うわ!?」
どういうことだ?
どうやら俺の能力は欲しいと思った事や願ったことが叶う能力の様だった。
これはいいと思い俺はこの能力を使ってスローライフを送る計画を立てるのであった。
私との婚約は政略ですか?恋人とどうぞ仲良くしてください
稲垣桜
恋愛
リンデン伯爵家はこの王国でも有数な貿易港を領地内に持つ、王家からの信頼も厚い家門で、その娘の私、エリザベスはコゼルス侯爵家の二男のルカ様との婚約が10歳の時に決まっていました。
王都で暮らすルカ様は私より4歳年上で、その時にはレイフォール学園の2年に在籍中。
そして『学園でルカには親密な令嬢がいる』と兄から聞かされた私。
学園に入学した私は仲良さそうな二人の姿を見て、自分との婚約は政略だったんだって。
私はサラサラの黒髪に海のような濃紺の瞳を持つルカ様に一目惚れをしたけれど、よく言っても中の上の容姿の私が婚約者に選ばれたことが不思議だったのよね。
でも、リンデン伯爵家の領地には交易港があるから、侯爵家の家業から考えて、領地内の港の使用料を抑える為の政略結婚だったのかな。
でも、実際にはルカ様にはルカ様の悩みがあるみたい……なんだけどね。
※ 誤字・脱字が多いと思います。ごめんなさい。
※ あくまでもフィクションです。
※ ゆるふわ設定のご都合主義です。
※ 実在の人物や団体とは一切関係はありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる