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ルカ(聖夜月ルカ)

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081 : 舞い扇

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宴席からは声援とも野次ともわからない声があがり、口笛が吹き鳴らされた。
しかし、イリアスがその弦を奏でた途端、その場は水を打ったように静まり返った。
ダフネがイリアスの奏でる音に合わせ、腕をあげ、足を踏み鳴らすように激しいステップを刻みながら舞い踊る。
皆、放心したようにダフネのその動きを目で追っている。
後半になると、ダフネは鮮やかな紅色の扇を持ち出した。
それは、まるでダフネの身体の一部のように自由に動き回る。
このまま、彼女が空へ飛びあがっていくのではないかと思う程に軽やかに…
何を表現している踊りなのかはわからないが、ダフネの性格同様にとても激しく、そしてたくましさを感じる踊りだ。
だが、そんな中に時折盛りこまれている女性的な動きや指遣いが妙に悩ましい。
彼女のそんな動きから目を離せなくなる。
そして、一際大きな音でイリアスの楽器がかき鳴らされ、それと同時にダフネの動きがぴたりと止まった。

一瞬の間を置いて、宴席からは拍手と声援が湧き起こった。
イリアスとダフネは、族長に、そして他の皆に頭を下げ、おずおずと中央から去って行く。
ダフネはまるで水をかぶったように汗びっしょりだ。



「最高だな!!
感動したぜ!な、クロワさん!」

クロワは目に涙をいっぱい溜めていた。
感動で口もきけない様子で、リュックの手を取り何度も頷いている。



「な、すごかっただろ?
ダフネの持ってたあの扇は、踊りの名手だけが持つ事を許されるものなんだ。
ここにも踊りをする女はあと何人かいるけど、あの色の扇を持てるのはダフネだけなんだ。」

「そうなのか!本当に素晴らしいものを見せてもらったよ。
それに、イリアスの楽器の腕もたいしたもんだな。」

「そうだろ?
あの二人の間に子供が出来たら、すごいと思わないか?
どっちに似ても、きっとすごい才能を持ってると思うぜ。」

「楽器が弾けて踊りのうまい子かもしれないぜ!」

「リュック、楽器を弾きながら踊るのはいくらなんでも無理ってもんだぜ!」

ペーターとリュックは、そんなことを話しながら大きな声で笑っている。



宴は夜遅くまで続いた。
皆、笑い、歌を歌い、語り合い…そして、楽しかった夜は名残惜しさを残しながら終わった… 
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