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089 : 導灯
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舟には十人程度の人々が、乗りこんでいた。
話によると、天候の悪い日以外は日に二度程、舟が出ているらしい。
ジャクリーヌの住む町のあたりから、商売のために毎日通っている者もいるという。
湖の中程に着いた頃には、あたりはすっかり闇に包まれていた。
舟をこぐ櫓の音と水音だけが静かな湖上に響き、ある種の心地良さを感じさせてくれる。
「なぁ、マルタン。こんな真っ暗な中、舟なんか出して大丈夫なのか?
転覆なんてしないかな?
俺、泳げないんだぜ…」
リュックの心細げな言葉に、隣に座っていた女性がくすりと笑った。
「心配しなくても大丈夫ですよ。
ほら…あそこに灯かりが見えるでしょう?
あれは灯台の灯かりみたいなもんでね。
船頭さんはあの灯かりを目印に、進むんですよ。
今まで転覆したことなんてありませんから、大丈夫です。」
「そうなのか。
それを聞いて安心したよ!ありがとう!」
「皆さんは、このあたりへは初めてなんですか?」
「そうなんだ。
ちょっと知り合いの家を訪ねて行く途中なんだけど…
そういえば、この分じゃ、着くのは真夜中になっちまうな。
どうする?
真夜中に訪ねて行ったんじゃ、迷惑になるかな?」
「そうね…夜が明けるまで待った方が良いかも知れないわね。」
「それじゃあ、うちに寄って下さいよ。
小さな酒場をやってるんです。
そこで、朝まで時間を潰されたらいかがですか?」
「それは助かる!
ぜひ、そうさせてもらうよ!」
他愛ない話をしているうちに、舟はいつの間にか湖を抜け、細い水路を通って行った。
「もうじき着きますよ。
うちは、船着場から歩いてすぐですからね。」
舟が着いたのは、ちょうど酒でものみたくなる時間だった。
私達は、舟で知り合った女性について、彼女の酒場に向かった。
今夜はそこで時間を潰し、朝になったら出かけることになった。
酒場からなら、ほんの数時間でジャクリーヌの住む町に着く。
昼前には着けるだろう。
「今夜は前祝みたいなもんだな!」
リュックが弾んだ声で、グラスの酒を一気に飲み干した。
話によると、天候の悪い日以外は日に二度程、舟が出ているらしい。
ジャクリーヌの住む町のあたりから、商売のために毎日通っている者もいるという。
湖の中程に着いた頃には、あたりはすっかり闇に包まれていた。
舟をこぐ櫓の音と水音だけが静かな湖上に響き、ある種の心地良さを感じさせてくれる。
「なぁ、マルタン。こんな真っ暗な中、舟なんか出して大丈夫なのか?
転覆なんてしないかな?
俺、泳げないんだぜ…」
リュックの心細げな言葉に、隣に座っていた女性がくすりと笑った。
「心配しなくても大丈夫ですよ。
ほら…あそこに灯かりが見えるでしょう?
あれは灯台の灯かりみたいなもんでね。
船頭さんはあの灯かりを目印に、進むんですよ。
今まで転覆したことなんてありませんから、大丈夫です。」
「そうなのか。
それを聞いて安心したよ!ありがとう!」
「皆さんは、このあたりへは初めてなんですか?」
「そうなんだ。
ちょっと知り合いの家を訪ねて行く途中なんだけど…
そういえば、この分じゃ、着くのは真夜中になっちまうな。
どうする?
真夜中に訪ねて行ったんじゃ、迷惑になるかな?」
「そうね…夜が明けるまで待った方が良いかも知れないわね。」
「それじゃあ、うちに寄って下さいよ。
小さな酒場をやってるんです。
そこで、朝まで時間を潰されたらいかがですか?」
「それは助かる!
ぜひ、そうさせてもらうよ!」
他愛ない話をしているうちに、舟はいつの間にか湖を抜け、細い水路を通って行った。
「もうじき着きますよ。
うちは、船着場から歩いてすぐですからね。」
舟が着いたのは、ちょうど酒でものみたくなる時間だった。
私達は、舟で知り合った女性について、彼女の酒場に向かった。
今夜はそこで時間を潰し、朝になったら出かけることになった。
酒場からなら、ほんの数時間でジャクリーヌの住む町に着く。
昼前には着けるだろう。
「今夜は前祝みたいなもんだな!」
リュックが弾んだ声で、グラスの酒を一気に飲み干した。
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