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ルカ(聖夜月ルカ)

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088 : 湖上の人

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「マルタン!気が付いたか!?」

「マルタンさん!」

そこには、心配そうに私の顔をのぞきこむクロワとリュックの顔があった。



「ここは…?」

「宿屋だ。」

「マルタンさん、ご気分はいかがですか?」



(そうか…先程のレストランで私は気を失ってしまったんだ…)



「ご心配をおかけしました。
もう大丈夫です。」

私はゆっくりと起き上がった。



「大丈夫か?
しばらく横になってたら良いのに…」

「いや、本当にもうなんともない。」

それは気を遣ったわけでも強がりでもなんでもなく、本当に、体調はもうなんともなかった。



「山越えでお疲れだったのかもしれませんね。」

「その前の採掘の疲れがまだ残ってたのかもしれないな。」

「そうね。
最近、私達無理をしすぎてたのかもしれませんね。
明日はゆっくりでかけましょう。
なんなら、あさって出発してもかまいませんよ。」

「ご迷惑をおかけしました。
でも、もう大丈夫ですから…」

「マルタン、無理すんなよ。
それにな、少しくらいなら休んだって問題ないんだ。
クロワさん、地図を貸してくれるかい?」

そう言って、クロワから受け取った地図を、リュックは私の前に広げて見せた。



「今いる町がここ、そして、ジャクリーヌの住んでる町がここだ。」

リュックは地図を指し示した。



「それで、ここに大きな湖があるだろ?
さっき偶然聞いたんだけどな、ここを渡し舟が通ってるらしいんだ。
で、ここから渡し舟に乗ってこの湖を横切ると、あっという間にここに着くってわけさ!」

「そうか!
そんな近道があったのか!」

「せっかくだから、元気になれるお下がりももらって行ってやろうぜ!」







次の日、私達は収穫祭の儀式を見学し、市を楽しんだ。
クロワは、ジャクリーヌのために薄いピンクのショールを買っていた。
そんなものには、普段、まるで関心も示さないクロワがショールを選ぶ姿に驚いたが、やはり自分のための物ではなかったのだ。
彼女もおしゃれをすればもっと美しくなれるのに、まるで、そんなことは罪悪だと思っているかのように彼女は自分を飾ることはしない。

夕方になり、配られた供物を受け取った私達は、町外れの船着場に急いだ。



「早く、早く!舟が出るよ!」



私達はぎりぎりの所で舟に乗りこむ事が出来た。
小さな乗合の小舟は川を過ぎ、大きな湖に流れ出た。 
 
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