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ルカ(聖夜月ルカ)

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077 : 咆哮の獅子

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「そうだったのか…
陽炎の化石のありそうな場所が他にもあったのか…」

私の胸の中に様々が想いが溢れ、それ以上、私は何も言えなくなってしまった。
完全に消えてしまったと思われた最後の希望が、まだ微かにその火種を残していてくれたことに、私は心の底から感謝した。



「陽炎の化石が、ただの言い伝えじゃないってこともわかったんだし、頑張って探そうぜ!
クロワさんの知り合いを助けるためにな…!」

(クロワさんの知り合い…?)



クロワは、リュックにはそう説明したのだということを私は理解した。
それが、リュックも知るジャクリーヌだということは、彼女はまだ言ってはいないのだ。



「そうだな…
今度こそ、クロワさんのお知りあいのために、陽炎の石をみつけよう!」

ジャクリーヌのためにまた力を注げる機会が与えられた。
クロワやリュックとも、また一緒に旅を続けられることになった。
これ以上、嬉しいことがあるだろうか。



「あれ?マルタン、どうしたんだ?
泣いてるのか?」

「そうじゃないさ。
砂が目に入っただけさ…」

「そうか…
本当だ…このあたりは砂が多いな。
俺も目に砂が入ったよ。」

私達は、道端に並んで涙を流していた。
大の大人が揃いも揃って、なんとも滑稽な姿だ。
しかし、こんな仲間達に出会えたことを、私は幸せに感じていた。
過去の記憶等戻らなくとも…こうやって一つ一つ忘れられない記憶が作られていくことが、とても幸せに感じられた…








「それにしても、マルタン、けっこうな荷物だな。」

「いけない!
大切なことを忘れていた。
ここから先は次の町に着くまで、何もないらしいんだ。
つまり、さっきリュックが言ってた火花の町があった場所のことだと思うんだが、そこにしばらくいるとなると、もう少ししっかりと準備をしないといけないな。
土を掘る道具もないし。」

「そう言えば、その町は今じゃあまるで砂漠みたいになってるって話だったな。
どうしよう、さっきの町に引き返すか?」

「…ここまで来たんだ。
とりあえず、現場まで行って見て、何が特に必要か考えてから戻っても良いんじゃないか?」

「そうだな。
場所さえはっきりわからないんだもんな。
現場が近いなら、さっきの町から通うってことも出来るしな。」

私達は、そのまま火花の町を探してみることにした。 

 
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