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ルカ(聖夜月ルカ)

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079 : オアシスの村へ

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「嘘だ!
だって、ジャクリーヌはまだ若いし、あんなに元気そうだったし…」

「荷物をまとめるために家に戻った時、ジャクリーヌが倒れたことがあったでしょう?」

「あぁ…でも、あの時はすぐに痛みはおさまって…」

「そうね…痛みはおさまったけど、あの時の検査でわかったの…
ジャクリーヌの身体の中に、悪いものがあることが…」

「そんな…信じられない…あのジャクリーヌが…
間違いじゃないのか?!」

「間違いじゃないわ…
お医者様の見立てでは、ジャクリーヌは生きられてもあと一年だということだったわ。」

その話に、リュックは言葉を失った。



「そ…そんな大切なこと…
なんで、俺には言ってくれなかったんだ!!
ひどいじゃないか!!」

「ごめんなさい、リュック。
でも、話してもどうなることでもないし…私だけの胸に閉まっておこうと思ったの。」

「マルタンは、なんでわかったんだ!」

「…それは…
あの頃のパスカルさん達やクロワさんの様子が、どうもおかしかったから…」

決め手が、ティアナの預言だったということはさすがに言えなかった。



 「そうか…
俺が、鈍感過ぎたんだな…
俺も、なんとなくおかしいとは感じてたが、それが何なのかはまるでわかってなかった…
…でも、そんな俺でも、話してもらってたらなにか力になることは出来たと思う。
そうだ!
あんな農場で働く事もなかったんだ。
あんたらは先を急いでたはずなのに、なんでそう言ってくれなかったんだ!!」

「…だって…
私達にとっては、リュックも大切な人だもの。
ジャクリーヌのことも大切だけど、だからといってあなたのことをないがしろにするわけにはいかなかった。
あなたにも幸せになってほしかったから…」

「ば、ば、馬鹿野郎!!
そんなこと言ってる場合か!
俺のせいで、ジャクリーヌの方が間に合わなくなってたらどうするつもりだったんだ!」

そう叫ぶリュックの瞳は涙で潤んでいた。
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